説明のプロになろう! ~心理的距離を相手と一緒にしよう~

天高く馬肥える秋、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
精神保健福祉士の笹井です。

取引先相手に商品の説明をしたつもりでも、まったく相手に通じていなかった。
スケジュールや工程を渡していたのに、まったく理解されていなかった。
なんてことは経験ありませんか?

皆さんにお役立ていただく産業保健新聞、今日のお題は「物事に対する心理的距離」についてです。

距離にも色々ありまして

みなさんが心理的距離と聞いて、ぱっと聞いて思い浮かぶのは、人に近づきすぎると圧迫や嫌悪などの不快を感じる「パーソナルスペース」についてではないでしょうか?
パーソナルスペースは対人距離とも訳される臨床心理学的な対人関係についての学説なのですが、今日お教えするものとは、また違ったものです。

今日お教えする心理的距離とは「物事に対する捉え方、判断や決定に影響を与える原因」を説明するものです。
簡単にいうと、人の物事に対する主観的な距離のことを指します。
これを理解して応用すれば、あなたも説明のプロ、「なんて分かりやすい説明なの!」とお客様や上司から絶賛間違いなしでしょう。

あなたの判断は4つの主観的な距離から考えられている

主観的な距離には種類が4つあります。
以下に説明する4つの心理的距離から、私たちは物事を判断をしているのです。

時間的距離

近い将来に起こる物事ほど、心理的距離は近くなり、遠い未来に起こる物事ほど、心理的距離は遠く感じられます。

例)1週間後にある健康診断での体重測定にはビビるけど、来年の夏の水着は可愛いものを着ようと思う。

空間的距離

今いる場所に近いほど心理的距離は近くなり、今いる場所から遠くなるほど、心理的距離は遠くなります。

例)日本に来る台風については想像できるが、海外で起こるハリケーン被害についてはピンとこない。

社会的距離

自分に関することは心理的距離が近くなり、他者に関することは心理的距離が遠くなります。
これは当たり前のことですよね?
他人より自分のことの方が、判断には重要です。

仮想的距離

実際の出来事の方が心理的距離は近くなり、仮定の出来事は心理的距離が遠くなります。

例)消費税増税にはカチンとくるが、超高齢社会で若者の負担が増えることには、「へぇそうなんだ」で済んでしまう。

心理的な距離が遠いものについては、抽象的に解釈し(ぼんやりとしかイメージできない)希望や総論を重要視します。逆に心理的な距離が近いものについては、具体的に解釈し、実用性や各論を重要とするようになります。
誰かに対して説明を行うとき、説明をするあなたは物事に対して心理的な距離はとても近いでしょう。
けれども、説明をされる方は心理的な距離が遠くなり、抽象的にしか物事を捉えません。
これが、失敗の原因です。

さて実践

たとえば、あなたはストレスチェックの実施を受託する業務を行っているとします。
ストレスチェックのスケジュールや方法についてお客様に説明を行うとしましょう。
ストレスチェックは衛生委員会での審議、規定の作成、周知、マークシートの配布、回収、受検の勧奨などなど完了するまでには、幾多の困難を乗り越えていかなければなりません。
あなたは工程をどのように説明しますか?
説明を上手く行うには、先述した4つのポイントを踏まえて説明を考えましょう。

時間的距離

遠い将来のことを一気に話しても相手はピンと来ません。
衛生委員会での審議の時期であれば、審議のやり方を教えたり、規則の作り方の例を渡したり、集団分析のグルーピングなどを考えたりと、その都度にやるべきことを説明してあげましょう。
一気に説明されても、3か月後のことを相手は覚えていてくれません。

空間的距離

もし、説明を行う人と受ける人の距離が離れているのなら、マークシートの輸送の手段や本社から支店へ逓送したときに、どれくらいの日数がいるかを計算してあげましょう。
距離が遠いと、作業の工程がぼやけますし、自分の手から物が離れると、忘れます。

社会的距離

ストレスチェックを受けると、どのような結果が返ってくるか、会社の分析を行うとどのような利点があるか。
そこから、どんな報告書を作ったり、どんな数値と比較をするのか。
このストレスチェックが、説明を受ける人にどんな利点をもたらすのかを説明してあげましょう。

仮想的距離

実際にマークシートやWEBの受検をしてもらい、現実的にどんなものを扱うのかを理解させてあげましょう。
現実的な質問も出てきますし印象にも残りやすいです。

あの人はあなたではない

人間は思い込みの激しい動物です。
言えばなにもかも伝わるような天才はいません。
10個のことを話す内、伝わっているのは3個程度です。
あの人はあなたではありません。
同じ経験をして同じように育つ双子でも、性格は違いますし、感想も違います。
説明はどれだけ、あなたに相手を近づけてあげるかが問題なのです。
いくら親しい友人や同僚でも、腹の内はわかりません。

今回の記事をお仕事に活かしてみてくださいね。
それではみなさんさようなら。

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笹井裕介産業保健部 看護師・精神保健福祉士

投稿者プロフィール

大学卒業後、精神保健福祉士として、精神科クリニックで心理相談、生活相談を担当。その後、看護師資格を取得し病院勤務となる。呼吸器内科・腎代謝科で従事し、ターミナル(終末期)や慢性期の患者さんと関わる。病院勤務を通して、予防医学に興味を持ち、株式会社ドクタートラストに入職。
現在は、電話相談窓口でのハラスメント・メンタル・健康相談対応、企業の人事担当者への提案やコンサルティングを行っている。
【保有資格】看護師、精神保健福祉士、公認心理師
【ドクタートラストのサービスへのお問い合わせはこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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