厚生労働省は2025年2月1日～2月28日までの1カ月間に「化学物質管理強調月間」を初めて実施します。
職場で使用される化学物質は数万種類に上りますが、その中には危険性や有害性が不明なものが約2,900種類も含まれています。
これらの危険物質から従業員を守るため、労働安全衛生法に基づく新しい規制が2024年4月から施行されています。

「化学物質管理強調月間」実施の目的

今回実施される「化学物質管理強調月間」は、職場における危険・有害な化学物質の管理の重要性を広く認識してもらうとともに、これらの管理活動を徹底することを目的としています。
今後、「化学物質管理強調月間」は毎年2月に実施される予定です。

「化学物質管理強調月間」の概要

（1）実施体制

まず「化学物質管理強調月間」は以下のような体制で実施されます。

・　主唱者：厚生労働省、中央労働災害防止協会
・　協力連携者：経済産業省、環境省
・　協賛者：建設業労働災害防止協会、陸上貨物運送事業労働災害防止協会、港湾貨物運送事業労働災害防止協会、林業・木材製造業労働災害防止協会
・　協力者：関係行政機関、地方公共団体、安全衛生関係団体、労働団体、事業者団体
・　実施者：各事業者

（2）主唱者、協力連携者、協賛者の実施事項

上記体制のうち、主催者、協力連携者、協賛者は以下を行います。

① 化学物質管理に関する啓発
② 化学物質に関する説明会などの開催
③ 「化学物質と環境に関する政策対話」などの実施による情報共有、および意思疎通
④ 化学物質アドバイザーなどを活用した普及啓発
⑤ 化学物質管理に関する広報資料などの作成、配布
⑥ 雑誌などを通じた広報
⑦ 事業者の実施事項についての指導援助
⑧ その他「化学物質管理強調月間」にふさわしい行事などの実施
⑨ ①～⑧の事項を実施するため、協力者に対し、支援、協力の依頼

（3）実施者の実施事項

さらに実施者（各事業者）は以下を行います。

①　製造、または取り扱っている化学物質の把握、化学物質の安全データシート（以下「SDS」）などによる危険有害性などの確認
②　特定化学物質障害予防規則などの特別規則、石綿障害予防規則の遵守の徹底
③　ラベル表示・SDS交付、リスクアセスメントの実施など
a：製造者・流通業者が化学物質を含む製剤などを出荷する際のラベル表示・ SDS交付などの徹底、およびユーザーが購入した際のラベル表示・SDS交付などの状況の確認
b：SDSなどにより把握した危険有害性に基づくリスクアセスメントの実施とその結果に基づくばく露濃度の低減や適切な保護具の使用などのリスク低減対策の実施
c：ラベル・SDSの内容やリスクアセスメントの結果に関する労働者に対する教育の実施
d：危険有害性などが判明していない化学物質を安易に用いないこと、また、危険有害性などが不明であることは当該化学物質が安全、または無害であることを意味するものではないことを踏まえた取扱物質の選定、ばく露低減措置、および労働者に対する教育の推進
e：皮膚接触や眼への飛散による薬傷などや皮膚からの吸収などを防ぐための適切な保護具の使用や、汚染時の洗浄を含む、化学物質の取扱上の注意事項の確認
f：特殊健康診断などによる健康管理の徹底
g：塗料の剥離作業における健康障害防止対策の徹底
h：金属アーク溶接など作業における健康障害防止対策の徹底
④　化学物質管理者の選任状況の確認
⑤　日常の化学物質管理の総点検
⑥　事業者、または化学物質管理者による職場巡視
⑦　スローガンなどの掲示
※スローガンは、必要に応じて以下より選択
・　正しく理解 正しく管理 化学物質と向き合おう
・　危険知り 管理を徹底化学物質 みんなで守れ安心職場
・　目に見えないからこそ実施しよう 化学物質のリスクアセスメント
・　化学物質に潜む危険 知って対策 慣れた作業も総点検
⑧　有害物の漏えい事故、酸素欠乏症などによる事故など緊急時の災害を想定した実地訓練などの実施
⑨　化学物質管理に関する講習会・見学会などの開催、作文・写真・標語などの掲示、その他化学物質管理への意識高揚のための行事などの実施

さいごに

日本国内で使用される数万種類の化学物質の中には、危険性や有害性が不明なものが多く存在します。
これに伴い、特別規則で規制されていない物質による労働災害も多数発生しています。
これらを防ぐため、厚生労働省は労働安全衛生法に基づく新しい化学物質規制を導入し、リスクアセスメントやばく露防止措置の実施を事業者に求める制度を導入しました。
「化学物質管理強調月間」はこういった新たな化学物質規制を浸透させるため実施されることとなります。

＜参照＞
・　厚生労働省「『化学物質管理強調月間』（2月）を初めて実施します」