実は企業にも大きなメリット!~企業による、奨学金の代理返還制度とは?~
- 2021/5/27
- 新入社員
いまの学生が就職活動で重要視している項目とはなんでしょう。
マイナビの発表している2021年卒大学生就職意識調査によると、就活生が企業を選択する際のポイントは「安定性」、「自分のやりたい仕事(職種)」、「給与が良い」がトップ3を占めていました。
次いで「福利厚生」と「働き甲斐」が上位にランクインしています。
今回は福利厚生にも関係してくる「奨学金代理返還制度」をわかりやすくご紹介します。
現在、奨学金を利用している学生の割合は?
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、奨学金受給者の割合は平成26年度よりすべての学校区分において減少傾向にあります。
それでも受給者の割合は47.5%。
ざっくり2人に1人は奨学金制度を活用していると言えるでしょう。
そして現在、大学卒の初任給の平均は技術系と事務系でそれぞれ217,864円と218,472円で、奨学金返済の平均額は16,880円/月。
奨学金単体で考えればそれほど大きな返還額ではないように思えるのではないでしょうか。
しかし、一度平均年収から計算してみましょう。
大学卒の事務系平均初任給をベースとして、健康保険料、厚生年金保険料、所属税、就職2年目からは住民税が引かれると、手取りのお給料は16万前後といった計算になります。
一人暮らしをしている場合、そこからさらに家賃・光熱費・携帯代・日用品・保険料などが必要経費として毎月引かれていきますので、残った金額から奨学金を返済すると考えると、少々心もとない気もしますね。
従来との変更点と企業、学生のメリット
2021年4月、JASSOより、企業の奨学金返還支援(代理返還)制度について公表されました。
従来は、企業が返還支援対象者に支援額を送金、本人がJASSOに返還する方法しかありませんでしたが、企業から直接JASSOに送金することが可能となったのです(支援要件によっては返還支援対象者から一部返還になる場合もあります)。
では、企業から機構への直接の送金ができるようになったことで、どのような変化があるのでしょうか。
企業のメリット
まず、奨学金返済目的の費用の所得税が非課税となります。
また、個人の奨学金返済のための給付という扱いになりますため、給与として損金算入できます。
従来では、企業・返還対象者の双方に掛かっていた税金が非課税になるのですぐから、大きなメリットといえるでしょう。
また、本制度を利用する企業はJASSOのウェブサイトに掲載されるそうです。
学生(支援対象者)のメリット
従来の奨学金支援制度では、企業は「賞与上乗せ型」「毎月上乗せ型」「一時肩代わり型」などといった対応が行われていました。
いずれの形も一時的に返還支援対象者に支払われることで所得扱いになるため、所得税、住民税、社会保険料負担が増える可能性があります。
つまり、同じ条件で入社した新卒同士であるにも関わらず、微々たる額ではありますが、給与に差異が生じてしまっていたわけです。
企業がJASSOに直接送金することで、給与に上乗せされていた分の納税負担がなくなります。
そのうえ、個人で行っていた返還にかかる作業を企業が肩代わりしてくれるので、送金などといった作業もなくなります(企業が対応してくれるおかげで返還忘れの防止にもなるため、返還総額はが順調に減っていくことも大きいですね)。
企業に申込みを行い受理された場合、支援対象者には企業による代理入金後に、代理返還した旨の通知作成が届きます。
詳細は、JASSO「企業の奨学金返還支援(代理返還)」を参照ください。
企業人事が狙える効果
企業にとっては金銭的メリットに限らず、人事担当としても大きな効果が望めると予想されます。
・ 入職率の増加
・ 離職率の低下、定着率の上昇
実際に、奨学金返済支援制度を導入した企業で説明会参加率が増加したなどといった事例もあります。
採用活動の際に母数となる人員の確保や、福利厚生まで確認する意識の高さとサーチ能力の高い人員が期待できます。
また、奨学金制度を活用したいと考える場合、長期間の在籍が予想されますので、雇用の確保にもつながるでしょう。
<問い合せ先>
独立行政法人日本学生支援機構 奨学事業戦略部 奨学事業戦略課 総務係
電話:03-6743-6029
<参考>
・ マイナビ「2021年卒大学生就職意識調査」
・ 独立行政法人日本学生支援機構『平成30年度 学生生活調査結果』