ドライバーの労働時間改善基準を見直し~厚労省「自動車運転者労働時間等専門委員会」~
- 2019/12/26
- 産保新聞ニュース
2019年12月19日、第1回「労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会」(以下、本専門委員会)が行われました。
本専門委員会は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下、ドライバーの労働時間改善基準)見直しを行うために設置された専門委員会です。
ドライバーの労働時間改善基準見直しの根拠
2018年7月に成立した働き方改革推進法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)では、国会附帯決議事項として、以下のように過労死防止などの観点から、ドライバーの労働時間改善基準の見直しが求められています。
参議院厚生労働委員会附帯決議(2018年6月28日)
自動車運転業務については、過労死等の防止の観点から、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の総拘束時間等の改善について、関係省庁と連携し、速やかに検討を開始すること。また、改善基準告示の見直しに当たっては、トラック運転者について、早朝・深夜の勤務、交代制勤務、宿泊を伴う勤務など多様な勤務実態や危険物の配送などその業務の特性を十分に踏まえて、労働政策審議会において検討し、勤務実態等に応じた基準を定めること。
本来なら、労働条件の基本事項であることから、労働条件分科会で審議が持たれることではありますが、ドライバーの勤務実態などが多用であり、産業、物流の状況も踏まえる必要があることから、専門委員会が設置されることとなりました。
現行のドライバーの労働時間改善基準
ドライバーの労働時間改善基準は、1967年に最初に発効し、以降適宜見直しが行われ、現在は以下の基準にもとづいています。
ハイヤー・タクシードライバー
① 拘束時間
・ 1ヶ月299時間(車庫待ち時間は322時間)
・ 1日13時間
② 休息期間
・ 連続8時間以上
③ 運転時間
・ 規定なし
④ 連続運転時間
・ 規定なし
⑤時間外労働
・ 一定期間は1ヶ月の期間を協定
・ ハイヤーは、1ヶ月または3ヶ月および1年間
⑥ 休日労働
・ 2週間に1回が限度かつ1ヶ月、1日の拘束時間の範囲内
⑦ 特例
・ 隔日勤務について別規定あり(拘束時間:1ヶ月262時間、休息期間:連続20時間以上)
トラックドライバー
① 拘束時間
・ 1ヶ月293時間
・ 1年 3,516時間
・ 1日13時間
② 休息期間
・ 連続8時間以上
③ 運転時間
・ 2日平均で9時間
・ 2週間平均で44時間
④ 連続運転時間
・ 4時間以内
⑤時間外労働
・ 一定期間は2週間および1ヶ月以上、3ヶ月以内の期間を協定
⑥ 休日労働
・ 2週間に1回が限度かつ1ヶ月、1年、1日の拘束時間の範囲内
⑦ 特例
・ 分割休息、2人乗務、隔日勤務およびフェリー乗船における特例は労働基準局長通達の定めによる
バスドライバー
① 拘束時間
・ 4週平均で1週65時間
・ 1日最大13時間
② 休息期間
・ 連続8時間以上
③ 運転時間
・ 2日平均で9時間
・ 4週間平均で40時間
④ 連続運転時間
・ 4時間以内
⑤時間外労働
・ 一定期間は2週間および1ヶ月以上、3ヶ月以内の期間を協定
⑥ 休日労働
・ 2週間に1回が限度かつ、4週間、1日の拘束時間の範囲内
⑦ 特例
・ 分割休息、2人乗務、隔日勤務およびフェリー乗船における特例は労働基準局長通達の定めによる
今後の見直しの論点
今後、ドライバーの労働時間改善基準の見直しは、過労死防止などの観点から、主に次の3点が議論されていきます。
① 拘束時間(労働時間+休憩時間)
・ 働き方改革関連法の施行を踏まえ、どうあるべきか
・ 過労死防止などの観点からどう見直すか
② 休息時間(1日のうち拘束時間以外)
・ 拘束時間の議論をふまえてどうあるべきか
・ インターバル規制との関係
③ 連続運転時間(4時間運転ごとに30分必要)
・ 安全性を確保しつつ、生産性向上に役立つための見直し
一口にドライバーといっても、ハイヤー・タクシー、トラック、バスの業態によって、勤務実態は大きく異なります。
また、長距離運行、近距離運行といった運行内容、都市と地域の地域差など、多くの点を加味する必要がります。
昨今は、ドライバー不足もあり、ドライバーの労働条件改善に向けた具体的な施策が増えてきました。
今後の議論の展開も見逃せません。