その疲れ、「カルチャーショック期」かも?!

新年度が始まってから約3か月が過ぎ、人事異動や新入社員の入社に伴う環境変化も少し落ち着いてきた頃かもしれません。
落ち着いてきたからこそ周りを見渡す余裕ができて、会社や周囲の人間関係に「これってどうなの?変じゃない?」「この人といるとなんだか居心地が悪いな」とネガティブに感じたり幻滅したりすることも増えてくるかもしれません。
この時期のことを、異文化交流を研究した社会学者リスガードは、カルチャーショック期と呼びました。
リスガードは新たな文化や新しい環境に適応するプロセスには、ハネムーン期、カルチャーショック期、適応期、成熟期の4つの段階があると提唱しています。
4月が新年度である日本は、5~6月頃がカルチャーショック期に当てはまります。この時期は、疲れやストレス、不満や怒りが出てくる時期とされており、自分が身を置く環境に対してネガティブな考えが強まりやすくなります。
また、食欲不振や頭痛などの身体症状のほか、遅刻やミスの増加などの行動面にも影響が出ることがあります。

リスガードの適応曲線

ハネムーン期(1カ月目):新しい環境への期待をに抱き、新鮮さや興奮を感じ積極的に活動する時期
カルチャーショック期(2~3カ月目):期待と現実のギャップからストレスが生じ、戸惑いや不安を感じる時期
適応期(4~6カ月目):新しい環境に対する理解が深まり、精神的にも落ち着きを取り戻す時期
成熟期(7か月目以降):新しい環境に完全に適応し、安定した生活を送ることができるようになる時期

※時期や期間はあくまで目安で、個人差があります

メンタル相談をする時のコツ

カルチャーショック期に陥ったとき、身近に話せる人がいてそれによってストレスが軽減できていれば問題ありませんが、職場の人や家族や友人には話しにくいという場合もあるかと思います。
また、誰かに話したいけれど、メンタルの相談はハードルが高いと感じる人も多いのではないでしょうか。
「なんだかモヤモヤするけど、何をどう話せばいいのか分からない」「何を聞かれるのか分からなくて不安」「こんなこと相談していいのだろうか」と思ってためらっている方に、初めてメンタル相談をする時のコツをご紹介しようと思います。

①思いつくことをざっくり書き出してみる

例えば「最近モヤモヤする……」という場合、そのモヤモヤを言葉にしていきなり人に話すのは案外難しいものです。
そこで、紙でもスマホでもかまわないので、思いつくことを書き出してみてください。

次のようなことを振り返ってみると書きやすいかと思います。

・ 身体の調子や、疲れ・眠気の具合
・ 誰と話したか・誰のSNSを見たか
・ 心に引っかかっている言葉
・ 何となく気になったニュース
・ 最近よく思い出すできごと

日記のように文章にしなくても、箇条書きや単語だけで十分です。
さらに、できそうであれば、書き出したことについてどう思ったのか正直に書いてみましょう。
これで下準備はおおむね完成です。

②正直に話す

気心知れた家族や友人ではない相手に話すことは、緊張や不安が付きまとうかもしれません。
しかし、第三者の相手だからこそ損得勘定を抜きに話せることがあります。
また、相談によって自分の中にある本当の気持ちがはっきりしたり、それを自分自身で認めることで自己肯定感や安心感につながったりする場合もあります。
もしうまく話せる自信がないなら「うまく伝えられるか分からない」「いろんな考えが浮かんでまとまらない」「自分でもどうしたいのか分からない」など、思っていることを正直に話してみてください。
カウンセラー側は、それらの気持ちを受け取ったうえで、色々な質問をしたり、話しをまとめたりしながら、一緒に状況や気持ちの整理をしていきます。
短期間で解決できることもあれば、すぐにはどうにもできないこともありますが、話しているうちに「自分は○○ということを求めていたのかも」「こういうことをしてみようかな」といったヒントが見えてくるケースもよくあります。

メンタル相談には、一般的にイメージする対面型の他に、電話、WEB、メール、SNSなどさまざまな方法も増えています。
ご自身の相談しやすい方法を活用して、カルチャーショック期を乗り越えてみてくださいね。

<参考>
・厚生労働省「まもろうよ こころ」

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市川 さくら株式会社ドクタートラスト 公認心理師

投稿者プロフィール

心理学科を卒業後は一般企業で勤務し、その後臨床心理士と公認心理師の資格を取得しました。心理職として市の精神保健福祉センターで勤務した後に総合病院の精神科で約6年勤務し、心理カウンセリングを通してさまざまな方のお話をうかがってきました。その経験の中で、健康で長く働き続けるためにはメンタルに不調を感じたらできるだけ早く対処することや予防的な観点の大切さにも気付き、産業保健の領域で働きたいという思いが強まりました。できるだけ多くの人がこころの健康を保ち、自分なりの生き方を目指せるよう努めていきます。
【保有資格】公認心理師、臨床心理士
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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