40代から要注意!サルコペニアは若い世代も 予防のための食事と運動

サルコペニアとは?

日本は世界でも有数の長寿国ですが、その一方で「健康寿命」をいかに延ばすかが課題となっています。
近年注目されているのが「サルコペニア」です。
高齢者だけではなく、生活習慣や運動不足によって若い世代にも起こる可能性があり、早めの対策が重要です。
今回はサルコペニアの原因や症状、予防方法について詳しく解説します。

サルコペニアとは、ギリシャ語の「Sarco(筋肉)」と「Penia(喪失)」から作られた言葉で、加齢や疾患により筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下する状態を指します。
2016年にWHOが国際疾病分類(ICD-10)に正式に登録したことで、医学的にも疾病として認識されるようになりました。
サルコペニアを発症すると、歩行速度の低下や転倒リスクの増加、要介護の進行など、生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。

サルコペニアの原因

・ 加齢:加齢による骨格筋の減少は避けられない。25~30歳頃から徐々に低下し、70~80歳代では20~30歳代と比べ、約30~40%の骨格筋が減少する
・ 運動不足:座りがちな生活や活動量の低下は、筋肉の萎縮を招く。特に下半身は影響を受けやすく、歩行能力の低下につながる
・ 栄養不足:タンパク質やビタミンD不足は筋肉合成の妨げとなる。特に高齢者は食欲低下や嚥下機能の低下もあり、栄養不足になりやすい
・ 疾患や薬の影響:糖尿病や慢性腎臓病などの慢性疾患、一部の薬剤でサルコペニアの原因となる場合がある

よくみられる症状

・ ふくらはぎが細くなった
・ ペットボトルのふたが開けにくい
・ 階段を登るのがつらい
・ 手を使わないと立ち上がれない
・ 何もないところでつまずく、転びやすくなった
・ 歩くスピードが遅くなった など

ロコモティブシンドローム(ロコモ)やフレイルとは違うの?

サルコペニアという言葉と一緒によくロコモやフレイルが出てきます。
いずれも高齢者の健康や介護予防に関わる重要な概念ですが、違いが少しわかりにくいので以下に説明します。

ロコモティブシンドローム(ロコモ)

ロコモとは、骨格筋や関節などの運動器の機能低下によって、立つ、歩くなどの移動機能が低下した状態と定義されています。
サルコペニア(筋肉減弱状態)はロコモの要因の一つです。
ほかに脊柱管狭窄症(せきちゅうかんっきょうさくしょう)や変形性関節症、骨粗しょう症などもロコモの枠組みに入ります。

フレイル

フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間の段階のことをいいます。
さまざまな病気や状態が重なったり進んだりした状態のことを指します。フレイルは大きく3つに分類されます。

・ 身体的フレイル:動く、食べるなどの日常生活を営むために必要な身体能力が衰えてしまった状態。ロコモやサルコペニアを含む
・ 社会的フレイル:外出減少や独居などにより社会とのつながりが希薄になる
・ 精神心理的フレイル:認知機能低下や抑うつ状態など

フレイルの状態は適切な介入や支援が非常に重要になります。フレイルはサルコペニアやロコモを内包する概念です。

3つの関係図を簡単に表すと以下のようになります。

若い世代もなる可能性が?

今まで説明してきたように加齢に伴う筋肉量の減少が主な原因となる場合は「一次性サルコペニア」といい、加齢以外に1つ以上の原因がある場合は「二次性サルコペニア」といわれます。
二次性サルコペニアの原因は、がんや慢性腎臓病などの疾患、栄養不良(極端なダイエットや摂食障害など)、長期臥床(がしょう)や活動量の著しい低下などがあげられます。
年齢関係なく、若い世代でも筋肉量が低下しサルコペニアの状態になることがあります。
若年者は発症する確率は低いと考えられていますが、発症リスクのある状態が続くと将来的にサルコペニアになる危険性もあるため、注意が必要です。
下記2つは特に注意しなければならないポイントとなります。

栄養不足

極端なダイエットや偏食により栄養が不足すると、筋力の低下が進みます。
特にタンパク質やビタミン類が不足すると筋力維持がより難しくなります。

運動不足

デスクワークが多い、日常的に身体を動かす機会が少ない生活を送っていると、筋肉量が徐々に減り、サルコペニアのリスクが上昇します。

サルコペニアの予防をしよう

サルコペニアのリスクは40代から上昇するといわれているので、若いうちから対策することがとても重要です。

簡単セルフチェック(指輪っかテスト)

両手の親指と人差し指で輪っかをつくり、ふくらはぎの一番太い部分を囲い、隙間ができる人はサルコペニア予備軍の可能性が高いです。

食生活の改善

十分なエネルギーの摂取、1日3食バランスよく食べることが大切です。
腎機能障害などたんぱく質の制限が必要な場合を除いて、タンパク質を十分にとることが重要となります。
筋肉の材料となるタンパク質が不足すると、筋肉はなかなかついてきません。
筋力の維持はサルコペニアの予防にもつながります。
また、タンパク質にプラスしてカウシウムやビタミンDの摂取も欠かせません。

〇タンパク質が豊富な食品

・ 肉類:鶏ササミ、鶏ムネ肉、豚ヒレ肉、豚ロースなど
・ 魚類:イワシ、アジ、白サケなど
・ 卵
・ 木綿豆腐、納豆

〇カルシウムが豊富な食品

・ ヨーグルト、スライスチーズ
・ シラス干し
・ 木綿豆腐、納豆
・ 小松菜、ヒジキ

〇ビタミンDが豊富な食品

・ 魚類:サケ、イワシ、マグロ、ウナギ、サンマ、サバの缶詰
・ 野菜:キクラゲ、干しシイタケ、エリンギ、エノキダケ

※以前「免疫機能アップ!最強栄養素「ビタミンD」をとろう」の記事を執筆しています。あわせてご覧ください。

運動の習慣をつける

運動不足を自覚している方は軽い運動から始め、定期的に運動する習慣をつけましょう。
スクワットやプランク、ヒールレイズ(つま先立ち)、ウォーキングなど取り入れましょう。最初から1日30回筋トレをする、30分歩くなどと決めるとハードルが高く続けられないという方は、隙間時間に取り組むことから始めることをオススメします。
たとえばお手洗いに行った後、スクワットを5~10回する、できるだけ階段を使うなどあらかじめ自分の行動を設定しておくと、短時間でも身体を動かすことが可能です。

<参考>
・ 厚生労働省「健康日本21アクション支援システム Webサイト」
・ 公益財団法人長寿科学振興財団「フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ」
・ 一般社団法人日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」
・ 一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診断基準の改訂(AWGS2019発表)」
・ 厚生労働科学研究成果データベース「虚弱・サルコペニアモデルを踏まえた高齢者食生活支援の枠組みと包括的介護予防プログラムの考案および検証を目的とした調査研究」
・ 荒井秀典「サルコペニアとフレイル ~ロコモとの相違について考える~」(『体力科学』、2016年65巻3号337-341頁)
・ 一般社団法人日本肥満症予防協会「『サルコペニア』のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法」

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保健師 大島かよ

投稿者プロフィール

病棟・クリニックでの患者さんとの関わりの中で、「もっと早く治療開始できていれば」、「病気になる前に何かできないか?」と考えるように。その思いから次第に予防に興味を持ち、「働く世代」に対するアプローチがしたい!と、産業保健の世界へ飛び込みました。
現在産業保健師として数社訪問、健保で特定保健指導を担うフリーランスの保健師です。
自分の経験なども盛り込みながら、産業保健に関連する情報を発信していきます。
【取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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