産業医による職域接種の疑問「うちの会社は可能だろうか」にお答えします
- 2021/6/10
- 新型コロナウイルス
コロナクチンの職域接種について、「産業保健新聞」を運営するドクタートラストにも非常に多くの企業からお問い合わせをいただいております。
今回は、特に多いご質問「今きていただいている産業医に職域接種をお願いできるのか」、「職域摂取を行う際の注意点は?」について、以下で解説いたします。
あなたの会社の産業医にワクチン接種を依頼することは可能?
まず、産業医がなんであるかについて簡単にご説明します。
医師と名前がつくのだから、職場での怪我も診てくれるんじゃないの?と思われる方も多くいらっしゃるでしょう。
実際、産業医も医師免許を持っているのですが、職務内容は医師と明確に分けられており、労働安全衛規則14条1項に明記されています。
労働安全衛規則
(産業医及び産業歯科医の職務等)
第14条 法第13条第1項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。
1 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
2 法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項及び第66条の8の4第1項に規定する面接指導並びに法第66条の9に規定する必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
3 法第66条の10第1項に規定する心理的な負担の程度を把握するための検査の実施並びに同条第3項に規定する面接指導の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
4 作業環境の維持管理に関すること。
5 作業の管理に関すること。
6 前各号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。
7 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
8 衛生教育に関すること。
9 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。
また、「産業医」と一括りにいっても「嘱託産業医」と「専属産業医」によって少し異なり、整理すると以下のとおりです。
医師 | 嘱託産業医 | 専属産業医 | |
活動場所/企業規模 | 医療機関など | 従業員数50人以上~1000人未満の事業場(複数の場合あり) | 従業員数1,000人以上の事業場(基本的に一社) ※業種業態によっては、従業員数500人以上の事業場 |
対象者 | 患者 | 事業主、従業員 | 事業主、従業員 |
勤務形態 | 常勤、常勤+非常勤 | 非常勤 | 常勤 |
職務内容 | 医師法に基づく医療行為 | 労働安全衛生法に基づく健康管理 | 労働安全衛生法に基づく健康管理 ※条件によっては、医師法に基づく医療行為も可 |
診察室 | あり | なし | あり ※企業内診療所の登録が必須 |
今回、大きく焦点があてられている「産業医によるワクチン接種」ですが、インフルエンザの予防接種同様、医療行為にあたり、「産業医」の職務には該当しません。
しかし、産業医が企業で医療行為を行うために、必要不可欠なものがあります。
産業医が職域接種を行うために必要なものとは?
前述のとおり、産業医は医療行為を行うことができませんが、企業(または組合)が診療所登録を行なった場合、産業医は医師として医療行為を行うことができるのです。
産業医でありつつ、医師でもある、2つの役割を兼任しているといえます。
そのため、産業医の職域接種については「診療所登録のある企業では、産業医が医師として、医療行為であるワクチン摂取を行う」が正しい説明となります。
ただ、診療所登録を行っているのは、従業員数1,000人以上で専属産業医が常駐している事業場がほとんどです。
診療所登録していない事業場での嘱託産業医による職域接種は、現行の制度により実施が難しいと言わざる得ないでしょう。
従業員数1,000人以下の事業場での職域接種については、商工会議所を通じての共同実施などの検討が進んでいます。
最新情報を参照ください。
会社でコロナワクチンの職域接種を行う際の留意点3つ
以上より、職場で産業医がコロナワクチンの接種を行うためには「企業内診療所の登録」が完了しており、「専属産業医」が常駐していることが必須といえます。
他にも、実際に職域接種を行うためには以下が留意点となります。
・ 会場設営:三密を避けた会場・ワクチン接種に必要な備品の管理
・ 医療職の確保:医師だけでなく救急対応が可能な看護師の確保
・ 緊急時の搬送先確保:アナフィラキシーショックが発生した際の搬送先確保
「産業保健新聞」では、引き続き最新動向に注目し、情報発信を行っていきます。
<参考>
厚生労働省「職域接種に関するお知らせ」