産業医向け新型コロナウイルスアンケート結果発表【1】約3割の事業場で産業医面談の実施が見送られた

「産業保健新聞」を運営するドクタートラストでは、コロナ禍における産業保健活動について、産業医の先生方から多くのご質問、ご相談をいただきました。
そこで、①感染症対応における産業保健の実情を把握すること、②今後の産業保健活動に活かせる情報を発信することを目的として、ドクタートラストに登録いただいている産業医の先生方にアンケート調査を行い、317事業場で働く方から回答いただきました。
今回から全4回にわたり、アンケート結果を見ていきます。
第1回は、コロナ禍において、産業保健活動が具体的にどう変化したかを見ていきます。

アンケートの詳しい結果は以下PDFをご参照ください。
「産業医に聞いた! いま知りたい、訪問先企業の実情~新型コロナウイルス感染症対策はどのように行われていたのか~」

記事一覧は以下をご参照ください。

産業医による産業保健活動の状況は?

アンケートではまず、コロナ禍における産業保健活動の実態について伺いました。
調査結果は以下のとおりです。

図1 衛生委員会、産業医面談の状況

図1 衛生委員会、産業医面談の状況

図2 職場巡視の状況

図2 職場巡視の状況

事業休止に伴い、産業保健活動も休止?

図1のとおり、28%の事業場で、衛生委員会・産業医面談の実施が見送られています。
また、図2のとおり、41%の事業場で職場巡視の実施が見送られました。
自由記述欄へのコメントを見ると、「事業そのものが休業しているため産業保健活動も休止」という旨の回答が多く見られました。
また、休業しなかった事業場では産業医業務をオンライン化できたのは3割にとどまりました。
職場巡視で訪問義務があるためかもしれません。
あらためて、企業、産業医間の密な連携が求められることがわかりました。
以下では図1、2の設問における自由記述欄のコメントを一部ご紹介します。

<産業医による産業保健活動>自由記入欄より一部抜粋
① 実施継続した事業場
・ 人数を絞って、短時間対面
・ 復職面談は対面で実施
・ 部屋の窓を開け2mあけて対面で面談、または別室に入ってもらい電話面談で行っている
・ 過重労働面談は遮蔽して実施。今後Skypeを利用予定
② 遠隔で実施した事業場
・ 産業医も参加してメール審議で開催
・ 会議へは不参加。衛生管理者と電話やメールで連絡を取り、情報交換や意見を伝えています
・ 面談該当者と産業医でWebにて面談
・ 産業医はスマートフォンでの参加
③ 実施を見送った事業場
・ 衛生委員会は当面延期
・ 予定されていた面談は希望者以外はリスケジュールのうえ、延期になっています
・ 全職員自宅待機につき衛生委員会開催なし
・ 衛生委員会は国の通知に基づき中止中
・ 飲食業のため顧客が激減し、従業員の在宅待機が多くなっている関係で面談ができなくなりました
・ 3月までは通常開催、ただし衛生委員会の開催は見送り、4月以降は電話面談のみ

ITリテラシーと産業保健活動

また、新型コロナウイルス感染症流行前から、在宅勤務を進めていた企業は、一気に在宅勤務が進むとともに、産業保健活動もスムーズにオンライン化できました。
一方で担当者によっては、そもそもオンライン化することへの意識が低い企業もあるようです。
「産業医として困ったこと」を伺ったところ、自由記入欄に以下のようなコメントをいただきました。

<産業医として困ったこと>自由記入欄より一部抜粋
・ 一方的に訪問不要といわれた
・ 遠隔面談の実施の必要性を説明しているが、設備や予算の不足により実施できない事業所がある
・ 対面会議を継続していること
・ 会社によって温度差がある
・ セキュリティの問題でテレビ電話の導入に消極的
・ 産業医側としては、テレワーク(遠隔面談)でいいと思っているが、事業所側がそれを認めない
・ 人事担当者によって不調者対応などに関する課題解決力のばらつきが大きい。オンライン化という
発想自体がない企業もあります
・ 産業医と会社側で対策意識の差がある。社内での対策が不十分、理解していただけない

なお、「産業医として困ったこと」については、第4回でより詳しく見ていきます。

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産業保健新聞編集部株式会社ドクタートラスト

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