【実録版】保健師による禁煙指導の現場~指導対象者の「やる気」がカギ~

禁煙指導の依頼が来た!

2018年7月18日に改正健康増進法が成立し、受動喫煙対策が2020年4月1日より全面施行されます。
たばこがさまざまな健康被害に関連していることから、望まない受動喫煙の防止ということで国をあげて受動喫煙対策が強化されています。
また、経済産業省では、2014年に健康経営を促進するため健康経営銘柄の認定や、2016年より健康経営優良法人認定制度を実施していることから、健康経営に取り組まれている企業が増加し、健康への関心が高まっています。
こういった社会的な背景もあり、企業から禁煙に関する指導を依頼される機会がありました。

以下では、現場でどのようなやり取りが行われているか、実例を交えつつ、禁煙指導の現場をご紹介します。

産業保健師の私が参考にしている禁煙指導の方法

まずは、私が参考にしている禁煙指導の方法を2つご紹介します。

喫煙介入方法(5Aアプローチ)

1. Ask(尋ねる):たばこを吸っているか、喫煙するタイミング、健康面について質問する
2. Advice(はっきりと禁煙が必要であることを勧める):はっきりと現状をふまえ、禁煙の必要性を伝える。医療職としてサポートすること、病気や社会的・経済的なコストなど伝え、動機づけを行う
3. Assess(禁煙の関心度を評価):今、またはこれから1か月以内に禁煙しようと思うかどうかを尋ね、関心度を評価する
4. Assist(禁煙を支援する):禁煙の計画を支援する。問題解決への助言、医療機関などのソーシャルサポートの提供など
5. Arrange(次につなぐ):支援後に実施してみるかどうか、次回の面談をいつ実施するかを検討する

喫煙者へ働きかける方法(5R)

1. Relevance(関連性):喫煙と個人的な問題(健康面、家庭、社会的立場など)を関連づける
2. Risks(リスク):対象者が喫煙の健康影響についてどのように考えているか把握し、適切な情報を踏まえ、喫煙の有害性を伝える
3. Reward(報酬):対象者が禁煙の効果についてどのように考えている尋ね、最も関係のあることに対し、メリットを伝える
4. Road Blocks(障害):禁煙の妨げになるものを明確化するし、解決するための方法を助言する。典型的な障害として禁断症状、失敗への恐怖、体重増加、うつ状態が挙げられる
5. Repetition(反復):繰り返し介入する。継続的支援

禁煙指導の困難と課題

禁煙指導の初回は全社員に対し「たばこ」をテーマにしたセミナーを実施しました。
参加者の約8割が喫煙者でしたが、たばこの健康被害やニコチン依存の身体的・心理的依存について、また経済的な効果と新型たばこについても最新の見解を踏まえ、参加型形式でセミナーを実施しました。
その結果、経営層のサポートもあり、現在までに禁煙を希望し、行動されている方は約4割となりました。(セミナーが行動のきっかけになり、嬉しかったです!)

「たばこは体に悪いとわかっているけど」と言われたら

セミナーが終了した後、参加者からさまざまな質問や相談を受けました。
そのなかで特に返答に困った質問を紹介します。

「たばこは悪いってわかるけど、こっちはヘビースモーカーなんだよ! やめるより寿命を待つほうがいい」
「たばこ吸ってなくても肺がんになる人はいるからねぇ(笑)」

どちらの方もたばこをやめることへのメリットが感じられていない様子でした。
また、禁煙することは難しい、辛そうという印象があり、禁煙を達成できるイメージができていないことが根底にあると感じました。

これらの質問に対して、私は、反対意見、異議を述べることはしませんでした。
むしろ「そうですね」、「そう思いますよね」と承認しました。
そのうえで、実際どのタイミングでどのくらいたばこを吸っているか確認し、禁煙行動へ移せない原因を調べました。
さらに、その行動に対して自信をもって楽にやめられる方法として、貼り薬、飲み薬の紹介や禁煙外来のサポート、卒煙されている方の体験談を伝えました。
このことから、自分が禁煙するための行動がイメージでき、「やってみようかな」と禁煙する動機につながりました。

自己効力感を高められる支援を

今回のケースは、経営層の意向もあり、禁煙しやすい環境や補助などの体制が構築され、禁煙・健康全般に関心が高まるきっかけ作りができたと思います。
現在、社員の健康意識が高まっているなかで、今後、継続的支援が必要になりますが、その支援で私が意識しているのは、対象者の「自己効力感」を高めることです。
自己効力感は適切な保健行動を実現するために重要な要素です。
自己効力感の高い方は、自分の目標を設定し、達成に向けて努力でき、失敗した場合も諦めるのではなく、その状況を乗り越えようと考えます。
その自己効力感を高められるよう、成功・達成体験を増やせるような目標設定、卒煙できた他者の成功体験を伝え、自分もできるぞ!という可能性を感じてもらう、物事のとらえ方をポジティブに変換できるような声かけを心掛けて支援したいと思います。
今年1年でどのような結果が出るか、保健師として楽しみです!

<参考>
一般社団法人日本循環器学会「禁煙ガイドライン(2010年改訂版)」

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金城志織株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

総合病院で看護師を経験したうえで、大学時代より興味のあった予防医学の分野で活動したく、現在は産業保健師として働いています。幸福は健康から! そのために働きながら皆さん自身が健康に取り組める、また過ごせるような情報をお伝えしていきたいと思います。
【保有資格】看護師、保健師、第一種衛生管理者、人間ドック健診情報管理指導士
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
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