厚生労働省の広報事業「共育(トモイク)プロジェクト」は、2026年9月11日に、家事育児の最適な分担を対話を通じて見つけるためのツール「トモイクシートWeb版」を公開しました。
子育てと仕事を両立しながら無理なく働き続けるには、家庭内での協力が欠かせません。
トモイクシートは、夫婦やパートナーの対話を促し、「私たちにとっての最適な協力体制」をつくることを目的としています。
この記事では、トモイクシートの内容と活用方法を紹介したうえで、企業にも共通する「対話」の重要性について解説します。
トモイクプロジェクトとは
トモイクプロジェクトは、「職場も家庭も、脱ワンオペ」を掲げる厚生労働省の広報事業です。
父親と母親の双方が希望する働き方・暮らし方を実現できるよう、社会全体を巻き込んだ「共育て(ともそだて)」を推進しています。
トモイクシートは家庭に向けた施策ですが、プロジェクト全体としては、企業へのアプローチを主軸に、男性の育休取得の推進、女性の職場復帰の支援、夫婦間で偏りがちな家事・育児時間の是正など、社会全体への啓発活動を展開しています。
トモイクシート以外の主なコンテンツには、企業版両親学級、経営層・人事労務担当者・管理職向けの研修資料、トモイクに取り組む企業の好事例集があります。
このほか、パートナーと協力して育児をするための「共育て講座」や、育児休業のポイントを示した「パパから始めるトモイクアクション」など、企業に限らず包括的に共育てを支えるコンテンツが揃っています。
トモイクシートで「私たちにとっての最適な協力体制」をつくる
トモイクシートは、公式サイトで次のように説明されています。
「トモイクシート」は、大切な人との対話を通じて、それぞれの家事・育児の分担を見つけ、「私たちにとっての最適な協力体制」を形にしていくためのツールです。
出所:厚生労働省 共育(トモイク)プロジェクト「トモイクシート」
夫婦間で家事育児の負担を認識し調整することは、お互いが理想の働き方を描くための第一歩であり、トモイクシートは、対話を通じて双方に無理のない共働きの形を探るためのツールといえます。
ここからは、具体的な使い方を3つのステップで見ていきます。
ステップ1:目指す家庭像を共有する
最初のステップでは、お互いが目指す家庭像を共有します。
「私たちの家庭をより良くするためにはどうしたらよいか」を前提に対話し、仕事と家庭の両立という視点から、キャリア設計についても話し合います。
夫婦が改まって話す機会が、あまりない家庭も多いのではないでしょうか。
それでも、育児と仕事の両立を考えるうえでは、お互いに何を大切にしているのか、どこを目指しているのかの確認はとても大切です。
二人が「どんな家庭を築きたいのか」について対話することで、それぞれが考えている理想を「二人の共通認識」へと変えていきます。
しっかりと言語化して形に残しておくことで、これからのキャリア設計や暮らし方の指針になるでしょう。
どのように話を進めればよいのかわからない場合も、シートには対話のコツが紹介されています。
思い切って一度、ゆっくり話してみるとよいでしょう。
ステップ2:家事育児の負担を見える化する
次のステップでは、毎日の家事育児についてお互いの担当を整理します。
まず、それぞれが「自分が担当していると思う割合」を0〜100%で選択するのが最初の手順です。
あわせて「心の負担度」という項目があり、担当割合とは関係なく、心理的につらさを感じている家事が何かを共有します。
注目したいのは、担当割合があくまで「自分が思う割合」である点です。
本来であれば二人の合計は100%になるはずですが、お互いが「自分が80%やっている」と感じている可能性があります。
家事育児は目に見えないものも多く、相手にどれだけ負担がかかっているかは気づきにくいものです。
お互いの割合を並べてみることで、家事負担に対する認識のずれが明らかになります。
注意したいのは、このステップが相手の感じ方を具体的に知るためのものだという点です。
人には得手不得手があり、同じ作業でも負担に感じるかどうかは人によって大きく異なるため、相手の感じ方を否定せず、認め合いながらシートを埋めていくことが大切です。
ステップ3:最適な担当割合を決める
最後のステップでは、現状をもとに最適な担当割合を決めます。
ここでは、二人の担当割合の合計を100%にする必要がありますが、どちらか一方にだけ負担を強いないことが重要です。
負担の大きい家事については、頻度を下げる、外注するなどして、お互いが無理をしない形を探ります。
また、家事や育児のやり方には、誰にでもこだわりがあります。
洗濯や掃除のやり方、子どもの食事の食材や味付けなどがその例です。
分担したあとで、相手が自分のこだわりを理解していなかったために「やっぱり自分がやったほうが……」となってしまうケースも多いでしょう。
こうした細かなこだわりを言語化して記入しておけば、実際に役割を分担したときに起こる認識のずれを防げます。
何より大切なのは、無理をしないことです。
お互いにとって持続可能な分担を考えましょう。
企業との間にも「最適な協力体制」を
最適な協力体制は、人それぞれです。
事情も、得意なことも不得意なことも異なります。
そのなかで、対話を通じて自分たちにとって最適な役割分担を決めていく作業は、お互いを尊重しながら育児を進めるために、最も重要なことです。
この考え方はそのまま企業にも当てはまるのではないでしょうか。
私自身、子育てをしてわかったのは、子どもにはそれぞれ個性があり、育児に「唯一の正解」はないということです。
つまり、それは企業の共育て支援にも「唯一の正解」がないことを意味します。
もちろん、企業にはルールが必要であり、一人ひとりの事情を完全にくみ取ることは難しいでしょう。
それでも、トモイクプロジェクトが紹介する企業の好事例を見ると、各社が従業員一人ひとりと向き合い、それぞれの事情を理解しようとする施策に取り組んでいることがわかります。
具体的な企業の取り組み
・男性の育休取得のモニタリングと面談支援(KPMGコンサルティング株式会社)
・三者面談の導入(大王製紙株式会社)
・マイゴールデンウィーク制度(株式会社オンワードホールディングス)
KPMGコンサルティング株式会社と大王製紙株式会社の事例は、企業が面談を通じて従業員それぞれの事情をくみ取ろうとする取り組みです。
株式会社オンワードホールディングスのマイゴールデンウィーク制度は、年末年始やお盆とは別に10連休または5連休を年2回取得することを推奨するもので、導入によって従業員が自分の働き方を設計できるようになりました。
いずれも、それぞれの事情に合った働き方を企業が支援するという点で共通しています。
すべての人に紋切り型の対応をするだけでは、子育てと仕事の両立を実現することは難しいでしょう。
大切なのは、対話によってそれぞれの立場の理想や現状を言語化して共有することです。
家族も企業も、お互いが歩み寄りながら、「私たちにとっての」最適な協力体制を見つけていくことが、今後はますます求められるようになるでしょう。
<参考>
厚生労働省「(トモイク)プロジェクト」