「朝はギリギリまで寝ていたい」「朝から作るのが面倒」「ダイエットのために朝ごはんは抜こう」などの理由で朝ごはんを食べないという人もいるかと思います。
朝は仕事へ行くまでに準備や家事、子どもの世話などに追われています。そんな限られた短い時間の中で、朝ごはんを充実させることは、思った以上に難易度が高いですよね。
しかし、朝ごはんはお腹を満たすためだけではなく、とても重要な役割を持っています。今回は1日でもっとも重要な食事である朝ごはんについて解説します。
朝ごはんはなぜ大切?
多くの研究で3食しっかり食べることが望ましいという結果が出ていますが、16時間ダイエットで1日2食の方や個人的に朝ごはんを食べない習慣になっている方も存在します。
3食絶対に食べないといけないという決まりはもちろんなく、ライフスタイルも個人差があるため、朝ごはんはとらないと決めている方もいます(未成年は発達や発育の過程で非常に重要なので、欠食はオススメしません)。
食生活に関してさまざまな考え方がありますが、それでも朝ごはんが重要な理由は以下になります。
脳や身体を活発にする
私たちは寝ている間も絶えずエネルギーを使っています。
そのため、起床後朝ごはんをしっかり食べないと集中力や記憶力が低下したり、イライラしたりすることがあります。
これは脳のエネルギーが不足していることが原因とされています。脳はブドウ糖がないと働くことができません。このブドウ糖は体内にたくさん貯蔵することができない性質があるため、朝から活動的になるためには朝ごはんが欠かせません。
体内のリズムを一定にする
私たちの身体には体内時計と呼ばれるシステムがあり、さまざまな生体リズムを調整しています。
体内時計の周期はおよそ24.5時間であり、1日24時間より少し長いため、毎日リセットする必要があります。
体内時計には主に2種類存在します。
・ 中枢時計
脳の中心部にある視床下部という場所に存在します。脳と抹消時計をあわせる働きがあり、朝の太陽の光でリセットできます。
・ 抹消時計
臓器や筋肉などに存在しています。ホルモン分泌にも関与しており、朝ごはんでリセットできます。
これらの体内時計が乱れてしまうと自律神経やホルモン分泌などの乱れが生じ、睡眠障害や肥満、倦怠感などさまざまなデメリットが出現します。
便秘予防
朝ごはんを食べると胃腸が刺激され動き始めます。
排便リズムをつくるのも朝ごはんの役割です。朝食を抜くと便秘になる可能性が高くなります。
メンタルヘルス対策になる
ブドウ糖が不足した状態が続くと脳に疲労がたまり、うつになるといわれています。
また、人間はストレスを常に感じる状況下にいるとタンパク質の分解が促進されます。
タンパク質はドーパミン(喜びや快楽を感じさせる)やセロトニン(精神を安定させる)などの神経伝達物質全般の原料です。
そのため、消費されたたんぱく質を補わないとうつを発症しやすくなります。
保健師としてメンタルヘルス不調な方の面談することがありますが、実際に朝ごはんを食べていなかったり、食事量自体も減っていたりする方が多い印象です。
朝ごはんを抜くと病気のリスクがあがる?
朝ごはんをとらないと身体は体温を下げ、エネルギー消費を節約しようとします。
その結果、体脂肪が蓄積しやすくなり肥満傾向になります。それ以外にも下記のような重大な病気につながる可能性もあります。
動脈硬化
朝ごはんを抜く人は食べる人にくらべて、頸動脈で21%、腹部大動脈で17%動脈硬化が進行していると明らかになった研究があります。
糖尿病
朝ごはんを抜くと昼・夜の食事の際の血糖値が上昇しやすくなります。
夕食から翌日の昼食の間に空腹時間が長時間に及ぶと、膵臓のβ細胞にダメージを与えてしまいます。
その結果、血糖値を下げるのに時間がかかり、高血糖の状態が続きやすくなるといわれています。高血糖の状態が続くと、糖尿病を発症する可能性が高くなります。
脳血管疾患
朝ごはんの回数と発病の関連性を調べた研究があり、週に多くても2回程度しか食べないグループは、毎日食べるグループとくらべて脳卒中を起こすリスクが18%、脳出血のリスクは36%高いという結果が出たそうです。
この研究グループは、脳出血の大きい発症要因は高血圧で、特に早朝の血圧上昇が危険因子で朝ごはんを食べないと空腹によるストレスで血圧が上昇するため、欠食がリスクを高めているのではという見解をだしています。
今日から朝ごはんを食べよう!
朝ごはんが与える影響について理解できれば、次は実際に朝ごはんを食べる習慣をつけていきましょう。
今まで食べる習慣がなかった方がいきなりしっかりとることは難しいので、まずは席につき、何か口にすることを習慣化させ、徐々に朝ごはんを充実させていきましょう。
朝ごはんを食べない方の背景には、生活リズムの乱れがあることが多いので、まずは生活習慣を整えましょう。
・ 早く寝る習慣をつけて、朝食をとる時間を設ける
・ 夕食を食べ過ぎない
・ できるだけ夕食を早めにすませる
・ 深酒しない
また、夕食後10~12時間あけて朝ごはんを食べることが理想です。1日の中でもっとも長く何も口にしない時間の後に摂取する食事(朝ごはん)が体内時計をリセットしてくれます。
そして朝ごはんは炭水化物をとることがとても重要です。ブドウ糖を脳に供給するために、朝は炭水化物をとりましょう。
ステップ1:まずは1品とるようにしましょう
とにかく朝ごはんを食べることを習慣化させることが大切です。
食欲がないと感じる方は、飲み物だけでもとってみましょう。栄養価の高い牛乳や飲むヨーグルトを選択するのも良いです。
炭水化物をとった方が良いので、おにぎりやシリアル、カロリーバーなど手軽に食べられるものをとってみましょう。
ステップ2:2品に増やしてみましょう
慣れてきたら、次は朝ごはんに炭水化物とタンパク質をとるようにしましょう。
タンパク質をとると筋肉を維持しやすく、太りにくい身体をつくることができます。
おにぎりと味噌汁や白米と納豆、バナナとヨーグルト、シリアルと牛乳などを選択してみてはいかがでしょうか。
ステップ3:しっかり朝ごはんを用意してみましょう
主食+主菜+副菜と増やしていくと、朝ごはんが充実していきます。
白米に焼き魚、煮ものを用意する、トーストに卵、サラダなども良いです。前日のおかずを少し残して朝ごはんとして出すのも手軽に一品増やせます。
継続させるには、手間をかけない日をつくることもポイントです。
コンビニで朝ごはんを買ってみたり、喫茶店のモーニングセットを頼んでみたりして、朝ごはんを習慣化させましょう。
<参考>
・ 米国心臓病学会「Skipping Breakfast Associated with Hardening of the Arteries」
・ Daniela Jakubowicz、Julio Wainstein、Bo Ahren、Zohar Landau、Yosefa Bar-Dayan、Oren Froy「Fasting Until Noon Triggers Increased Postprandial Hyperglycemia and Impaired Insulin Response After Lunch and Dinner in Individuals With Type 2 Diabetes」(『Diabetes Care』2015年7月28日)
・ 国立研究開発法人国立がん研究センター「朝食の欠食と脳卒中との関連について」