育休取得率が10%にも満たない日本の働くお父さんたち。
そんなお父さんたちが育児休業を取得しやすくすることで、男女関係なく仕事と育児を両立できるようにするため、2021年6月3日に育児・介護休業法の改正法が衆議院本会議で成立しました。
今回は、この育児休業の改正点のポイントを解説したいと思います。
男性はより柔軟に育児休業を取得できるように
1.「出生時育児休業」を新たに創設
今回の改正法では、「出生時育児休業」の創設が柱であると言えるでしょう。
この制度では、子が生まれてから8週間以内に最大4週間の休みを2回取得できるようになります。
また、取得する場合の申出期限は2週間に短縮されます。
産後8週以内に取得することから「男性版産休」と言えばイメージしやすいかもしれません。
これまでの育休制度では、「パパ休暇」という子の出生後8週間以内に父親が育休取得した場合には、別の時期に再度休業を取得できる制度はあったものの、会社への申出期限が1ヶ月であったり、分割不可であったりするため、柔軟性という点ではイマイチでした。
今回の改正により、より柔軟に休業を取得することが期待できます。
2.育児休業期間の分割も可能に
改正前の休業法では、休業期間を分割することはできませんでした。
また、取得期間を延長する場合の開始時期は、子が1歳になる、もしくは1歳半になるタイミングに限定されていました。
それが今回の改正では、以下の改正点を盛り込み、より柔軟に休業期間を設定できるようになります。
・ 休業は分割して2回まで取得可能
・ 1歳以降に延長する場合は、休業開始日を柔軟に設定できる
上記の男性版産休と組み合わせると、男性はなんと最大4回まで休業を取ることができるのです。
これによって、休業の取り方の選択肢が増えることになります。
お母さんとお父さんが協力して、交代しながら休業を取って育児に取り組むことも可能です。
またお父さんにとっては、お母さんが里帰りから戻るときや職場復帰するときなど、よりサポートが必要な時期に柔軟に休業を取ることができるようになります。
企業側の環境整備、育休取得の働きかけが最重要
1.育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の義務づけ
これまでの育休制度では、育休取得や環境整備に関する規定はありませんでしたが、これからは企業の規模にかかわらず、以下の内容が義務づけられます。
・ 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(研修、相談窓口設置等)
・ 妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確
男性の育休取得調査の中で、「勤務先に男性の育休取得の取組がある」「上司の理解があった」など、企業側の働きかけがある職場では、取得率が高いという結果が出ています。
その裏付けとして、男性が育休を取りづらい理由として「勤務先に制度がない」「育休を取得しづらい雰囲気がある」といったものがあることから、企業側からの働きかけは大変重要な意味があると言えます。
2.有期雇用労働者も無期雇用労働者と同じ扱いに
改正前は、有期雇用労働者が育児休業を取得する場合の条件は以下の2点がありました。
① 引き続き雇用された期間が1年以上であること
② 出生した子が1歳6カ月になるまでの間に契約が終了することが明らかでないこと
改正後は①の条件が撤廃され、取得条件は②のみになります。
したがって、無期雇用労働者と同じ取り扱いになるということです。
育児休業は「単なる休暇」ではありません!
筆者は女性のため、どうしても女性目線になってしまうことを予めお許しいただきたいのですが、出産・子育て、さらに仕事との両立というのは、女性にとって大変なプレッシャーであると思います。
また、生まれたばかりの子どもと一緒に過ごす時間は人生の中でかけがえのないものだとも思います。
お子さんの誕生を予定されている男性にはぜひ、奥様のサポートとお子さんとの時間のため、育休取得を検討してほしいと思います。
加えて、仕事との両立が叶わず離職する女性がいるなかで、企業に課される役割は年々大きくなってきています。
企業規模にかかわらず、ぜひ経営者の方にも「社会全体で子育てをする」という考えを広く持っていただければと思います。