地方公務員の長時間労働とメンタルヘルス対策|調査結果から読み解く職場改善のポイント

地方公務員の働き方改革は、長時間労働の見直しや多様な働き方の推進といった国全体の流れに合わせて進められてきました。
一方で、住民サービスを担う現場では人手不足が続いており、業務も専門化・高度化しています。
そのため、単に労働時間を減らすだけでは解決できない課題も抱えています。
2025年12月に総務省が公表した「令和6年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」(2026年1月19日訂正)は、こうした状況の中で、各自治体がどのように働き方改革に取り組んでいるのかを示す重要な資料です。
今回の調査では、勤務時間制度、休暇制度、育児・介護と仕事の両立支援、時間外勤務の状況などが幅広く把握されています。
特に注目すべき点は、制度の整備は全国的に進んでいる一方で、実際の運用や利用状況には差があることです。
働き方改革は「制度を整える段階」から「実際に活用する段階」へと移りつつあることが、数値からも読み取れます。

時間外勤務の是正と業務量の現実

調査結果を見ると、時間外勤務を減らすための取り組みが多くの自治体で進められていることがわかります。
時間外勤務の上限を設定したり、事前に業務量を把握したり、管理職が勤務時間を管理したりと、民間企業と同じような管理方法を取り入れる動きが広がっています。
しかし一方で、災害対応や選挙事務、急な住民対応など、自治体特有の業務が時間外勤務の原因になりやすい現実もあります。
特に小規模な自治体では、少ない人数で多くの業務をこなす必要があるため、特定の職員に負担が集中しやすく、それが長時間労働につながるケースもあります。
この問題は単なる労務管理の課題ではなく、人員配置や業務の分担といった組織の仕組みに関わる問題です。
働き方改革を進めるためには、業務の見直しやICTの活用による効率化、さらに自治体同士で業務を分担するなどの工夫が必要です。
産業保健の視点から見ると、長時間労働の抑制は、メンタルヘルス不調や過労による健康障害の予防にとても重要です。
時間外勤務の実態を正しく把握し、業務を適切に調整することは、安全配慮の観点からも欠かせません。
単に労働時間を管理するだけでなく、継続的な職場改善が求められています。

休暇取得と両立支援制度の広がり

年次有給休暇の取得を進めることや、育児・介護と仕事の両立を支援する制度の整備も、働き方改革の重要なポイントです。
調査では、多くの自治体で計画的に休暇を取得させる取り組みが行われており、管理職による声かけや取得状況の見える化など、組織的な工夫が進んでいることがわかります。
また、男性職員の育児参加を後押しする取り組みも広がっています。
配偶者の出産時の休暇や育児休業の取得を促すための研修や周知が行われており、制度を利用しやすい職場づくりが進められています。
ただし、制度があっても実際に利用しやすいとは限りません。
自治体によって取得率や取得期間には差があり、代わりの人員を確保できない職場では、制度の利用をためらうケースもあります。
このように、課題は制度の有無から「実際に使えるかどうか」に移っています。
産業保健の立場からも、育児や介護を担う職員が無理をしないよう、面談や職場環境の調整などの支援が重要です。
両立支援は生活の質を高めるだけでなく、人材の定着や確保にも関わる重要な課題です。

働き方改革を「健康確保」につなげる視点

今回の調査からは、地方公共団体の働き方改革が進んでいる一方で、現場では依然として負担が大きいこともわかります。
人手不足や業務の特性により、制度だけでは十分な改善につながらないケースもあります。
今後は、制度が実際の働き方や職員の健康にどのような影響を与えているのかを継続的に評価することが重要です。
長時間労働の見直しや休暇取得の促進、両立支援制度の活用は、職員の心と体の健康を守るための基本です。
特にメンタルヘルス対策では、業務量の調整や十分な休息の確保が欠かせません。
管理職と産業保健スタッフが連携し、ストレスチェックの結果や面談内容を職場改善につなげていくことが求められます。
地方自治体は地域社会を支える重要な存在です。
その中で働く職員の健康は、住民サービスの質にも大きく影響します。
働き方改革を単なる労務管理ではなく、「健康を守るための投資」として捉えることが、これからの自治体運営には必要です。
今回の調査は、現状と課題を示す重要な指標であり、産業保健の観点からも参考になる内容といえるでしょう。

<参考>
総務省「令和6年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」

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小池 大木株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

就職活動で幅広い業界を調べていくなかで、残業時間やストレスの感じ方が業界によってさまざまだとわかったと同時に、健康的に働きたいという思いを持つようになりました。
私自身も健康に気を付けながら、健康に働く重要性を発信していこうと思います。
【保有資格】健康経営アドバイザー

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