あなたの地域の水道水は大丈夫? PFAS(ピーファス)の健康リスクと対策

PFAS(ピーファス)は、近年注目されている環境・健康リスクの一つで、有機フッ素化合物の総称です。
OECD(経済協力開発機構)によると、4,730種類の存在が確認されています。
2024年にIARC(国際がん研究機関)がPFASの一種を「ヒトに対して発がん性がある」と結論づけたことを受け、メディアの報道が急増し、国民の関心が高まりました。

結論として、PFASは「ヒトに対する健康リスクは研究段階にあるものの、自身の健康や次世代への影響を避けるために、曝露を最小限に抑えるべき重大なリスク物質である」といえます。
いまだ証拠として不十分な点が多い一方で、予防原則に従って対策を講じるべき水準までエビデンスが蓄積されつつあるのが現状です。

この記事では、PFASに関する国内の現状と、欧州の公表内容に基づくPFASの健康リスクについて解説します。

PFASの正体と日本国内の現状

PFASは、水や油をはじく・熱に強い・薬品に強いといった極めて便利な性質を持ち、フライパンのコーティング、撥水スプレー、半導体の製造工程など、その用途は多岐にわたります。

しかし、自然界ではほぼ分解されず、体内に蓄積しやすいことから「永遠の化学物質(フォーエバー・ケミカル)」と呼ばれています。
水・土壌・空気・食品などに広く存在し、私たちがそれらを摂取したり吸い込んだりすることで体内に蓄積される可能性があります。
つまり、目に見えないところで私たちの生活を支えてきた反面、一度環境中に放出されると除去が極めて困難であり、次世代への影響が懸念される物質です。
代表的な物質として、PFOS(ピーフォス)、PFOA(ピーフォア)、PFHxS(ピーエフヘキシス)があり、これらは毒性への懸念から、国際的にその製造および輸入が原則禁止されています。

EFSA(欧州食品安全機関)によると、体内に取り込まれた量が半分に減るまでの期間は、PFOSで平均5.7年、PFOAで平均3.2年、PFHxSで平均11.4年と報告されています。

出所:イラストAC

 

2026年現在、日本国内では「調査の段階」から「法的規制と対策の段階」へと大きくシフトしています。
これまで暫定目標値(努力義務)とされていたPFOS・PFOAの基準(合算で50ng/L以下)が、2026年4月より水道法に基づく正式な水質基準に格上げされました。
これにより、すべての水道事業者に対し、定期的な検査と基準の遵守が法的に義務付けられています。
この1Lあたり50ng(ナノグラム)という基準値は、体重50kgの人が毎日2Lの水を一生涯飲み続けても健康への悪影響が生じないと考えられる水準として設定されています。

一方、2024年に米国環境保護庁(EPA)が定めたPFOS・PFOAの規制値はそれぞれ4ng/Lであり、「実質的な検出限界値」として国際社会に大きな衝撃を与えました。
日本と米国の基準値に差がある背景には、「科学的な不確かさをどう扱うか」という予防原則の適用度合いの違いが考えられます。
日本の食品安全委員会は「証拠の確実性(因果関係の証明)」を厳格に審査しており、評価において慎重な姿勢が目立ちます。
一方、米国の機関は「ヒトへの影響」を重視し、予防的に厳しい判定を下す傾向があります。
ただし、トランプ政権への移行に伴い環境規制の緩和が急速に進んでおり、今後、当該基準が撤廃または緩和される可能性も否定できません。

PFASの健康リスク

国際的に信頼されているNASEM(米国科学・工学・医学アカデミー)、EFSA(欧州食品安全機関)、IARC(国際がん研究機関)の評価において、確実性が高いとされている健康リスクは以下のとおりです。

健康リスク項目NASEM
米国, 2022
EFSA
欧州, 2020
IARC
国際, 2024
食品安全委員会
日本, 2024-2026
抗体反応の低下
ワクチン効果低下)
十分な証拠あり最も確実性が
高い
可能性は否定できない
脂質異常症
コレステロール上昇)
十分な証拠あり確実性が高い証拠は不十分
胎児の発育低下
(出生体重の
低下)
十分な証拠あり確実性が高い一定の証拠あり
(指標の一つに
採用)
発がん性
成人の腎臓
がん)
十分な証拠あり関連を指摘十分な証拠あり(PFOA)証拠は限定的

NASEM(米国科学・工学・医学アカデミー)は、2022年の大規模報告において上記4項目すべてを「十分な証拠がある(Sufficient evidence)」のカテゴリーに分類しています。

