突然ですが、クイズです。
「国民の3大義務」とは何でしょうか?
みなさまはもちろんご存知ですよね!
「教育」「勤労」「納税」です。これは、日本国憲法に定められています。
上記は国民に対する義務ですが、企業(使用者)にも同様にさまざまな義務が課せられています。
安全配慮義務を履行するために
安全配慮義務という「義務」をみなさんも聞いたことがあると思います。
安全配慮義務は、次のように定められています。
労働契約法第5条
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
つまり、使用者(企業側)は、労働者が安全・健康に仕事ができるように配慮しなさい、という内容となっています。
この「安全配慮義務」ですが、どこをどうすれば、また、どこまですれば「違反」と問われないのか? を考えたいと思います。
配慮だけでは不十分な場合もある
新聞をみると、毎日どこかに「安全配慮義務違反」という文字を見つけることができるのではないでしょうか?
実際に新聞など報道で安全配慮義務違反についての記事を見てみると、実際に事が起こってから、その罪に問われていることに気が付くと思います。
例としては、以下が挙げれます。
- 過労死(過労自殺)が起こってしまった。
- パワハラ、セクハラなどハラスメントが原因で、うつ病など精神疾患の従業員が発生した。
- 高血圧の従業員に運転業務をさせていて、事故が発生した。
このようにすべて発生後に、義務違反があったのではないか、と問題視されるのです。
企業側の義務として、毎年定期健康診断を実施し、産業医を選任し、状況に応じて産業医と面接指導を実施する。
ここまでしておけば、十分配慮していると思えるかもしれませんが、実際に安全配慮義務違反として罪に問われるケースがあります。
具体的には、上記の例に対して、次のようなことがあれば、ほぼ間違いなく安全配慮義務違反に問われることになると思われます。
- 過労死(過労自殺)の背景に、単月80時間以上の時間外労働(過労死ライン)があった。
- ハラスメントの訴えが社員からあったが、会社主導で行ったハラスメントではないため、積極的な解決に動いていなかった。
- 高血圧など持病があったが、本人の普段の勤務状況から問題ないと判断し、通常業務をさせていた。
安全配慮義務違反に問われる=重大・重篤な事件・事故が発生している=遺族等から訴訟が起こっている、と言えます。
安全配慮義務を完全に履行するには、事件・事故を予防するしかない
回りくどい言い方になってしまいますが、事件・事故が起こった後に安全配慮義務違反が問われることになりますので、いかにそれを「予防」するかにかかっています。
社員の安全・健康に配慮しないといけないという義務を使用者側が課せられている以上、有識者(産業医など)の意見を尊重し、事故・事件を発生させないよう努める事が安全配慮義務を履行しているといえるでしょう。