オフィス、工場、建設現場……人々が働く職場には様々な場所があります。
中でも、東京オリンピックに向けて需要が高まっている建設業は、製造業に次いで労災が起こりやすい職場とされています。
つい先日も、高層ビルの建設現場での転落事故が大きく報道されたばかりですが、今回は、そんな建設現場で起こる労災や防止策についてご説明します。
日々変化し続ける職場
常に安全対策が必要とされる建設現場は、安全対策がとても難しいといわれています。
その理由として、以下の3つが考えられています。
・ 多様な業者が入退場するため
・ 作業内容が日々変化するため
・ 雇用期間が短いため
・ 単品受注生産であるため
(参照:『安全活動にカツを入れる本』中村秀樹・高木元也・志村満・降籏達生 (2007)労働調査会)
上記の理由から、建設現場は常に働く環境が常に変化しており、それに伴って注意を向ける部分も常に変化するため、固定化された安全対策ができないということが考えられます。
ヒューマンエラーによる労働災害
建設業は、労働災害が最も多く起きる業種の1つです。
中でも、圧倒的に多いのが墜落災害、次いで建設機械による災害です。
例えば、「ハーネスを未装着して墜落」や「バックしてきた重機にぶつかる」など、ヒューマンエラー(人為的過誤や失敗)によって引き起こされる災害が多く起きています。
それでは、なぜヒューマンエラーが起こってしまうのか考えてみましょう。
ヒューマンエラーは主に12個の要因によって起こるとされています。
これらは誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
建設設業では、作業が完了すれば、次の新しい建設現場が職場となるため、入社したての新入社員のみならず、長く働いている従業員でも、「不慣れ」は起こり得ます。
更に、長時間の肉体労働や夏の炎天下や冬の氷点下の中での作業となると、体力は大きく消費されます。
人は疲労状態になると、通常よりも集中力も低下し、ミスを起こしやすくなるため、ヒューマンエラーも起きやすい環境となります。
ヒューマンエラーを防ぐために
原因が分かるのであれば、対策方法はあります。
それでは、どのような対策方法があるのか考えてみましょう。
① 安全設備対策の徹底
建設現場での労働災害対策には必須です。
安全帯や手すりの設置、各種保護具の着用など、これらは建設現場で働く方々には当たり前だと思われるかもしれません。
しかし、当たり前になると人は不注意を起こしかねません。
「これくらいなら大丈夫だろう」などの意識も当たり前の状況が生み出します。当たり前だとは思わずに、「なぜ着用するのか」、「どこに何が設置されているのか」といったことに注意を向けてみましょう。
瞬間的に注意力が働かない場面で、命を助けてくれるのはこれらの設備となります。
② 安全管理活動意識の浸透
常に変化し続ける建設現場では、マニュアル化された安全設備設置や対策では限界があります。
また、上述したヒューマンエラーのうち、中高年の機能低下や疲労等は従業員に内在しているものであり、なくすことはできません。
そこで、労働災害に繋がる状態を作らないという視点で考えてみましょう。
例えば、安全衛生教育の徹底はもちろん、新人のみならず従業員全員に向けて定期的に行ってみたり、毎日のパトロールや現場での声のかけ合い等、安全設備を設置する以外にも、働く人の意識次第で多くの安全対策を実施することができます。
思わぬ労働災害を防ぐためには、従業員個人の意識改革が重要です。
そして、個人だけが注意するよりも、集団で注意した方がその効果は大きくなります。
ぜひ、職場全体で取り入れてみてはいかがでしょうか。