EAP(従業員支援プログラム)はメンタルヘルスに効果的?
- 2017/1/16
- メンタルヘルス
EAPの始まりは1950年代アメリカ
EAPとは、“Employee Assistance Program”略称で、「従業員支援プログラム」と訳します。
EAPは、1950年代、第二次世界大戦の帰還兵士に対するケアが始まりと言われています。
ベトナム戦争後、後遺症を抱える兵士たちをはじめ、不況やリストラ等により麻薬依存やアルコール依存、うつ状態の人々が爆発的に増加したことでその波紋が産業界にも及び、労働者の生産性も低下の一途を辿りました。
そのような混乱状態にあったアメリカにおいて、復活に寄与したのがEAPと言われています。
日本でも1980年代以降徐々に浸透し、近年では健康増進や法令遵守、組織的なメンタルヘルス対策の推進など様々な目的のためにEAPを導入する企業が増えています。
(参考:EAP総研)
本場アメリカでは95%の企業が導入
アメリカにおいてEAPの効果と信頼性は大きく認められており、経済誌「Fortune」が選んだ大企業(国内優良企業ベスト500社)の95%が導入しています。
<EAPサービスの例(2011.アメリカ合衆国労働省)>
・メンタルヘルス関連サービスの提供や医療紹介
・薬物乱用やアルコール乱用関連サービスの提供や医療紹介
・離婚や養育などの個人的な問題へのサービスや紹介
・生活支援についての情報提供(老親介護やファイナンシャルプランニングなど)
・健康づくり支援(禁煙や減量など)
・キャリアカウンセリングなどの職業的支援
企業のメンタルヘルス対策への取り組み状況
日本でEAPの導入が盛んになった背景には、さまざまな労働環境の変化にともなう従業員のストレス状態の悪化があります。
先行き不透明な経済状況や金融危機などによる世界的な景気後退、成果主義の導入、終身雇用の崩壊、経済のグローバル化、コンプライアンス重視、IT化など。
企業をとりまく環境の変化により、従業員の心理的負担は増大の一途をたどっています。
特徴は「会社に知られない」こと
EAPの一番の特長は、「外部機関が実施する」という点です。
仕事をする上でのストレスや悩みだからこそ、社内の人には知られずに相談したいというケースも多いでしょう。
また、病院や有料カウンセリングを受けるのは敷居が高いというケースにも有用です。
職場の福利厚生サービスとして従業員が自己負担無しで自由に気軽に相談できる場があるという安心感が、心身の不調の早期発見・早期対応につながります。
EAPのメリット
・職場に知られずに相談ができる
・無料で専門家のアドバイスを聞くことができる
・従業員満足度、生産性の向上
・企業イメージの向上
しかし一方で、EAPの普及に伴い、その利用の難点を指摘する声も増えてきています。
EAPのデメリット
・利用率が低い
・相談対応者が医療専門職でない場合がある
・基本的に電話・メールのみでの相談となり、対面での相談ができない
・企業側は相談内容を把握できないため、具体的な対策を講じることが難しい
・利用率の割にコストが高い
「過労死」「過労自殺」「ストレスチェック」等のトピックからも見られるように、はたらく人々を取り巻くメンタルヘルスの問題は増加し続けています。
EAPの導入が解決の一助となり得るのか、今後も動向に注目する必要がありそうです。