働きすぎを見直しませんか?~過労死等防止啓発月間~

厚生労働省では、11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死等をなくすためにシンポジウムやキャンペーンなどの取り組みを行っています。
その一環として「過重労働解消キャンペーン」を実施し長時間労働の削減等の過重労働解消に向け、集中的な周知・啓発等に取り組むこととされています。

「過労死等」とは?

・ 業務における過重な負荷による脳血管疾患または心臓疾患を原因とする死亡
・ 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
・ 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害

今回は過労死等の実態と対策をわかりやすく解説します。

過労死等の現状

長時間労働の実態

長時間労働が健康に与える影響は強く、脳や心臓疾患の発症や、心理的負荷による精神障害に影響を及ぼすといわれており、長時間労働により過労死等へつながり労災と認められるケースが年々増加しています。
総務省「労働力調査」 で月末1週間の就業時間別の雇用者の割合の推移をみると、1週間の就業時間が60時間以上である雇用者の割合は、近年減少傾向であるものの、2022年は5.1%と前年より 0.1 ポイント増加していました。
また、月末1週間の就業時間が60時間以上である雇用者数は2022年は298万人と前年より約8万人増加しており、今なお長時間労働の実態がみられるのが現状です。

過労死ラインと労災認定の現状

厚生労働省では、長時間労働により過労死等を発症した労働者に対して下記の通り労災認定基準を設けています。
いわゆる過労死ラインと呼ばれ、業務と発症の関連性が強いと判断される残業時間の指標です。

(1) 1カ月間に100時間または2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働業務
(2) 上記の水準には至らないがこれに近い時間外労働+一定の労働時間以外の負荷要因

(2)は、残業時間が(1)を満たさなくても「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮され、業務と発症との関係が強いと判断されれば労災認定されることになります。
それでは、実際に過労死等としてどのくらいの件数が労災認定されているのでしょうか。
脳血管疾患または虚血性心疾患等を発症したとする労災支給決定(認定)件数は、近年は減少傾向にあったところ、2022年度は194件で、2021年度より22件の増加となっています。

また、精神障害の労災補償状況業務における強い心理的負荷による精神障害を発病したとする労災支給決定(認定)件数は、2021年度に600件を超え、2022年度は710件、2021年度より81件の増加となっています。
上記の結果より、業務上での負荷により、うつ病などの精神障害を発病する人が近年かなり増加していることがわかります。
事業主としてはメンタルヘルス対策が今後重要になってきますし、労働者は自らの健康管理・働き方の見直しが必要なのではないでしょうか。

ご存じですか?働き方を見直すきっかけとなる情報サイト

過重労働による健康障害防止において、事業主や労働者にできることは何があるのでしょうか。
長時間労働や過労死等削減に向けての取り組み方について参考になるサイトや制度をご紹介します。

過重労働解消セミナー

事業主、企業の人事労務担当者、管理職の方向けに「過重労働解消セミナー」が実施されています。
過重労働防止に関連する基本ルールや裁判例の解説、企業の事例紹介など、「実務的に使える知識やノウハウ」 が無料で提供されているので、ぜひ活用してみてください。

参考:厚生労働省「過重労働解消のためのセミナー及び過重労働解消キャンペーンに関する広報事業」

勤務間インターバル制度

勤務間インターバル制度とは、終業時刻から次の始業時刻の間に、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を設けることで、従業員の生活時間や睡眠時間を確保しようとするものです。
たとえば、定時が8時~17時の企業で11時間の間隔を設けるとしたとします。
この場合、23時まで残業した翌日は10時出社となります。
「労働時間等設定改善法」(労働時間等の改善に関する特別措置法)が改正され、2019年4月1日より勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務となっていますが、まだこの制度を知らない方も多いと思います。
自社で制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

参考:厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」

メンタルヘルスケア

1. ストレスチェックの実施

仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は8割を超えています。
心の健康を保つために、事業主がストレスチェックを実施し、労働者に自身のストレス状況に気づきセルフケアに努めてもらうことも大切です。

参考:厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」

2. こころの耳

「こころの耳」は「働く方」「ご家族の方」「事業者の方」「部下を持つ方」「支援する方」の5つに情報を分類し、メンタルヘルスケアに関するさまざまな情報や相談窓口を提供している、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトです。
さまざまな事例も紹介されていて、事業主だけでなく働く人にとって参考になる情報が掲載されています。

参考:厚生労働省「こころの耳」

3. 確かめよう労働条件

「確かめよう労働条件」には、労働基準関係法令の紹介や、事案に応じた相談先の紹介を行うなど、労働条件の悩みの解消や、労務管理の改善について、働いている方と事業者・労務管理担当の方、それぞれの視点で役立つ情報が掲載されています。

参考:厚生労働省「確かめよう労働条件」

まとめ

「過労死」「長時間労働」といったキーワードは耳にする機会は多いものの、自分は関係ないと思っている方も多いのではないでしょうか。残業することに慣れ、「このぐらいの残業時間なら自分は大丈夫」と思い込んでいませんか?また、元気そうに見えても突然体調に現れ、働けなくなる人もいます。様々な事情があるとは思いますが、ご自身や自社で働く人の健康に目を向けて、今回ご紹介したサイトを少し覗いて参考にしてみてください。

また、ドクタートラストでもストレスチェック、外部相談窓口や職場環境改善のセミナー等を実施しています。ぜひお気軽にご相談ください。

<参考>

・ 厚生労働省「令和5年版過労死等防止対策白書」
・ 厚生労働省「11月は「過労死等防止啓発月間です」」
・ 厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました」
・ 厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」
・ 厚生労働省「過重労働解消キャンペーン」

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小林 ちさき株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

前職は不動産業界に勤務しておりました。同僚や先輩、友達で心の病など体調不良になる人を多く見てきました。また自身がコロナの後遺症で苦しい思いをした経験もあり、健康や労働環境の改善に興味を持ちました。職場で健康に働けるよう、また健康面で不安に思う方のために少しでも力になれたらと思います。

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