森田療法は、東京慈恵会医科大学の初代精神科教授であった森田 正馬(もりた まさたけ)によって創始された心理療法です。
不安障害、強迫神経症、社交恐怖、パニック障害などの症状に大きな治療効果があるといわれています。
現在では、うつ病や不眠症の改善にも効果が期待できるとされ、治療の一環として取り入れている医療機関もあります。
森田療法の持つ人間観
主に不安障害の方が持つ、不安への囚われに焦点を当て、そこから脱却するための方法として森田療法は確立されました。
森田療法では、不安を異物として除去するのではなく、それも自分の心の一部なのだと認めることを基本的な考えとしています。
不安は自分の一部なのだから、無理して除去しようとする努力はやめる。
そこに囚われず、生活の中で必要なことを達成する目的意識を重視しています。
また、「人から良く見られたい」「人から良い評価を受けたい」という欲求が人一倍強いからこそ不安が生まれるという仕組みに着目し、「より良く生きたい」気持ちを成長や自己啓発につなげる事を説いています。
働く世代ではうつ病からの復帰期にも
森田療法は、感情の落ち込みが激しく身体の症状も強いうつ病の急性期には向かないといわれています。
しかし、比較的症状が軽い慢性期(症状の変化が少ない時期)には有効とされています。
働く世代では、過労やストレス、パワハラなどからうつ病を発症し、休職に至ることがあります。
うつ病で休職をしても、再発して病気休暇を再取得した人の割合は、復帰から1年で全体の28.3%、2年で37.7%と高く、
5年以内で47.1%と半数近い方が再発・再休職を余儀なくされています。
その原因の1つとして、人間関係や仕事の負担など、再度ストレスがかかった時に、本人の物事の捉え方や考え方が変化していないことが挙げられます。
そういった再発・再休職を防ぐためにも、医師・臨床心理士の指導のもと、森田療法を選択肢の1つとして選ぶという方法もあります。
治療の一環として森田療法を実施している病院は限られていますので、ご興味のある方は、病院のHP等で確認をされてから医師または臨床心理士にご相談なさることをお勧めします。
心の健康の為に
精神的な悩み・問題に対して抗うつ剤や抗不安薬で不安を取り除く治療は広く行われていますが、不安という感情は異物ではないため、そもそも完全に除去することは不可能だという認識も、とても大事なのではないでしょうか。
薬の多重・長期服用による副作用の影響も指摘される中、心の問題への対処法に様々な選択肢が持てるよう願ってやみません。