あなたはワクチンについてどう思いますか?~人間の注意とエコーチェンバーにご注意!~

あなたはワクチンについてどう思いますか?~人間の注意とエコーチェンバーにご注意~

皆さんこんにちは、精神保健福祉士の笹井です。
各自治体や国の機関によって、新型コロナウィルスの予防接種が高齢者向けに始まりました。
働く皆さんは、まだまだ予防接種時期は先になりそうですね。
さて、ここで皆さんに質問です。

「あなたはワクチンについてどう思いますか?」

……ふむふむいろいろなご意見があるようですね。
次にまた質問です。

「あなたはその意見に関する反証をどの程度調べていますか?」

……この質問に、明確に答えることがでるならば、あなたのネットリテラシーは高いと言えるでしょう。

情報を取得するには便利な社会

2019年における世帯の情報通信機器の保有状況をみると「モバイル端末全体」(96.1%)の内数である「スマートフォン」は83.4%となり初めて8割を超えています。
皆さんが得る情報の多くは、インターネットからではないでしょうか。
さて、皆さんは何らかの意見を持とうとするとき、さまざまな情報を得ると思いますが、その情報はどのように取得しているでしょうか。
たとえば先に出した「ワクチンについてどう思うか?」の質問に関しては、まずは何らかの意見(例、ワクチン接種に賛成。ワクチン接種に反対)に賛同することから始まるかと思います。
インターネットでその意見をぽちっと検索をすれば、すぐさま色々なサイトにたどり着き、たくさんの意見、解説、反証をみることが可能ですよね。
情報を取得するには便利な社会になっています。
ご存じと思いますが、インターネットは膨大な情報が、良いものも悪いものも記載されています。
検索すれば多数派少数派関係なく、同じ意見を持った人の情報がすぐ手に入る状態になります。
ここで注意したいことは、以下の2点です。

① 人間は認知に特性があり、興味があることにしか注意が向かない傾向があること
② インターネットではエコーチェンバーが起きやすく、行為者の意見や行動の強化が起こりやすいこと

見たいものしか見ない人間

人間は自分の興味関心があることに注意が向きやすい特性があり、ある意見を持った(例、ワクチンの接種は悪だ!)とすると、同じような内容の記事(例、副反応が怖い、実験がきちんとなされていないなど)に注意が引かれやすくなります。
逆に、自分の意見と反対のもの(例、ワクチンは治験実証がなされていて安全)については、注意が引かれにくくなるのです。
ハーバード大学の研究室が行った実験をご紹介しましょう。

先に動画をご覧いただいた方が楽しいかもしれません。

黒いシャツと白いシャツを着たチームがそれぞれバスケットボールを持って、狭い場所で入り乱れながら自分のチームメイトにパスしていく動画を被験者に見せるのですが、その動画を見る前に、被験者には「白いユニフォームのチームが、何回パスをするか数えてください」と指示が出ます。
動画の中には、バスケットボールとは一切無関係のゴリラの着ぐるみが出てくるのですが、動画を見た50%の人がゴリラに気づかないそうです。
動画を見ればわかりますが、ゴリラは画面の端で見切れているといったレベルではなく、画面の中央まで歩き、大きな動作でウホウホと胸をたたくのです。
人間は「見たい」と思うものにのみ目が行きやすくなり、その他の事象が見えにくくなるのです。

自分の意見について反論を得にくい不便な社会

最近の話題でありました「ノーマスクピクニック」をご存じでしょうか。
4月中旬、GWに全国各地の公園でマスクをしないでピクニックをしようという呼びかけがインターネットをにぎわせました。
新型コロナウィルス流行の折に、感染予防の観点から「けしからん」と猛批判を浴びたものの、全国の公園でノーマスクピクニックをした人が居たようです。
インターネットには、どれだけ意見がマイノリティで、正常から逸脱していても、その意見について賛同してくれる人がいます。
自分に興味があることについては、より注意が向きやすいというお話をしましたが、インターネットは一方的にいろんな情報を見せられるわけではなく、自分から情報を得に行かなければ情報を得ることができません。
特定の意見について、興味があるから検索すれば、同意見の人から賛辞を得られたり、連帯感や所属感が得られる。
賛辞や連帯感、所属感は快の感情です。
快の感情を得るために、再度その行為を繰り返す……これをエコーチェンバー現象と言います。
インターネットではこの現象が起こりやすく、ある特定の信念を持ちだすと、反証する意見に触れられなくなりやすいのです。

ここまで、人間の心理学的な特性とインターネット社会での特性をお話してきました。
もう一度質問です。

「あなたはワクチンについてどう思いますか?」
「あなたはその意見に関する反証をどの程度調べていますか?」

重要なことは、賛成か反対かなどの「0か1か思考」ではありません。
多くの情報に触れなければならない現代で、あなたはその意見に、なぜ賛成なのか、なぜ反対なのか、あなたの意見に関する反証とくらべてあなたの意見は妥当なのか信頼がおけるのか、が重要なのです。
少し、ご自身の意見を振り返ってみてください。
それではみなさんさようなら。

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笹井裕介産業保健部 看護師・精神保健福祉士

投稿者プロフィール

大学卒業後、精神保健福祉士として、精神科クリニックで心理相談、生活相談を担当。その後、看護師資格を取得し病院勤務となる。呼吸器内科・腎代謝科で従事し、ターミナル(終末期)や慢性期の患者さんと関わる。病院勤務を通して、予防医学に興味を持ち、株式会社ドクタートラストに入職。
現在は、電話相談窓口でのハラスメント・メンタル・健康相談対応、企業の人事担当者への提案やコンサルティングを行っている。
【保有資格】看護師、精神保健福祉士、公認心理師
【ドクタートラストのサービスへのお問い合わせはこちら】
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