部下のメンタル不調を早期発見する「ラインケア」の実践ポイント|見る・聞く・つなぐ

新年度が始まってから1~2カ月が経過する時期は、特に新入社員や環境の変化があった方に疲れが出やすい時期です。
新しい環境や業務に適応しようと、知らず知らずに無理を重ねてきた可能性があり、心身の負担が顕在化するケースも少なくありません。
いわゆる“五月病”の延長線上にある不調が、周囲から気づかれないまま進行してしまうこともあります。

こうした状況の中で、管理職に求められるのが「ラインケア」の視点です。
日常の中に潜む小さな変化を捉え、早期に対応することが、メンタルヘルス不調の深刻化を防ぐカギとなります。
本記事では、5月というタイミングも踏まえて、実践的なラインケアのポイントをお伝えします。

メンタルヘルス不調を最初に把握するのは誰?

皆さんは、メンタルヘルス不調を最初に発見するのは誰かご存知でしょうか。
独立行政法人労働政策研究・研修機構「職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査」によると、職場の上司などの管理監督者が48.4%、職場の同僚(先輩・後輩含む)が31.5%と職場の方が不調を最初に発見する割合は約80%といわれています。
つまり、この記事を読んでいる方が、メンタルヘルス不調の早期発見のカギを握っているといっていいでしょう。
では「ラインケア」の視点はどのようなものか、具体的に解説していきます。

ラインケアの視点「見る・聞く・つなぐ」

1)見る

上司が部下のメンタル不調に早く気づくには、どのような症状が現れるのかをあらかじめ理解しておくことが重要です。
勤怠面、仕事面、行動面の3つから見える、不調の現れ方をお伝えします。

① 勤怠

・ 欠勤、遅刻、早退が増える、無断欠勤をする
・ 時間外労働や休日出勤が不釣り合いに増える

② 仕事

心身に不調が増えると体調だけではなく、仕事にも影響が出ます。

・ 仕事の能率が悪くなる、以前はしなかったミスをする
・ 報告・連絡・相談や、職場での会話が減る、またはなくなる

③ 行動

・ 表情や動作に元気がなくなる、服装が乱れたり不潔になったりする
・ 不自然な言動、泣き言や「辞めたい」という言葉が目立つ

これらをまとめた標語として、「ケチな飲み屋」という言葉があるのをご存知でしょうか。
ぜひ覚えて活用しましょう!

け:欠勤する
ち:遅刻する
な:泣き言を言う
の:能率が低下する
み:ミスが増える
や:辞めたいと言う

2)聞く

コミュニケーションをとる時の聞く姿勢のポイントを3点お伝えいたします。

① 聞き役に徹する

ゆっくり話ができる時間と場所を確保し、「8割聴く、2割話す」程度と意識しましょう。
その時は、話を遮らず、相手の話を最後まで聞きましょう。

② 公平で真摯な態度をとる

視線は自然に相手に向け、相槌を入れながら聞きましょう。
オンラインでの面談は、画面越しになるため、お互いの表情や目線がわかりづらい点に注意しましょう。

③ 受け止める・共感する

心の中で「それは違うのでは……」と思ったとしても、まずは「○○と思っているんだね」と、部下が話した通りに復唱してみましょう。
答えを導いてあげたいのは上司としての気持ちかもしれませんが、部下の話を聞き、事実を把握しましょう。
部下の個性・持ち味・長所を認め伝え、そのうえで、育成的視点でアドバイス、今後のキャリアを共に考えていくことが大切です。

3)つなぐ

部下の話を聞いてみて「状態が良くなさそう」「眠れないなどの心身の不調がある」などがあった場合、いわゆる「事例性」の背後に「疾病性」がありそうだと感じた時は、社内相談窓口や産業保健スタッフ、産業医につなぎましょう。

※事例性:業務を推進するうえで困る具体的事実、疾病性:症状や病名などに関すること

<例>
・ 就業規則を守らない
・ 仕事の能率が低下している
・ 同僚とのトラブルが多い
・ 幻聴がある
・ 統合失調症が疑われる など

気になる部下について、上記専門職につなぐかどうか迷う場合は、以下のチェックリストを活用しましょう。

・ 1週間に半分以上は、睡眠に問題がある日がある(例:寝つきが悪い、真夜中に目が覚める、朝早く目が覚める、寝すぎてしまう)
・ 自分は価値のない存在だと思う
・ いつも楽しんでやっていたこと、趣味などが楽しめなくなった
・ 集中したり、決断したりすることが困難になった
・ 1日中、憂うつ、沈んだ気持ちが消えない

上記の状態が1~2週間続く場合は、ぜひ専門職につないでください。

おわりに

新年度から数カ月が経過するこの時期は、目に見えにくい疲労やストレスが表面化しやすいタイミングです。
こうした変化を見逃さず、日常的な関わりの中で「見る・聞く・つなぐ」を意識することが、部下の心身の健康を守るうえで非常に重要です。
ラインケアは特別な取り組みではなく、日々のコミュニケーションの延長にあるものです。必要に応じて専門職と連携しながら、働きやすい職場環境づくりを継続していきましょう。

<参考>
・ 独立行政法人労働政策研究・研修機構「職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査」
・ 厚生労働省「15分でわかるラインによるケア」
・ 厚生労働省「ラインによるケアとしての取組み内容(PDF)」
・ こころの耳「事例性と疾病性」

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楠原 綾香株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学時代から公衆衛生看護学に興味を持ち、保健師を志していました。大阪の病院で消化器外科・内科、回復期リハビリテーション病棟に勤務し、患者さまと関わっていくなかで、予防医学への関心も高まったことから、産業保健師として活動すべくドクタートラストへ入社。
看護以外に、新人教育や対面での学習会の開催もしてきました。これらの経験を活かし、保健師として情報を発信していきます。
【保有資格】看護師、保健師、第一種衛生管理者
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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