日本は世界でも有数の災害大国で、毎年地震や洪水・土砂くずれなど、多くの災害が発生しています。そのため、万が一の場合に備えて企業の防火・防災対策は必要不可欠です。
加えて近年ではサイバー攻撃やテロなど、自然災害以外の被害も増加傾向にあり、さまざまなケースを想定した対策を考えなければなりません。
そこで今回は、東京商工会議所が2023年8月28日に発表した「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート」の結果から、企業が行っている災害・リスク対策の傾向や、今後どういったケースを想定していくべきかを考察していきます。
このアンケートの調査期間は2023年5月22日~6月5日、調査対象は東京商工会議所会員企業である17499社、回答件数は1353件(回答率7.7%)です。
BCP策定・災害・リスク対策について
まず、BCPの策定状況について見ていきましょう。
BCPとは事業継続計画(Business Continuity Planning)のことであり、災害やサイバー攻撃、テロなどの緊急事態が発生した際に、被害を最小限に留め、早急に事業の継続・復旧を可能にするための計画です。
全体のBCP策定率は35.0%(昨年度:32.2%)とわずかに増加しており、企業規模別にみると大企業は71.4%(昨年度:54.2%)中小企業は27.6%(昨年度22.6%)と大企業の策定率が大幅に増加するという結果となりました。
想定しているリスクとしては、地震が最も多く93.4%、次いで感染症の59.3%、水害の55.7%となっております。
しかし、あらゆる災害を想定したBCP(オールハザード型)を策定した企業は12.8%にとどまりました。
やはり、身近である地震や水害、コロナウイルスで企業の対策が再検討されている感染症が上位を占める結果となりました。
地震や水害については各市区町村が発表しているハザードマップなどの資料があるので、一番取り組みやすい対策でもあります。
また、どのリスクにおいても備えが必要だと感じている一方で、BCPが策定できていないという課題があります。
特に、サイバー攻撃や戦争・紛争、テロやミサイルといった自然災害以外のリスクのBCP策定は半数以上の企業ができていませんでした。
加えて、「具体的なリスクが分からない」「策定・検討にかかる費用や人員に余裕がない」などの課題も存在します。
具体的な対策と行政に望む施策について
次に、従業員向けの備蓄状況を見てみると、3日分以上の飲料水を備蓄している企業は、全体の49.7%(1・2日分は34.6%)、食料は44.5%(1・2日分は30.2%)、災害用トイレは31.8%(1・2日分は25.3%)、毛布は57.8%という結果となりました。
一方で、外部の帰宅困難者向けの備蓄状況を見てみると、3日分以上の飲料水を備蓄している企業は、全体の16.6%(1・2日分は17.5%)、食料は14.3%(1・2日分は15.4%)、災害用トイレは11.1%(1・2日分は11.2%)、毛布は20.1%と、従業員向けの備蓄に比べると若干低い結果となりました。
従業員数や会社の規模によって多少異なることはあるかと思いますが、従業員向けに3日分の備蓄の確保がおおよその目安になるでしょう。
保管場所に限りがある会社も多いので、帰宅困難者用の備蓄を用意するか、従業員プラス来客用の備蓄を用意するかは各々で検討をする必要がありそうです。
行政に望む施策については、「防災・交通施設等インフラの維持・強化(66.1%)」「帰宅困難者対策(53.8%)」「感染症対策(47.6%)」「サイバーセキュリティ対策(42.1%)」と1位のインフラ整備を除き、さまざまなリスクの対策の施策を望む声が多い結果となりました。
加えて、「あらゆる災害・リスクに対応するBCP策定支援」や「ワンストップやプッシュ型の情報提供」といったBCP策定への支援を求める声が前回調査から大きく増加しており、BCP策定の意識が向上していると思われます。
まとめ
2011年の東日本大震災では首都圏で震度5強が観測され、首都圏全体で推定515万人の帰宅困難者が発生したとされています。
今後発生する恐れのある首都直下地震ではこれを上回る被害が想定されており、企業のBCP対策は必要不可欠となっております。
ハザードマップなど、地方自治体が提供している資料を基に会社の所在地にはどのような災害のリスクがあるのかの把握から始めてみてはいかがでしょうか?
<参考>
東京商工会議所「『会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート』2023年調査結果を取りまとめました」