一方、日本の食品安全委員会が2024年6月に公表した評価書では、ヒトの疫学データについて「多くの研究で関連が示唆されているものの、因果関係を肯定するには証拠が不十分あるいは限定的」とする項目が大半を占めています。
また、2024年にIARC(国際がん研究機関)がPFOAの評価を最高ランクの「グループ1(ヒトに対して発がん性がある)」へ引き上げました。
特に腎細胞がんについては、ヒトの疫学調査においても「十分な証拠」があると結論づけています。

しかし、数千種類に及ぶPFASすべての影響や毒性レベルを調査することは困難であり、現在、大半の研究は一部の代表的なPFASのみを対象に進められています。
実際、PFOS・PFOA以外のPFASについては、評価を行うための十分な知見が得られていないなどの理由から、現時点では基準値が設定されていません。
さらに、農薬や食品添加物とは異なり、意図せず幅広い食品に含まれていることから、事前の試験が実施されないまま後追いで調査・研究が始められた経緯があり、データが不足しているのが現状です。
そのため、PFASにどの程度の量・期間にわたって曝露することで健康への影響が生じるかを追跡・評価することも難しく、特定にはさらに時間を要するとみられています。

私たちが取り組めること

労働現場と日常生活において、それぞれ取り組めることがあります。

労働現場で暴露の可能性がある方

国内では、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)により、PFOS・PFOA・PFHxSの3種はすでに製造・輸入等が原則禁止されています。
しかし、労働現場でその他のPFAS(またはその代替物質であるフッ素化合物)に暴露するリスクがある場合、対策は労働安全衛生の基本である「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」の3管理が必要不可欠です。

現場で働く本人が取り組める対策としては、体内への「侵入経路(呼吸、皮膚、口)」を完全に遮断することです。
保護具の「正しい」着用を徹底し、手袋などは定期的に新品と交換しましょう。
休憩前、食事前、退勤前には、入念な手洗い・うがい・洗顔をして手や顔に付着した微量な粉塵を完全に洗い流すことを意識しましょう。
また、換気を徹底し、装置の定期的な自主検査とメンテナンスを実施しましょう。
加えて、家族へPFASを二次暴露させるリスクを避けるため、作業着は職場での洗濯・管理が有効です。

日常生活で暴露の可能性がある方

2026年4月より水道法に基づく法的な水質基準(義務項目)に格上げされたため、お住まいの自治体の水道局を検索することで、自宅の水道水が飲み水として安全かどうか確認することができます。
特に妊活中や妊娠中の方は、欧州の「予防原則」に基づく知見を参考に、必要に応じて対策を講じることは十分に合理的であると考えられます。
もし、お住まいの自治体においてPFOS・PFOA(合算で50ng/L以下)の水質基準を超えている場合は、水道水中のPFAS濃度を低減することが認証された家庭用浄水器(フィルター等)の設置や、ミネラルウォーターの購入を検討してみるのもよいでしょう。

また、環境や身の回りのPFASについて気になる場合は、環境省や食品安全委員会のウェブサイトをご確認ください。
まずはPFASについて正しく知ることが大切です。関連情報は随時更新されていますので、最新の情報をご確認ください。

<参考>
・EFSA Panel on Contaminants in the Food Chain(CONTAM)「Risk to human health related to the presence of perfluoroalkyl substances in food」(『EFSA Journal』Vol.18、No.9、2020)
・International Agency for Research on Cancer(WHO)「Perfluorooctanoic acid(PFOA)and perfluorooctanesulfonic acid(PFOS)」(『IARC Monographs on the Identification of Carcinogenic Hazards to Humans』Vol.135)
・National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine「Guidance on PFAS Exposure, Testing, and Clinical Follow-Up. National Academies Press, 2022」
・U.S. Environmental Protection Agency「PFAS National Primary Drinking Water Regulation」
・U.S. Environmental Protection Agency.「Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS)」
・環境省「有機フッ素化合物(PFAS)について」
・消費者庁「ミネラルウォーター類におけるPFASの規格基準について」
・内閣府 食品安全委員会「『有機フッ素化合物(PFAS)』の評価に関する情報」

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前川 アイ株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

地域で潜在的に困っている方の助けになりたいという想いから保健師を志し、大学で看護師資格を取得後、大学院にて保健師資格を取得しました。学びを深めるなかで、人生で最も長い働く世代の健康を考えられる産業保健に興味を持ち、ドクタートラストに入社いたしました。
健康に関する発信をしていくことで、一人でも多くの方が生きがいを持って笑顔で働けるお手伝いをさせていただければと思っております。
【保有資格】修士(公衆衛生看護学)、保健師、看護師
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
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