新入社員の不調はなぜ見えにくいのか|職場で見逃したくないサインと対応のポイント

新年度がスタートし、職場に新入社員を迎えた企業も多いかと思います。
新入社員は新しい環境で仕事を覚えつつ人間関係を築きます。
今までとは違う生活リズムになるため、本人が思っている以上に負荷がかかっていることは珍しくありません。
しかし、実際は不調があっても「まだ頑張れる」「迷惑をかけたくない」と無理をしてしまい、本人からは言い出せないこともあります。
実際、私も産業保健活動の場で実際に新入社員のメンタル不調フォローをする機会がありますが、こういったお声よく聞きます。
職場には本人の申告を待つだけではなく、日々の変化からサインをひろって早めに対応する視点が求められます。
今回は見逃したくないサインや対応について解説します。

新入社員の体調不良はなぜ見えにくいのか

新入社員の不調が見えにくい理由のひとつに、本人がまだ「つらい」と言いやすい関係の中にいないことです。
入社したばかりの時期は仕事を覚えるだけで精一杯で、周囲にどう見られているかを意識しやすく、多少つらくても「社会人ならこれぐらい普通」「ここで弱音を吐いてはいけない」と考えてしまい自分の中で抱え込んでしまうことがあります。
一方で上司や先輩から見ると、新入社員は「緊張していて当然」、「多少疲れていても当然」に見えます。
まだ慣れていないのだろうと受け取られやすく、不調のサインを見過ごしがちにもなります。

不調は必ずしもわかりやすい形で現れるとは限りません。
気分の落ち込みだけではなく、不眠や食欲不振、頭痛などが続く、朝になると身体が重たいといった身体症状として出ることも多いです。
本人も不調の正体を整理できていない場合もあり、意思表示がないため業務に支障が出るレベルになってやっと気づくということもあります。

いつもと比べてどこが変わったかを見ることが重要なので、単発の様子ではなく数日から数週間の流れで変化をとらえる視点が必要です。

職場で見逃したくない不調のサイン

新入社員の不調に気づくためには行動や身体面、業務遂行の状況、対人面の変化をあわせて見ることが大切です。

行動面の変化

・ 遅刻や欠勤が増える
・ 出社がぎりぎりになる
・ 休憩後の戻りが遅くなる
・ 朝のあいさつに元気がない
・ (化粧をもともとしていた人が)化粧をしてこなくなる
・ 服装が乱れる など

単なる気の緩みではなく、不調のサインの可能性があります。
特に週の初めに勤怠が乱れやすい、出勤前になると不調になるといった偏りがある場合は、疲労や緊張が蓄積している可能性も考える必要があります。

身体面の変化

・ 顔色が悪い
・ 表情が硬い、笑顔が見られない
・ 眠そうにしている、眠れていない
・ 食欲不振
・ 頭痛や腹痛などを訴える
・ ため息が増える   など

不調症状が顕著に出てきてから産業保健スタッフに相談が来ることがありますが、身体面の変化が出ている場合が非常に多いです。

業務遂行の状況

・ ミスが増える
・ 説明を理解できなくなっている
・ 確認漏れが増える
・ 作業スピードが落ちる
・ メモを取れなくなる  など

こうした状態が確認されると、「やる気がないのか」「注意力が足りないのではないか」などと考えがちですが、疲労や緊張が強くなると集中力や処理能力が落ちるため、メンタル不調のサインの可能性があります。

対人面の変化

・ 報連相が減る
・ 質問ができなくなる
・ 雑談に入らない
・ 周囲を避け始める
・ 必要以上に謝る
・ 少し注意しただけで落ち込む、泣く など

新しい環境で他者と関わることは誰でもストレスや緊張を感じますが、限界まで抱え込むといろいろな弊害が出てきます。

上記のサイン一つだけで判断しないことが重要です。
誰にでも寝不足の日があったり、緊張して口数が減ったりすることはあります。
変化が続いているのか、複数のサインが重なっていないかを確認し全体の流れで見る視点が重要です。

体調不良に気づいたときの対応

新入社員の不調に気づいたときに最初に避けたいのは根性論で押すことです。
もちろん乗り越えなければならない、頑張らないといけない局面はあると思いますが、「社会人だから慣れるしかない」「みんなが通る道だよ」といった言葉は、相手を追い込むことがあります。
必要なのは、評価や指導とは切り分け話せる場をつくることです。
短時間でも落ち着いて話せる場をつくりましょう。
定期的に1対1で話せる場を設定することがオススメです。
前述した不調のサインが出ている時は声をかけましょう。
また上司や先輩が一人で抱え込まないことも重要です。
善意だけで個人対応すると、かえって属人的になり長引く原因にもなります。

現場でできる対応としては以下になります。
部署の人数に余裕がない場合もあり、現実的に難しいこともありますが、できる範囲内でフォローする体制も必要になります。

・ 業務の優先順位を一緒に整理する
・ 指示を曖昧にしない
・ 口頭ではなくメールなど後で確認しやすい方法で指示する
・ 確認のタイミングを調整する
・ 負荷が高すぎる業務を一時的に見直す など

あわせて産業医や保健師などの社内相談窓口や外部相談などを紹介したほうが良い場面もあります。
不調のサインが2週間以上続く、日常生活にも支障が出ている場合は、なんらかの介入が必要になってきます。
早めに専門家へつなげるようにしましょう。
新入社員本人にも体調管理や自分から状況を申告できるようになってもらうことが必要ですが、申告を待つだけでなく、日々の変化に気づく姿勢が求められます。
必要に応じて職場全体で支えること、早めの対応が本人を守るだけでなく、職場全体の損失を防ぐことになります。

<参考>
・ 厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」
・ 厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳|eラーニングで学ぶ「15分でわかるラインによるケア」」
・ 厚生労働省「事業場におけるメンタルヘルス対策の取組事例集」

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保健師 大島かよ

投稿者プロフィール

病棟・クリニックでの患者さんとの関わりの中で、「もっと早く治療開始できていれば」、「病気になる前に何かできないか?」と考えるように。その思いから次第に予防に興味を持ち、「働く世代」に対するアプローチがしたい!と、産業保健の世界へ飛び込みました。
現在産業保健師として数社訪問、健保で特定保健指導を担うフリーランスの保健師です。
自分の経験なども盛り込みながら、産業保健に関連する情報を発信していきます。
【取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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