2023年11月24日、厚生労働省は「令和4年派遣労働者実態調査」の概況を発表しました。
厚生労働省は、雇用の構造に関する実態調査として、その時々の雇用情勢に応じたテーマで調査を実施しています。
派遣労働者実態調査は派遣労働者の就業実態や事業所における受け入れ状況、また、労働者派遣法改正(2015年9月30日施行)前後の変化を把握することで、労働者派遣制度に関する施策の立案などに役立てる目的で、2004年に最初の調査が実施されました。
その後は不定期で実施されています。
2022年10月1日現在の状況について、5人以上の常用労働者を雇用する全国の事業所17,462か所、及び当該事業所で就業している派遣労働者10,978人に対して調査が実施されました。
今回の調査結果は、そのうち回答のあった、8,686事業所(有効回答率49.7%)と7,119人(有効回答率64.8%)の結果を集計したものです。
調査結果
今回の調査では、全体の12.3%の事業場で派遣労働者が就業していることがわかりました。
派遣労働者側と事業所側の実態について、それぞれ紹介していきます。
派遣労働者の就業実態
・派遣労働者として働いている理由
「自分の都合のよい 時間に働きたいから」が30.8%、「正規の職員・従業員の仕事がないから」が30.4%でした。
・今後の働き方の希望
「派遣労働者として働きたい」が34.2%、「派遣労働者以外の就業形態で働きたい」が37.0%という結果でした。
事業所における派遣労働者の実態
・派遣労働者を就業させる主な理由
派遣労働者が就業している事業所では「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」が76.5%で最も多い結果となりました。
・派遣労働者を正社員として採用する制度
派遣労働者を正社員として採用する制度がある事業所の割合は14.3%で、このうち「過去1年間に正社員に採用したことがある」と回答したのは1.6%でした。
前回の調査と比較して変化が見られた点
2017年実施の調査結果と比較して変化が見られた点は、「教育訓練の実施状況」の項目です。
派遣労働者に対して教育訓練の実施状況を調査した結果、過去1年間に「教育訓練を受けたことがある」と答えたのは65.5%となっており、前回より15.1%増えています。
この変化には、2020年の労働者派遣法改正により、これまで配慮義務であった「派遣労働者の教育訓練の実施」が義務化されたことが影響していると考えられます。
まとめ
労働者派遣制度は、事業所側の人手不足を改善し、派遣労働者側も柔軟な働き方を実現できるため、どちら側にもメリットのある制度です。
しかし、「自分の都合の良い時間に働きたい」という回答と同じくらい、「正社員として働きたい」「正規の仕事がない」と答えた労働者がいることがわかりました。
そのなかで、過去1年間に派遣労働者を正社員として採用した事業所は全体の1.6%であり、正社員登用制度が機能しているとは言い難く、制度の見直しや改善策の検討が必要だと考えます。
今回の調査で、教育訓練の義務化などの、正社員と派遣労働者の待遇差をなくすための法改正が、実際に労働環境の改善につながっていることが明らかになりました。
このことから、今後、派遣労働者を正社員として採用する制度についても改善が行われれば、事業所側・派遣労働者側それぞれの希望する労働環境の実現が可能になるのではないでしょうか。
<参考>
・厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査の概況」
・厚生労働省「平成29年派遣労働者実態調査の概況」