まだまだ新規雇用に慎重な企業が多い?「多様な人材の活躍に関する調査」の結果解説

まだまだ新規雇用に慎重な企業が多い?「多様な人材の活躍に関する調査」の結果解説

新型コロナ流行の影響で新規雇用に慎重な企業が多い

2021年9月30日、日本商工会議所と東京商工会議所が、今年7月から8月にかけて中小企業約6,000社に対して実施した「多様な人材の活躍に関する調査」の結果が公表されました。
今回は、その調査結果のポイントをまとめていきます。

まず、人手不足の状況に関する調査結果ですが、「人手が不足している」と回答した企業の割合は49.9%となり、1年前の調査より13.5ポイント、半年前の調査より5.5ポイント上昇しました。
人手不足に戻りつつあるものの、新型コロナウィルス蔓延前の2019年に実施されたときの66.4%には、遠く及ばない状況です。
世界中でワクチン接種が進み、景気回復期待が膨らむ中でも、未だ新規雇用に慎重な企業が多いことが結果から窺い知ることができます。
日本では、調査期間中にコロナ陽性者数が増加基調あったことも影響しているかも知れません。

業種別では、「建設業」「運輸業」「介護・看護業」の3業種で、60%以上の企業が「人手が不足している」と回答し、他業種より突出している状況で、企業規模別では、従業員数の多い企業ほど、人手不足感が強いという結果となっています。

女性の活躍推進について

「女性の活躍推進について」の質問に関しては、1年前に実施された調査と、ほぼ同じ結果で「女性の活躍を推進している」と回答した企業が8割を超えて、80.5%となる一方、そのうちの半数以上の企業が「課題がある」と回答している状況です。

特に課題のとして挙がっているのは、
・ 女性社員が現状以上に活躍したいと思っていない(49.1%)
・ ロールモデルとなる女性社員が少ない(42.2%)
・ 家事・育児の負担が女性に集中(40.3%)
などです。

このセクションでは、改正女性活躍推進法の認知度についても調査していますが、「名称・内容ともに知っている」と回答した企業の割合は21.7%で、1年前の調査に比べて、僅か2.2ポイントしか改善していません。
各企業の認知度向上の努力だけでなく、行政サイドでも、しっかりと周知していく必要があるでしょう。

外国人の受入れと障害者雇用について

昨年の調査に比べて、「外国人を既に受け入れている」という企業は微増、一方「今後受け入れる予定あり・受入れ検討中」の企業は減少と、マチマチの結果となっており、ここでも「コロナ後」に強気になれない企業が多いことがうかがえます。
業種別でみると、コロナ後のインバウンド需要復活を期待する「宿泊・飲食業」や、慢性的に人手不足の状況である「介護・看護業」では、「外国人材を今後受け入れる予定・検討中」とする企業の割合が3割を超えており、業種間の採用方針の差が顕著になっています。

また、今回の調査では今年6月1日時点での、「障害者の雇用状況」について調査しておりまして、法定雇用義務のある企業でも基準を満たしていない企業が半数以上あることがわかりました。

人材確保は企業の最優先事項

少子高齢化が進む日本では、定年延長などの人材確保策も打ち出されてはいますが、それだけでは不十分でしょう。
今後、新型コロナウィルスの治療薬の開発などが進み、世界経済が本格的に回り始めれば、人出不足が深刻化する時期も早まることが予想されます。

そんな中、企業にとっては、女性や外国人、そして障害者を含めて、多様な人材を有効に活用できる体制を取れるか否かで、企業の成長力に大きな差が出てくることは間違いないところです。
この調査結果の今後の推移は、日本企業の人材確保戦略を見ていくうえで意義が深いと言えるでしょう。

<参考>
・ 日本商工会議所「『多様な人材の活躍に関する調査』の集計結果について ~『人手が不足している』と回答した企業は49.9%と前年調査から13.5ポイント増加、多様な人材の活用に期待強まる~」

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浅田 徹也株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

30年近く、銀行員として為替変動による企業のリスクを如何にヘッジするかのアドバイスをしてきました。
現在は、企業の健康経営をサポートさせていただいています。人事・労務面でのさまざまなリスクを軽減し、中長期的な成長に貢献することができる今の仕事に非常にやりがいを感じております。

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