出向社員の健康管理―どうする?産業医面談や健康診断―
- 2017/12/8
- 労働環境
業界によってはよく耳にする事も多い出向ですが、出向の際、各種保険や就業規則等、出向先と出向元、それぞれ適用されるものが変わってくるはご存知でしょうか?
出向の種類
在籍出向
出向元との雇用関係を維持しつつ、その労働契約の権利の一部を出向元から出向先に譲渡させ、出向先で業務を行わせるもの
転籍出向
出向元をいったん退職して、他社へ就職すること
今回は適用が複雑な在籍出向についてご説明していきます。
就業規則
出向労働者が適用になる就業規則は、出向元と出向先との契約(出向協定)の内容によって決まります。
出向契約に定められたことが優先されるようです。
解雇(懲戒解雇)・退職等の雇用契約の根幹に係るような人事権に関することは「出向元」、労働時間・休日・服務規則といった勤務に関係は「出向先」となります。
また、休職や福利厚生については出向元・出向先で協議して決定する事項になります。
年次有給休暇
出向の場合、出向元との雇用関係が継続しているとされるため、出向先である子会社で年休の取得申請があった場合でも、出向元会社で発生した年休を取得することとなります。
各種保険の適用先
労災保険
労災保険は勤務を行っている方になりますので、出向先での適用となります。なお、出向元からも給与が支払われている場合は合算して適用します。
雇用保険
主たる賃金を支払う側での適用になります。
社会保険
健康保険や厚生年金の社会保険ですが、こちらについては直接給与を支払う方での適用となります。
出向元、出向先の両方から支給される場合は、両方で使用関係が存在することになります。
そうなると両方の会社で被保険者となってしまうので、従業員がどちらかを選択して、適用することになります。
安全配慮義務
安全配慮義務については基本的に指揮命令権の発生する出向先で義務を負います。
そのため、健康診断や産業医面談等も出向先で適切な措置を講ずる必要があります。
しかしながら、出向元とも雇用関係があるため、安全配慮義務がなくなるわけではありません。
出向先、出向者から必要な情報を入手し、管理、また必要な場合は適切な措置を講ずる必要があります。
ストレスチェック
企業に実施が義務づけられているストレスチェックに関しても、先に述べたように、出向元・出向先どちらで実施するかは契約によって異なります。
ただし、集団分析を行う観点からみると、実際に働いている職場(=出向先)で受検を行い、集団分析の際は出向者も含めて行うことが望ましいとされています。
定期健康診断に関しても同様で、出向先・出向元共にきちんと結果を把握しておくことが大切です。
健診結果の実施主体・費用負担・保管先については、出向元・出向先の契約内容によります。
出向や派遣等、雇用関係や指揮監督権が複雑ではありますが従業員が混乱せずに働けるようルールを明示しましょう。