夏も近づくとビールがおいしい時期になります。
お風呂上りのビールがついつい増えてしまう……そんな人も多いかもしれませんが、令和4年4月から改正道路交通法施行規則が順次施行されているのはご存じですか?
社用車を運転するためにはアルコールチェッカーでチェックしてからが義務になります。
今まであまり注意してこなかった、寝る前の飲酒にも注意が必要かもしれません。
今回は法律の変更点と詳細、運転前の注意についてみていきましょう。
「改正道路交通法施行規則」何が変わる?
今まで安全運転管理者に対して、運転前に「運転者が飲酒により正常な運転をすることができない恐れがあるかどうか」を確認すること等が義務づけられていました。
しかし、確認内容の記録は義務付けられておらず、確認方法についても具体的に定められていませんでした。
今回、道路交通法規則が一部改正され、安全運転管理者の業務が新たに追加されました。
【新たな対象】
・ 乗車定員が11人以上の自動車が1台以上
または
・ 自動車が5台以上を使用している事業所(軽自動車も対象。50CC以上の自動二輪車も0.5台として計算される)
下記の業務がその事業場の安全運転管理者に義務化されます。
●令和4年4月1日施行
□ 運転前後の運転者に対し、当該運転者の状態を目視等で確認することにより、当該運転者の酒気帯びの有無を確認すること
□ 酒気帯びの有無について確認し、1年間保存すること
●令和4年10月1日施行
□ 運転手の酒気帯びの有無の確認をアルコール検知器(アルコールチェッカー)を用いて行うこと
□ アルコール検知器を常時的有効に保持すること
具体的な確認方法
義務を確実に実施できるよう、詳しくみていきましょう。
【1】そもそもアルコールチェッカーとは?
呼気中のアルコールを検知して、その有無や濃度を警告音、警告灯や数値等により示す機械のことです。
【2】目視等で何を確認するか?
運転者の顔色、呼気のにおい、応答の声の調子等で確認することです。
確認のタイミングは業務前後で問題なく、直行直帰など直接確認できない場合であれば、携帯型のアルコール検知器(アルコールチェッカー)を携帯させて、カメラ、モニターや電話で顔色や声の調子とともにアルコール検知器による測定結果を確認することが求められます。
電話でもアルコールチェッカーの使用の「有・無」、酒気帯びの「有・無」について口頭で伝えてください。
【3】何を記録しているか?
確認を行った場合は以下について記録を行いましょう。
・ 確認者名
・ 運転者
・ 運転者の業務に関わる自動車の自動車登録番号または識別できる記号や番号等
・ 確認の日時
・ 確認の方法は①アルコールチェッカーの使用の有無(令和4年10月1日から義務)、②対面でない場合は具体的方法
・ 酒気帯びの有無
・ 指示事項
・ その他必要な事項
なお、アルコールチェッカーの測定数値を記載する必要はありません。
飲酒運転にならないために、個人では何に注意するべき?
アルコールは「少量」でも脳の機能を麻痺させるものであり、飲酒は交通事故につながる危険性を高め、飲酒運転は危険であることは誰もが知っていることだと思います。
寝たら分解される、サウナに入れば、水をたくさん飲めば早くお酒が抜けるイメージがあるかと思いますが、尿代謝のほとんどは肝臓で行われるため、わずかにしか変わりません。
つまり、夜遅くまでアルコールを飲んでしまうと、水をたくさん飲んでも数時間では抜けきらず、翌日でも飲酒運転になり、アルコールチェックではアルコール反応が出る可能性があります。
「何時間経過したらいいのか」という、時間は不確定ではありますが、一般的なアルコールの分解速度として1時間で分解できるアルコールの量は、「体重1kgあたり、アルコールの量0.1g」といわれています。
例えば、体重60kgの人が缶ビールロング缶(500ml)を飲んだ場合、ビールのアルコール量は20gなので、約3時間かかるということです。
ほかにも、居酒屋で中ジョッキ(1杯320ml)を3杯飲んだとすると、38.4g、約6時間30分かかることが考えられます。
なお、アルコールの代謝速度は遺伝による代謝酵素の遺伝子のタイプ、飲酒習慣なども関係するため、目安の分解時間は紹介しましたが、個人差が大きいです。
加えて、睡眠中はアルコール分解の速度が半分になってしまうという研究結果もあります。
翌日に運転することがわかっていれば、飲む量も控えめに、飲み終わる時間にも注意が必要です。
また、アルコールチェッカーではお酒を飲んでいなくても、マウスウォッシュやノンアルコールビール、喫煙、歯磨きの後でも反応することがあります。
測定前には必ず水でうがいを行うようにしましょう。
会社で実施しなければならないことは、まず安全運転管理者の業務を必ず実施できるよう体制づくりを行うこと。そして、アルコールチェックを就業前後に実施できるよう仕組みをつくることです。
また、定期的な交通安全教育やアルコールに関する研修を実施するのも効果的です。
義務になってから、ではなく早めに準備を行い、アルコールチェッカーを使用した運転前の確認を習慣化していきましょう。
<参考>
・ 警察庁「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令等の施行に伴う安全運転管理者業務の拡充について(通達)」
・ 警察庁「安全運転管理者の業務の拡充」
・ 厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールの吸収と分解」