「あなたに知ってほしい」と「みんなに知ってほしい」は違う~SOGIハラをめぐる問題~
- 2017/5/19
- メンタルヘルス
「あの人、こっち(ゲイ)なんだって」
「おかま(オネェ)みたい」
これまで、こんな発言に出合ったことはないでしょうか。
私自身、今まで一度もこんな発言をしたことがない!とは言い切れません。
悪意や否定の気持ちがなくとも、これまで学校などで茶化して使った言葉がもしかするとその場にいた誰かを傷つけていたかもしれません。
そういった行動に「SOGIハラ」という名前が付きました。
性的指向と性自認を示す言葉
「SOGI」は「Sexual Orientation(性的指向)」と「Gender Identity(性自認)」の頭文字で、好きになる性と自己認識する性を示す言葉として国際的に使われています。
被害者が性的少数者かどうかを考慮せずに差別的な言動をしたり、性的指向を許可なく公表したり、望まない性別の服装を強要したりするのが、SOGIハラとされます。
2017年 3月に行われた「レインボー国会」にて、実態を知ってもらうためにこの名前が付けられました。
”アウティング”というSOGIハラ
2016年、一橋大学の学生が自らの同性愛を知人に告白し、それを受けた知人が暴露(アウティング)したことにより同性愛の学生が投身自殺を図った事件がありました。
”アウティング”とは、「本人の了解を得ず、公にしていない性的指向や性自認を暴露すること」を言います。
LGBTという言葉はこのところ、世間に馴染みつつありますが、それでも性的少数者の多くが自らの性的指向をオープンにせずに生活をしています。
しかし、「自らを知ってほしい。本当の自分を偽ることなく生きてみたい」という思いから、信頼できる身近な友人や家族に告白(カミングアウト)する人も増えてきています。
皆さんは、もし自分のとても身近な人から、「僕(私)はゲイ(レズビアン)なんです」と言われたとしたら、どうしますか?
ここでお伝えしたいのは、性的マイノリティーであることを「あなたに知ってほしい」と「みんなに知ってほしい」は違うということです。
突然のカミングアウトに戸惑うかもしれませんが、それは相手が「あなた」という人間を信頼しているから、勇気を持って打ち明けてくれたのでしょう。
もしも職場の同僚や、後輩の方からカミングアウトを受けたとしたら、世間一般のイメージや固定概念を取り払い、その人を一人の大切な友人として向き合って欲しいと思います。
カミングアウトに対して、受け入れ、理解をしてくれる人がいるだけで、性的マイノリティーの方にとっては、自分らしく自信をもって生きていく力になるでしょう。
そして、そういった方の存在によって、マイノリティーとマジョリティー(多数派)の垣根をなくすことができるのです。
日本は少しづつ変化している
先日、東京・渋谷区に移転・新装オープンした大手ディスカウントショップ、ドン・キホーテに「ALL GENDER用トイレ」が設置されたことが話題となりました。
渋谷区では同性パートナーシップ条例に基づき、「区民および事業者はパートナーシップ証明に最大限配慮しなければならない」としています。
また、2013年より代々木公園・渋谷にて行われているTokyo Rainbow Prideの盛況等、世間が少しづつ変化していることを肌で感じます。
今の日本ではまだLGBT、性的少数者のトピックを公に扱うことが難しい現状があることは否めません。
LGBTだけでなく、すべての事象において万人が受け入れられるということはあり得ないためです。
ただ、”マイノリティの問題だから触れづらい”と腫れ物を扱うようにするのではなく、一人ひとりの顔が違うように、個人の特性として向き合える社会になっていって欲しいと思います。
例えば、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんや歌手のレディ・ガガさんなどがLGBTに関して公表、また受け入れることを公言していますが、著名人がメディアで公言すれば、世間にとって大きな影響力となります。
特別に肯定する必要は勿論ないですが、職場やプライベートでLGBT、性的少数者について偏ったイメージを持つことや、否定するような発言をなくしていくだけでも、”SOGIハラ”となるリスクは減らせると思います。
焦る必要はありませんが、一歩ずつでも変化する必要はあると思います。
かつて女性に参政権がなかったように、黒人と白人が共に生活することがあり得なかったように、いつか性別などにとらわれない時代が、必ず訪れると思います。
受け入れる声が多くなったその時に、社会が自然と変わっていることを理想に描いて、私たちが今できることから始めて貰えたら、と願っています。