健康寿命世界一に向けた準備を!厚労省「第3回人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」
- 2019/11/14
- 産保新聞ニュース
2007年生まれの半数が107歳より長く生きる
2017年から2018年にかけて、人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現するための政策のグランドデザインを検討するべく「人生100年時代構想会議」が首相官邸に設置されました。
本会議で取りまとめられ、2017年12月に公表された「人生100年時代構想会議中間報告」には「ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子どもの半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています」とあります。
今後訪れる人生100年時代に向けて、何を準備し考えていくべきなのでしょうか。
健康寿命を伸ばす鍵は、高年齢労働者も安心して働き続ける環境
2018年10月時点で、わが国の総人口は1億2,600万人超、そのうち65歳以上人口は3,558万人で総人口の28.1%を占めています。(令和元年版高齢社会白書より)
つまり総人口の4分の1以上が高齢者といえるのです。
また、将来推計人口を見ると「団塊の世代(1947年~1949年生まれ)」が75歳以上になる2025年には65歳以上人口が3,677万人に達し、2042年にピークを迎えるとされています。
これは総人口が減少する中で、65歳以上人口が増加することで、高齢化率が上昇し続けることを意味します。
そのような中、2018年に首相官邸で開催された「未来投資会議」において、企業の継続雇用年数を現状の65歳から70歳へ引き上げる方針を発表されました。
方針では、人生100年時代に高齢者から若者までのすべての国民に活躍の場があり、すべての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくることが重要な課題とされています。
これらを受け、2019年10月30日、「人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」が厚生労働省で開催されました。
会議では、①労働災害の分析、②高年齢労働者の労働災害防止対策の取り組み状況が共有されました。
労働災害の分析
現在、男性の場合、55歳以上の就業状態は55~59歳が91.3%、60~64歳が81.1%、65~69歳が57.2%であり、多くの人が60歳を過ぎても就業を続けています。(令和元年版高齢社会白書より)
労働者の高年齢化が進む中で、高年齢労働者の労働災害の防止が課題となりますが、死傷災害の発生状況では、高年齢労働者の占める割合が過去10年間で8%上昇しています。(18%から26%)
2018年時点では、死傷者の4人に1人が60歳以上でした。(厚生労働省「労働者死傷病報告」)
「人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」では、年齢と経験年数とで、労働災害発生状況を千人率(休業4日以上の死傷者数÷雇用者数(役員を除く)×100)で発表しています。
労働災害の発生での死傷数は、20代から70歳以上までどの年代でも、継続就業期間が1年未満の方が多く、60歳台では再雇用者による労働災害が増加していることがわかりました。
また、事故の型別でみると「墜落・転落」「転倒」「交通事故(道路)」では、経験期間1年未満の70歳以上の労働災害発生率が高くなっています。
今回の千人率は、母数となる労働者数は全業種の合計であって、業種や業務内容を反映していません。
そのため労働災害の発生には、単純に、年齢が上がることの他、経験の違いが影響していることがわかります。
高年齢労働者の労働災害防止の取り組み状況
それでは、どのくらいの事業所が、高年齢労働者の労働災害防止策に取り組んでいるのでしょうか。
2013年労働安全衛生調査では、高年齢労働者の労働災害防止策への取り組み状況について事業所に尋ねたところ、以下の結果が出ています。
取り組んでいる:64.6%
取り組んでいない:32.6%
さらに、その3年後の2016年労働安全衛生調査での結果は以下のとおりでした。
取り組んでいる:55.7%
取り組んでいない:40.4%
以上のように「取り組んでいる」と答えた事業所が減少しています
また、高年齢労働者の労働災害防止対策の取り組み内容として、各事業場で一番多い回答が「健康診断実施後に健康診断の結果を踏まえて就業上の措置をとっている」でした。
次いで「作業前に、体調不良等の異常がないか確認している」「健康診断実施後に基礎疾患に関する相談・指導を行なっている」が挙がっています。
労働災害防止策として注意を払われているのは「健康面の管理は」であることがわかります。
高年齢労働者の健康管理の必要性
高年齢労働者は、一般的には豊富な知識と技術を持っていることで、業務全体を把握できた上で、判断力を備えていることが多い特徴があります。
高年齢社の知識や経験を活かせる積極的に活躍できる機会を提供し、戦力として活用できる職場づくりが今後、重要です。
その一方で、高年齢労働者の労働災害の発生は、加齢に伴う身体や精神機能の低下が影響を与えています。
さらに、認知機能と言われる「新しい環境に適するために判断する・問題を解決する」という能力も次第に低下していきます。
そのことによる労働災害の発生リスクを低減させるためにも、事業者側も、そして人生100年時代を生きる私たちも、高年齢労働者の体調・健康管理、適切な職場配置は重要な課題として取り組みましょう。
<参考>
・ 厚生労働省「第3回人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」
・ 内閣府「令和元年版高齢社会白書」
・ 厚生労働省「「人生100年時代」に向けて」
・ 中央労働災害防止協会「生涯現役社会の実現につながる高年齢労働者の安全と健康確保のための職場改善に向けて(PDF)」