2019年9月に「トラック運転者の長時間労働の改善に向けたポータルサイト」が開設されました。
ポータルサイトにはその後も、運送事業者と荷主双方に対して労働環境を改善するための施策のヒントをくれるコンテンツや、広く国民にもトラック運転者の仕事内容を知ってもらうためのコンテンツが追加されています。
今回はそれら新規コンテンツをわかりやすく紹介をします。
統計からみるトラック運転者の仕事
新たに加わったコンテンツ「統計からみるトラック運転者の仕事」では、トラック運転者という職業について、さまざまな項目で、他の業界や、全産業との統計上の数字をわかりやすくグラフ化して比較できるようにしています。
これを見れば「運送業界がどんな問題を抱えているのか」が直ぐにわかるようになっており、具体的には以下の問題点が浮き彫りになっています。
① 慢性的なドライバーの不足
② ドライバーの高年齢化
③ 非常に低い女性比率
④ 低賃金と長時間労働
⑤ 宅配便取扱個数の急増と大量の再配達
長時間労働問題改善のヒント
ポータルサイトが開設されてから「簡単自己診断」というコンテンツにおいて、荷主と運送事業者の双方に、「運転時間」、「荷扱い時間」、「待ち時間」という各々の項目への質問に答えてもらい、その統計データを定期的に発表していましたが、今般、新たに、「始めてみよう改善活動」というコンテンツが追加されました。
ここでは集めた統計データを分析し、自己診断の質問項目ごとに、荷主と運送事業者の双方に改善策が提示されます。
荷主と運送事業者がお互いに協力して、集荷や積み込み時の無駄な作業や待ち時間を減らしたり、ドライバーへの過度な負担を減らすために中継地点を設けることの提案など、数多くの具体策が示されますので、現状の問題を把握するのに役立つとともに、労働時間を少しでも減らして、長時間労働問題を解決するためのアクションを起こすヒント、きっかけにもなるでしょう。
国民一人ひとりの協力も重要
新型コロナウィルスの感染拡大によって消費行動の変化がさらに加速し、お店に行かず、ネットで商品を購入する、eコマースが急増しており、その結果、前述したように宅配便の利用件数も同様に急増している状況で、これがドライバーの長時間労働にもつながっています。
そこでポータルサイトでは、個人向けに、「トラック運転者の労働時間削減に向けてあなたにできること、やって欲しいこと」として、「再配達の削減」、「まとめ買いによる配達回数の削減」、「繁忙期を避けた引越」、「貨物車両用スペースへの駐車禁止」などを呼び掛けています。
国民に業界の実情を理解してもらって、これらのすぐに実践できることを行ってもらうことが、実はドライバーの過酷な労働環境を改善する一番有効な方法なのかも知れません。
ご承知のように2018年6月、働き方改革関連法が成立し、2019年4月から改正労働基準 法が全産業を対象に施行されることとなり、トラックドライバーについても2024年4月から罰則付きの時間外労働の上限規制が導入されるため、トラック運送業界は早急に効果的な長時間労働是正の取り組みを推進しなければなりません。
荷主と運送事業者の二人三脚での協力と共に、国民、消費者一人ひとりの協力が不可欠ですので、業界としても、より強いメッセージを発信していく必要があるでしょう。