日本の労働生産性は高い?数字から見る世界と比べた日本の現状
- 2025/2/27
- 生産性向上

日本は1960年代ごろから「高度経済成長期」といわれる急激な経済成長を経て、我々が暮らしやすいさまざまな環境が整備されていきました。
世界各国の経済状況を示す指標としてよく使用されるGDP(国内総生産)は2023年時点で4位と世界でも有数の「経済大国」となっております。
しかし、近年では高齢化による生産年齢人口の減少や、原材料価格の高騰、円安の影響による物価上昇などにより、日々の生活が苦しいという声もあちらこちらで耳にする機会が増えているかと思います。
今回は公益財団法人日本生産性本部が2024年12月16日に発表した「労働生産性の国際比較2024」の結果から、労働生産性における日本の国際的な立ち位置を把握し今後の展望について考えていきます。
国民一人あたりGDP
「経済的な豊かさ」を比較するにあたってはGDPではなく、国民一人あたりGDPが多く用いられます。
GDPに人口の観点を合わせることで、国民一人ひとりの「豊かさ」を示す指標となるためです。
また、国民一人あたりGDPを上昇させるためには、より少ない労力でより多くの経済的成果を生み出すことが重要であり、就業者一人あたり労働生産性と時間あたり労働生産性の上昇がキーとなっています。
それでは、各指標の結果を見ていきましょう。

引用:公益財団法人「労働生産性の国際比較2024」
先述の通り2023年時には日本のGDPが世界4位となっておりますが、国民一人あたりGDPは50,276ドル(476万円)で、OECD加盟国(ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関)38カ国中26位という結果となりました。
過去最高順位は1996年の5位でしたが、経済成長の停滞により年々順位は低下しほかの主要国に追い抜かれている状況となっております。
過去最低順位を記録した2022年(27位)からはやや改善が見られたものの、依然として大きく順位は上がっていないのが現状です。
労働生産性
日本の就業者一人当たり労働生産性については92,663ドル(877万円)で、OECD加盟38カ国中32位、1970年以降で最も低い順位を更新する結果となりました。
これはハンガリーやスロバキアなどの東欧諸国と同程度となっており、経済大国が多くある西欧諸国内で最も低い数値であるポルトガルと比較しても10%以上低い数値となります。
次に、時間あたり労働生産性については56.8ドル(5,379円)で、OECD加盟38 カ国中29位という結果となりました。
2018年(21位)から2022年(31位)にかけて急激に順位を落としましたが、経済成長率が上向いたことなどが影響して歯止めがかかったように考えられます。
この数値はポーランドやエストニアと同水準です。
最後に、製造業における労働生産性水準については80,678ドル(1,035 万円)で、OECD加盟38カ国19位、イタリアやスペインと同水準という結果となりました。
2000年はOECD諸国で1位という結果でしたが、2005年に9位、2010年に10位へと落ち込み、2015年以降をみると17~19 位と順位を落としています。
このように、日本はOECD諸国内において労働生産性が低いことが明らかになりました。
日本生産性本部がハーバード大学グロースラボと行った研究によると、日本の経済停滞の原因として、知識を蓄積した日本の企業は海外に事業を移転し、国内に残っているサービス業などの生産性の上がりにくい事業形態を持つ企業の割合が拡大したことが挙げられています。
これを打開するためにも技術革新や教育訓練の増加、専門性の高い人材の確保が必要であると述べられています。
おわりに
これまで見てきた通り、日本は世界と比較して経済成長が停滞していることがよく分かりました。
これからの日本の経済成長のために教育機関の充実や金銭支援、経済政策など国をあげて取り掛かることを期待するとともに、各企業においても労働生産性向上のためにあらゆる施策を実行する必要があると改めて実感しました。
これからの日本が本当の意味で「世界でも有数の経済大国」へと成長していくためには、身近で細かなところからでも一つずつ問題を改善していくことが必要です。
<参考>
公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2024」