「意味がない」で終わらせないために!産業医面談の実態を解説

「産業保健新聞」の運営元、ドクタートラストで産業保健に携わる仕事をしていくなかで、ここ数年で産業医の認知度が格段に上がったように感じています。
一方で、企業において業務上産業医と関わりを持つ方は極一部です。
産業医は、多くの企業において毎日会社にいるわけではないため、我々が身近に感じていた「保健室の先生」とはかなりイメージが異なります。

今回は産業医の業務の一部である「産業医面談」について、ドクタートラストにあげられた2024年下半期の医師報告をもとに見ていきたいと思います。

産業医面談って受けないとだめなの?

たとえば、繁忙期やストレスチェック実施後に「○○さん産業医面談の日程組みますね」と声をかけられた経験はありますか?
もしかしたら繁忙期とストレスチェックが重なっていて、「こんなに忙しいのに面談までやらないとダメなの?」とイラっとしてしまった方もいるのではないでしょうか。
実は産業医面談には、安全衛生法により実施が義務付けられているものと、義務ではないが実施すべきとされているものがあります。

義務付けられている産業医面談
・健康診断結果に異常所見があった際の産業医面談
・基準時間を超えて残業した際の過重労働者面談
・ストレスチェック結果をもとに高ストレス者から希望があった場合の高ストレス者面談

義務ではないが安全配慮義務上、実施すべき産業医面談(これらは就業規則に規定があることが多い)
・休職者面談
・復職面談

復職面談では、主治医からの診断書や現場の状況・生活リズムなどヒアリングした内容を元に産業医が復職判定を行います。
これは、実際の業務状況などを知らない主治医の判断のみでは正しい判断を下せない可能性があるためです。
セカンドオピニオンみたいなものだと考えていただくと、イメージしやすいかもしれません。

ドクタートラストから見た産業医面談の実態は

毎月平均して400件近くご面談報告をいただきます。
中でも平均して多い面談の内容は下記の通りで、いずれも月平均100件を越えています。

健康関連産業医面談:健康に関する相談が多く、内容が複合的な場合もある。
メンタル不調者面談:本人からの依頼または周囲からの指摘で行われ、継続的に面談が発生している。
復職者面談:復職前面談・復職後経過面談といった前後の面談も含まれていることが多いため全体数が増えている。

上記の面談は月ごとに波があるのが特徴的です。

逆に件数が平均して落ち着いているのが下記の内容です。
過重労働者面談が継続して一定数発生しているのが個人的に一番心配ですね……。

高ストレス者面談:ストレスチェック実施後に、本人または企業からのアナウンスで面談が組まれることが多い。(健康関連産業医面談で実施していることも多数ある)
休職者面談:休職中に産業医面談を実施する企業は少ない。また、対象者が面談をできるメンタル状況にないため報告数が落ち着いている。
・過重労働者面談:企業毎に繁忙期が異なるためか、毎月一定数発生している。

社会全体におけるこれからの課題

初めに申し上げたように、企業内で産業医と関わりを持つ方は極々一部です。
まだ、産業医という役割と上手に付き合う・活用するには社会的に成長過程にあると感じます。
企業の担当者さまから「産業医に何をどこまで相談していいのか」とご相談いただくことも多々あります。

対象となった方も産業医による面談を行う理由を知らない人が大多数なのではないでしょうか。
「産業医面談をしても何も変わらない」から「産業医面談をする意味がない」に認識が変化してしまうのが一番悲しいです。
面談自体に意味はあります。ただ、産業医が面談記録を企業にフィードバックしてすぐに何かを変える、というのは現実的に難しい状況です。

従業員が働きやすい(ワーク・ライフ・バランスが良い)社会を目指すために何が必要か。産業医と企業担当者だけでなく、我々も考えていくべき課題だと感じました。

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大月誠司株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

サービス業や人材紹介業を経てさまざまな業種、役職の人とお会いしてきました。
ストレスの形も業種や役職によって一つひとつ多様化してきていると感じております。
働く人の心と身体を健康にするお手伝いを、ドクタートラストで実現していきたいと思います。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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