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- 「令和2年版 過労死等防止対策白書」が公表されました ~新型コロナウイルスによる影響は?~
令和2年10月30日(金)、過労死等防止対策推進法第6条に基づき、厚生労働省より「過労死等防止対策白書」が公表されました。
こちらは平成28年から毎年経過を報告されている白書で、今回は5回目となる令和2年版です。
近年、問題が明るみに出てきている働く世代の過重労働、過労死等についてどのような現状か、また新型コロナウイルス感染症による影響はいかがなものか、今回の内容を簡単にご説明いたします。
過労死白書の目的
過労死等防止対策白書(以下、過労死白書)とはなにかというと、厚生労働省が発表している過労死の現状の調査結果や、その防止対策などを取りまとめた報告書のことです。
この白書を公表する目的としては、働き方改革の一環として職場改善を進めることであり、過労死がどれくらい・どのように発生しているかを具体的に示しています。
すべては日本社会における過重労働、それによる労働者の心身の不調を改善するためといえるので、企業で働くすべての人たちにとても関わりの強いものでしょう。
今回の過労死白書のポイントは、以下の3点です。
・ 全業種についてアンケートなどを行い、その調査分析結果を記載
・ 疫学研究等について、これまでの5~10年など長期間の分析結果を記載
・ 業界団体、企業等のメンタルヘルス対策等の実際の「取組事例」のコラムとして数多く掲載
そして全体的には、大きく分けて以下の項目で構成されています。
第1章 労働時間やメンタルヘルス対策等の状況
第2章 過労死等の現状
第3章 過労死等をめぐる調査・分析結果
第4章 過労死等の防止のための対策の実施状況
特別編 新型コロナウイルス感染症への対応状況
その他、企業等のメンタルヘルス対策等の取組事例のコラム
過労死等をめぐる調査・分析結果
過労死白書第3章にて述べられているように、厚生労働省は全業種の企業及び労働者に対してアンケート調査を実施いたしました。
■ 労働・社会分野のアンケート調査結果
4~5年前と比較して「労働時間が短くなった、休日が取得しやすくなった」と回答した労働者はいずれも約3割。
「変わらない」が半数以上。
「長くなった、取得しづらくなった」が1割前後。
上記アンケート調査での3割という数は一見すると大きくないように思いますが、年単位で見てみると、順当に改善傾向があることがわかります。
実際の労働時間の調査結果と照らし合わせると、年間総実労働時間がピークだった平成5年(1,920時間)より、令和元年(1,669時間)は大幅な減少があり、緩やかではありつつも減少傾向が見られます。
また、この結果では、パートタイム労働者の割合が増加傾向にあることが要因の一つとなり、1人あたりの年間総実労働時間が減少していると考えられるようです。
同じく第3章にある「疫学研究等の分析」も、令和2年版過労死白書のポイントの一つです。
過労死や長時間労働問題を防止するにあたり、どのような調査や研究を行ったのか、下記に簡単にまとめます。
■ 疫学研究等の分析
① 職域コホート研究
過労死に至るまでの影響力の強い要因を調査するため、参加同意のあった企業の勤怠記録、ストレスチェック結果、健康診断結果などを5~10年の長期間において調査・分析を行った。
②職場環境改善に向けた介入研究
過労死多発職種の一つであるトラック運転者に対した疲労に関する調査や、同様に夜勤など不規則な勤務体系で負荷の多い看護師に対しても疲労に関する調査を行った。
③実験研究
30代から50代の健常男性を対象に長時間労働を模してパソコン作業をしてもらい、長時間労働による血圧などの影響や、その影響が加齢によりどう変化するかなど実験を行った。
各項目の分析結果についても過労死白書(P143~147)に詳細な記載がありますので、ぜひご確認ください。
新型コロナウイルスによる影響
今回の過労死白書には、特別編として「新型コロナウイルス感染症への対応状況」の項目も最後の方に盛り込まれています。(P246~249)
新型コロナウイルス感染症が発生する以前より過重労働が懸念されていた「運輸業,郵便業」「医療,福祉」、発生後からその対応により過重労働が懸念された「卸売業,小売業」についての状況をピックアップされて、令和2年3月~5月までの月末1週間の就業時間が80時間以上の就業者の割合が公表されました。
こちらを見ると、3月と4月の「運輸業,郵便業」と「医療,福祉」においては、前年同月よりも増加していることが分かります。
新型コロナウイルス感染症により医療現場が煩雑になってしまうことは想定できますが、家で過ごすことが多くなって、ネットで買い物する機会が増えたことで配達物が増えていることも一時期話題になっていましたね。
実際に、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」に設置されている相談窓口などに寄せられた内容として、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う相談が多かったとのことです。
今年は感染症の影響が例年と違う大きな要素の一つではありますが、過重労働・過労死の予防対策は引き続き優先的に進めていくべき重要な課題でしょう。