2023年5月8日以降、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが、2類感染症(総合的な観点からみた危険性が⾼い感染症)から5類感染症(総合的な観点から危険性が⽐較的低い感染症)に変更されます。
これに伴って、企業に対する感染対策への協力要請が終了し、テレワーク実施や感染予防・拡大防止の根拠となっていた「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」も廃止されます。
そこで今回は、感染者の扱いや、感染対策のために購入した備品の扱いなどについて、各種資料をもとにわかりやすく解説します。
感染したらどれだけ休む?濃厚接触の扱いは?
新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類に変更されることで、もっとも大きく変わるのは、感染時の対応です。
5月7日までは感染症法に基づき、一定期間の外出要請が求められていたところ、今後は、インフルエンザなどと同様に、企業や個人の判断にゆだねられるようになります。
2023年4月14日に厚生労働省が発出した「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の療養期間の考え方等について(令和5年5月8日以降の取扱いに関する事前の情報提供)」では、各分析や、諸外国の事例などを踏まえ、以下が推奨されています。
・発症後5日を経過し、かつ、症状軽快から24時間経過するまでの間:外出を控える
・発症後10日間が経過するまで:不織布マスクを着用する、高齢者などとの接触は控える
参考までに、学校など教育機関においては新型コロナ感染時に「学校保健安全法に基づく出席停止期間」の検討が進められています。
企業でも、これら状況を踏まえ、社内規程の見直しなどを行っていきましょう。
また、5月8日以降は、保健所から「濃厚接触者」として特定されることは一般にはなくなります。
※参考※諸外国の対応(2023年4月13日時点)
・ アメリカ:無症状者は5日間の隔離を推奨、有症状者は5日間が経過し、解熱剤の服用なく24時間の解熱を得られるまで隔離を推奨、および両者ともに10日間は屋内のマスク着用を推奨
・ イギリス:18歳以上は5日間の隔離、10日間はハイリスク者との接触を避けることを推奨
・ 台湾:抗原検査で陰性になるまで、または発症(無症状の場合は検査)から10日間を自主健康観察期間として、症状がある場合は不要不急の外出を避け、自宅待機を推奨
・ シンガポール:軽症者は症状がある間の自宅待機を推奨(待機期間は設けられていない)
・ フランス:感染予防としてマスク着用やテレワークを推奨(待機期間は設けられていない)
・ 勧告:違反した場合は罰則の対象となる隔離義務(7日間)。隔離期間を5日に短縮するとともに「義務」から「勧告」に変更予定
・ ニュージーランド:7日間の隔離義務
補助金で購入した備品の扱い
オフィスでの感染対策として購入した検温器やパーテーション、二酸化炭素濃度測定器などといった備品は、今後も感染対策としての活用・保管、あるいは処分が考えられます。
これら備品が補助金などで購入・取得したものである場合は、処分に際して一定の要件が置かれているため、注意が必要です。
たとえば公益財団法人東京都中小企業振興公社が中小企業を対象に、感染症対策のための工事費や備品購入費を助成する「感染症対策サポート助成事業」では、以下のようなルールが定められています。
・ 税抜50万円以上の財産を処分するときは、あらかじめ申請・承認が必要(耐用年数期間を経過している場合はこの限りではない)
・ 上記財産の処分によって収入を得られたとは、その全部または一部の納付が求められる場合もある
なお細かな扱いについては、助成金の交付団体によって異なることから、各要綱を確認しましょう。
さいごに
5月8日以降の新型コロナウイルス感染症の対策で、一番基本となるのは「個人の選択を尊重」です。
たとえば「マスクをする」「マスクをしない」も各々の選択に該当します。
企業においては、一定の規程を整備するとともに、一方では、従業員の「個人の選択を尊重」を意識するよう留意しましょう。
<参照>
・ 厚生労働省事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の療養期間の考え方等について(令和5年5月8日以降の取扱いに関する事前の情報提供)(PDF)」
・ (上記別紙)厚生労働省「感染症法上の位置づけ変更後の療養に関するQ&A、専門家による新たな分析結果、諸外国の状況(新型コロナウイルス感染症の療養期間)(PDF)」
・ 公益財団法人東京都中小企業振興公社「感染症対策サポート助成事業【中小企業等による感染症対策助成事業 リニューアル】」
・ 内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室長「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけ変更に伴う業種別ガイドラインの廃止及び位置づけの変更に際しての事業者の取組への支援について」