酷暑日対策、できていますか?保健師が解説する職場の熱中症対策3つのポイント

夏の気温上昇に伴い、職場での熱中症リスクが高まっています。
2025年6月の労働安全衛生規則改正に加え、2026年4月には気温40度以上の日を「酷暑日」として新たに定めるなど、対策強化の動きが進んでいます。
企業には、これまで以上に具体的で効果のある取り組みが求められています。
本コラムでは、保健師の視点から、企業が取り組むべき熱中症対策について、法改正のポイントも踏まえながら分かりやすく解説します。

熱中症とは

熱中症とは、高温多湿の環境下で体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能がうまく働かなくなったりして、体温の上昇やめまいなど様々な症状が出現することをいいます。
運動や仕事などで身体を動かすと、体内で熱が産生されて、体温が上昇します。
汗をかくことによる「気化熱」や、心拍数の上昇や皮膚血管が拡張されることによって、身体の表面から空気中に熱を逃がす「熱放散」で体温を調節しています。この体温調節がうまくできなくなると、熱がこもってしまい、体温が上昇して、熱中症が引き起こされるという仕組みです。
2025年(5月から9月)の全国における熱中症による救急搬送者数は100,510名で、2008年の調査開始以降で最も多い搬送数となりました。
また、熱中症の発生場所別の救急搬送の人数を見ると、住居が最も多く、次いで道路、屋外でした。
さらに都道府県別では、1位東京都、2位大阪府、3位愛知県と、人口が多い大都市が中心となっています。

熱中症対策の3つのポイント

熱中症対策は大きく3つのポイントがあります。

1) 作業環境管理

① 休憩場所などの整備

・ 冷房を備えた休憩所の確保
・ 日陰などの涼しい休憩場所の確保
・ 身体を冷やすことのできるもの(ネッククーラーなど)や設備の設置

② WBGTの低減

WBGTとは、熱中症を予防することを目的として使用される指標のことで、湿度・日射・ふく射(赤外線で伝わる熱)など周辺の熱環境、気温の3つを取り入れた値のことをいいます。
このWBGTを低減させるには、以下の対策が有用です。

・ 発熱体と労働者の間に熱を遮ることのできる物等を設ける
・ 直射日光や、周囲の壁面および地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設ける
・ 適度な通風または冷房設備を設ける

2) 作業管理

① 作業時間の短縮など

・ 単独作業を控え、休憩時間を長めに設定する
・ 身体作業強度が高い作業を避ける
・ 作業場所を変更する
・ ミストシャワー等による散水設備の設置を検討する
・ 管理者は、作業中労働者の心拍数、体温及び尿の回数・色等の身体状況、水分及び塩分の摂取状況を頻繁に確認する

体調確認シートなども活用しましょう。

② 水分および塩分の摂取

水分と塩分は、少なくとも0.1〜0.2%の食塩水、またはナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンク・経口補水液などを、20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度摂取することが目安です。
作業強度によって必要量は異なりますので、状況に合わせて調整してください。
ペットボトルの裏側にある栄養成分表示にナトリウムの量または食塩量が記載してありますので、ぜひご確認ください。

3) 健康管理

健康診断結果に基づく対応ということで、熱中症のリスクが高い疾患を治療中の労働者に対しては、必要に応じて就業場所の変更や作業転換などの適切な処置が求められます。
糖尿病や高血圧、皮膚疾患、心疾患などが熱中症リスクの高い疾患に挙げられています。
これらの疾患を抱えている人は体温調節機能が働きにくかったり、汗をかきにくいため体を上手く冷やせなかったりといった理由で疾患のない方よりもリスクが高くなってしまいます。
企業のみで措置の判断を行うのは難しいかと思いますので、産業医や主治医といった専門家の意見聴取を行ったうえで措置を決定するのがよいでしょう。
また、当日の作業開始前には労働者の朝食の未摂取、睡眠不足、前日の多量の飲酒、体調不良等の健康状態を確認した上で、必要に応じて作業の配置換え等を行ってください。

おわりに

熱中症は誰にでも起こりうる身近な健康課題です。だからこそ、日々のちょっとした配慮や声かけ、職場環境の工夫が大きな予防につながります。従業員が安心して働ける環境づくりのために、企業と個人が協力しながら対策を進めていくことが大切です。本コラムが、その第一歩となれば幸いです。

<参考>
・ 総務省消防庁「令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」
・ 厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」
・ 一般財団法人日本気象協会「熱中症について学ぼう:熱中症ゼロへ」
・ 厚生労働省「熱中症に関する健康状態自己チェックシート(PDF)」

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楠原 綾香株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学時代から公衆衛生看護学に興味を持ち、保健師を志していました。大阪の病院で消化器外科・内科、回復期リハビリテーション病棟に勤務し、患者さまと関わっていくなかで、予防医学への関心も高まったことから、産業保健師として活動すべくドクタートラストへ入社。
看護以外に、新人教育や対面での学習会の開催もしてきました。これらの経験を活かし、保健師として情報を発信していきます。
【保有資格】看護師、保健師、第一種衛生管理者
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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