2020年1月に国内で初めてのコロナウィルス感染症(以下「コロナ」といいます)事例が確認されてから、もうすぐ3年が経過しようとしています。
それに伴い、「3密」回避をはじめ、日常生活の過ごし方が変化しました。
コロナは、これまで次々と新たな変異株の流行が確認され、その変異株ごとに感染力や症状の現れかた、重症化率などに違いがありました。
デルタ株に続き流行したオミクロン株は、比較的重症化率が低い傾向がみられたことから、コロナに対する危機感が急激に軽減した方もいるのではないでしょうか?
最近は人の密集する都心部などでも、屋内や電車の中でマスクをせずに過ごす人や、飲み会を開く人を度々見かけるようになりましたが、そこで心配になるのが、コロナ感染者数の再増加と季節性インフルエンザ(以下「インフルエンザ」といいます)の流行が同時に起こることです。
この記事では、コロナやインフルエンザに対する危機感をあまり抱いていない人、危機感はあるけど漠然としていて、何をしたらいいのかよくわからない人にも、これからの季節にどのようなことに注意したらよいのかを詳しくご説明します。
コロナとインフルエンザはどっちが怖い?
2021年の1年間は、全国で約150万人のコロナ感染者が確認されました。
それに対し、インフルエンザの患者報告数は1,071件(定点把握)でした。
インフルエンザの患者報告数は、コロナ禍に入った2020年から激減しており、2021年は、2019年や2018年の約1/1,800にまで減っています。
これらのコロナとインフルエンザの感染状況を比較すると、同じ対策をとっていても、感染の広がりに違いがあることがわかります。
京都府立医科大学の研究(※1)によると、ウイルスが皮膚に付着した場合、インフルエンザは1.8時間程度で不活化されたのに対し、コロナは9時間程度生存し続けたという結果がみられました。
また、コロナとインフルエンザでは、重症化率にも違いがあります。
表1
重症化率 | ||
60歳未満 | 60歳以上 | |
新型コロナ・オミクロン株流行期 | 0.03% | 2.49% |
新型コロナ・デルタ株流行期 | 0.56% | 5.00% |
季節性インフルエンザ | 0.03% | 0.79% |
これらの情報を見て、インフルエンザは怖くないと思いますか?
インフルエンザもコロナ同様に複数種類があり、同シーズンに2度インフルエンザにかかることや、重症化することもあります。
特に、インフルエンザによる脳症を発症すると、発症した10人に1人は死に至るともいわれており、決して甘く見てはいけない感染症の一つでしょう。
ワクチンは?一人ひとりが見直す感染予防対策
コロナとインフルエンザは、ともに呼吸器疾患であり、感染予防対策はほとんど変わりません。
3密の回避、マスクの着用、手指衛生の保持などを行いましょう。
また、コロナとインフルエンザのワクチン同時接種に関しては、以下のように明記されています。
新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンとの同時接種は可能です。ただし、インフルエンザワクチン以外のワクチンは、新型コロナワクチンと同時に接種できません。互いに、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます。
出所:厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」
日本感染症学会からもインフルエンザワクチンの積極的接種が推奨されており、今冬のインフルエンザワクチンは、記録が残る中で最大の供給量が見込まれています。
医師と相談のうえ、コロナワクチンを打つついでにインフルエンザワクチンを打っても良いかもしれませんね。
職場での感染予防対策をチェック
感染予防対策は個人のみで行うより、職場として実施することが重要です。
ここでは、労働衛生の3管理(「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」)のうち、「作業環境管理」に着目してみましょう。
個人が行う感染予防対策に取り組みやすい環境があるかどうか、職場を見渡してチェックしてみてください。
◆ 手指用のアルコール消毒薬は、社員が使いやすいところに設置されていますか?
◆ 換気はしっかりされていますか?
◆ 屋内で会話をする際、お互いにマスクを着用していますか?
すべて問題なく取り組めている職場であっても、感染リスクはゼロにはなりませんが、どれも取り組めていない職場はすぐに取り組むことをお勧めします。
また、冬は室内の湿度を保つことも重要です。
地域にもよりますが、東京であれば外気の湿度は10%前後まで下がります。
コロナもインフルエンザも、空気が乾燥することで感染の可能性は高まります。
職場内の湿度は40%~60%を維持できるよう、必要に応じで加湿器を使用しましょう。
湿度に関しては、労働安全衛生法に基づく「事務所衛生基準規則」第5条にも記載されています。
テレワークを解除し、職場で社員が集まり仕事をすることのメリットは多々ある反面、職場内で感染症が広がることで企業として生産性が低下する事態は避けたいものです。
いつコロナ第8波が押し寄せてくるか分からないなか、インフルエンザと同時流行も危険視されている状況ですので、その脅威に立ち向かえるよう対策していきましょう。
<出所元>
※1 廣瀬 亮平、池谷博、内藤裕二、伊藤義人、中屋隆明「Survival of SARS-CoV-2 and influenza virus on the human skin: Importance of hand hygiene in COVID-19」(「Clinical Infectious Diseases」Volume 73、Issue11、1 December 2021)
表1 厚生労働省「第90回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」(令和4年7月13日)資料6より引用のうえ一部改変
<参考>
・ 厚生労働省「インフルエンザの発生状況」
・ 厚生労働省「季節性インフルエンザの患者報告数(感染症発生動向調査(定点報告))」
・ 厚生労働省「令和4年度 今冬のインフルエンザ総合対策について」