社会保険の定時決定の時期がやってきました

今年も社会保険の定時決定の時期がやってきました。
人事・給与関係の方には馴染みのある手続きですが、そうでない方には「なんか聞いたことあるけど内容はよくわからない」という手続きの代表格かもしれません。

「なんか聞いたことあるけど……」という方!給与明細を見てみてください。
会社勤めをされている方なら、毎月のお給料から社会保険料が天引きされているはずです。
自分の保険料がどのように決まるのか、実は知らない方もいると思います。みなさんが毎月支払っている社会保険の金額を決めるのが、この「定時決定」なのです。

自分の保険料がどのような仕組みで決まるのか、改めておさらいしてみましょう。

社会保険料はどのように決まるのか?

みなさんの社会保険料は、「標準報酬月額」を「定時決定」または「随時決定」により見直すことによって決まります。

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、毎月の保険料を決める上で、ベースになる報酬のことです。
このベースとなる報酬を以下の等級に分けて標準報酬月額とし、保険料を決定します。

健康保険➡5万8,000円(1等級)~139万円(50等級)
厚生年金保険➡8万8,000円(1等級)~65万円(32等級)

定時決定とは

報酬額がベースとなり保険料額が決まることをお話しました。言い換えれば、報酬が増減すれば、保険料額も増減するということなのです。しかしながら、毎月毎月、報酬に応じた保険料を算出していてはいくら時間があっても足りません。

そこで定時決定では、1年に1回、実際に支払われている報酬と標準報酬月額に大きな差が生じないようにするため見直しを行います。これが一番の目的です。

随時改訂とは

被保険者の報酬が、昇給・降給等による変動によって大幅に変わったときは、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。
これを随時改定といいます。随時改定は、次の3つの条件をすべて満たす場合に行います。

  • 昇給または降給等により固定的賃金に変動があった。
  • 変動月からの3カ月間に支給された報酬の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
  • 3カ月とも支払基礎日数が17日以上である。

上記すべての要件を満たした場合、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4カ月目の標準報酬月額から改定されます。
ただし、次のような原因と結果が逆の場合は、新旧の標準報酬月額に2等級以上の差があっても随時改定の対象とはなりません。

【パターン1】
固定的賃金は上がったが、残業手当等の非固定的賃金が減った⇒結果、2等級以上さがった

【パターン2】
固定的賃金は下がったが、非固定的賃金が増加した⇒結果、2等級以上あがった

定時決定の手順

定時決定の対象者

定時決定の対象となるのは、7月1日現在で在職している全被保険者です。ただし、次の人は定時決定の対象から除かれます。

  • 6月1日以降に被保険者資格を取得した人
  • 6月30日以前に退職した人
  • 7月に随時改定をする人
  • 8月または9月に随時改定が予定されている旨の申出をした人

定時決定の基準となる報酬

定時決定の対象となるのは、4月、5月、6月に実際に支払われた報酬です。この3か月間の平均額を計算して、新しい標準報酬月額が決定されます。標準報酬月額の対象となる報酬とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与などの名称を問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてです。また、通勤定期券、食事、住宅など現物で支給されるものも報酬に含まれます。

定時決定によって決定した新しい標準報酬月額の適用開始月は、現在の標準報酬月額と比較した結果で大きく2パターンに分けられます。

【パターン1】新旧の標準報酬月額に2等級以上の差がある場合
➡ 随時改訂に該当し、7月分保険料から新しい保険料が適用されます。

【パターン2】新旧の標準報酬月額の差が2等級未満の場合
➡9月分保険料から新しい標準報酬月額が適用されます。

4~6月の報酬が高いと保険料が高くなる?

定時決定の基準となる報酬の中には残業手当も含まれます。ということは、4~6月の残業手当が多いと保険料も高くなる、という可能性もあるのです。

またひとつ注意ですが、「4~6月に支払われる報酬」が基準であって、4~6月の残業時間に気を付ければよい、というわけではないので注意してください。残業手当が翌月精算の会社では3月から残業時間を意識しておく必要があります。

とはいえ残業は業務都合ですから、保険料を気にしてこの時期だけ残業を抑えるというのはなかなか難しいと思いますので、常日頃から残業時間を意識しておく必要があるのではと考えます。

社会保険は、料率が毎年のように上がっていますし、給与明細を見る度に「高いな……」と感じる方が多いと思います。筆者もその一人です。

ですが、私たちがライフスタイルの変化(病気やケガ、出産、死亡、老齢、障害、失業など)で困難に遭遇したときに一定の給付を行い、生活の安定を図ってくれる大切な保険料でもあります。自分の保険料がどのように決まり、どう活用されていくのか、この記事が興味を持つ一助になればうれしいです。

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柳迫 里佳株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

IT企業の事務部門にて、人事・経理・総務等の基幹業務を10年ほど経験。残業過多や人間関係により体調を悪くする社員がいる中で「1人ひとりがわくわくしながら働くにはどうすればよいだろうか」と考えるようになり、産業保健を扱うドクタートラストに興味を持ちました。業務効率化や法改正等、事務担当者目線での話題をお届けしたいと思います。
【保有資格】第二種衛生管理者

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