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3月は多くの人にとって「変化」に巻き込まれる月です。
会社では昇進・降格・転勤・チーム再編成などに伴う大きな異動辞令が告示されたり、新入社員の受け入れ準備などもあり、職場の雰囲気がソワソワする時期ではないでしょうか。
自分に直接影響する場合もあれば、家族や同僚、あるいは取引先の会社が変化することによって間接的な影響を受けることもあります。
さらに社会全体でも「新生活応援!」や「新年度に向けて」といった前向きな言葉に包まれ、何となくポジティブな雰囲気が漂い始めます。
一方、そんな雰囲気に内心戸惑う人も多く、「自分だけ取り残されている気がする」とか「これからどんな仕事・生活になってしまうのか」とか「どうしてこんなことになってしまったのか」といった不安を感じやすい時期でもあります。
また、「この雰囲気の中でネガティブなことは言いにくい」という気持ちにもなりやすいため、漠然とした不安を一人で抱えたまま過ごす人も多いようです。
実際、3月と4月は1年の中でも自殺者数が多い月でもあり、厚生労働省の自殺対策強化月間にも指定されているのです。
3月になると誰であっても大なり小なり何らかの変化の余波が届き、時間的にも気持ち的にも余裕がなくなってしまいがちです。
そのため、(繁忙期の方もいるとは思いますが)年始の慌ただしさが落ち着いて比較的余裕のある2月のうちに対処法を考えておくことが大切になります。
そこで、今回はいくつかおすすめのセルフケアをご紹介します。
自分の中に生じた感情を否定しない練習をしよう~コツは「と思った」~
たった1日でも私たちの心の中には実にさまざまな感情が生じています。
特に、不安・怒り・恥・悲しみといったネガティブな感情はインパクトが強いので不快になりやすく「どうして自分はいつもこうなってしまうんだろう」と自己嫌悪に陥ったり、「周りの人にダメ人間に思われたに違いない」と疑心暗鬼になってしまい、どんどん苦しくなってしまいます。
そんな感情にいちいち振り回されないようにするために、「こんなことを思うのは良くない」とつい自分の感情を否定したり無視して押し込めてしまうことも多いですが、気付いたら嫌な感情だけ濃縮されて心の中に溜まっていた、ということになりがちです。
そこで、自分の感情を自分で認めてあげるという作業を行うことで、嫌な感情を持った自分を否定せず、不快な感情から少し距離をとって眺めることができるようになります。
コツは、語尾に「と思った」を付けることです。
(例)
・ 同期がキャリアアップしていて、なんか悔しい「と思った」
・ 去年立てた目標が全然達成できてなくて自分が嫌になる「と思った」
・ みんなの前でプライベートなことを話しすぎちゃって恥ずかしい「と思った」
このように、正直な思いを否定も評価もせず、自分の感情を客観的に眺めることで、徐々に冷静に考えられるようになっていきます。
モヤモヤな気持ちでいっぱいなときは、まずは行動してみよう
不快な感情で溢れてしまってどうしようもない時もあるかもしれません。そんな時は、「とにかく体を動かして何か行動してみる」こともおすすめです。
5~10分でも良いので、まったく別のことに集中してみてください。
(例)
・ いつもと違う道を歩いて、お店や風景などを観察する
・ 5分間だけ部分的な掃除に集中する(排水溝や窓ふきなど)
・ トイレに行ったついでに体をグーッと伸ばしたり、肩を上げ下げすることに集中する
・ できたらいいな(やってみたい)リストを書き出してみる
感情と行動は連動しているので、感情がどうにもならないときには先に行動を変えてみると心に余裕が生まれてくると言われているので、ぜひ試してみてください。
余裕がなくなったときにできることを考えておく
今回は、慌ただしい年度末に向けてのセルフケアをご紹介しました。
「余裕がなくなってきたときに何ができそうか?」を事前に何個か考えておくといざというときに取り組みやすくなります。
もし気持ちの落ち込みが続くときには、専門家に話しを聞いてもらうことも検討してみてください。
<参考>
・ 福井至、貝谷久宣監修『今日から使える認知行動療法』(ナツメ社)
・ 厚生労働省「3月は『自殺対策強化月間』です」
・ 厚生労働省「自殺の統計」
・ 厚生労働省「『こころの耳』相談窓口案内」