いよいよ新年度が始まりました。
春は「出会いや別れの季節」と称されるように、会社内でも人事異動や新入社員入社、退職など、環境や人間関係が大きく変化します。
私たちは慣れ親しんだ環境や人間関係を好む傾向にあり、新たな刺激にストレスを感じます。入学や入社、結婚などの良いイベントであってもです。
私たちが生きる社会では、ストレスをゼロにすることは不可能です。
しかし、自分の考え方や行動で軽減させることはできます。
その行動を「コーピング」と呼びます。
新生活が始まるこの時期にコーピングを身に付けましょう!
①そもそもストレスってなに?
「最近ストレスたまっているのよね」、「今日の仕事はストレスだ」など、私たちは普段の会話でも「ストレス」という単語をよく使います。
では「ストレスとはなに?」と聞かれたときにどのように答えるでしょうか。
ストレスとは物理学で使用されている用語で、「物体の外側からかけられた圧力でゆがみが生じた状態」という意味です。
そこから派生し「心身に負荷がかかった場合に生じる緊張」となり、私たちが認識する意味で一般的に使うようになりました。
ストレスの仕組みを詳しくみると以下の言葉が出てきます。
ストレッサー
ストレッサーは、ストレスの原因となるあらゆる刺激のことです。
・ 物理的ストレッサー:温度、湿度、音、光など
・ 科学的ストレッサー:公害、アルコール、タバコ、食品添加物、酸素欠乏など
・ 生物的ストレッサー:花粉、ウイルス、細菌など
・ 心理・社会的ストレッサー:仕事、学校、家庭などの社会生活全般
ストレス反応
ストレス反応は、長時間、強いストレッサーを受けたときに生じる生体反応のことです。
この反応は非常に個人差があり、同じ環境化であっても反応はさまざまです。
・ 心理的反応:不安、怒り、イライラ、落ち込み、集中力や判断力の低下など
・ 身体的反応:頭痛、便秘や下痢、不眠、過眠、腹痛など
・ 行動的反応:飲酒や喫煙の増加、暴力、拒食や過食など
ストレス耐性
ストレス耐性は、ストレスに適応し処理できるか、どのくらい耐えられるかという意味です。
ストレス反応と同じように、ストレス耐性にも個人差が当然あります。
「ストレス耐性が高い、低い」を決める要素は以下の6つといわれています。
・ 容量:許容範囲が大きいとストレス反応が出にくくなり、小さいと心身にトラブルが起きやすくなる
・ 処理:ストレスの原因に冷静かつ臨機応変に解決できるかどうかでストレスに対する強度が変わる
・ 感知:ストレスを感じ取れる能力のこと。感知能力が高いほどストレスに弱い
・ 経験:ストレスを受けた後に積み上がる経験値のこと。同じストレッサーを繰り返し経験すると慣れてくるため、ストレスを感じにくくなる
・ 回避:個々人の性格で大きな差が出る部分。物事を割り切ることが得意な人は回避能力が高く、完璧主義や、きちょうめんすぎる人は低い傾向にある
・ 転換:ストレスを良い方向に捉え直す能力
ストレス反応が出ることは自然ですが、その反応に振り回されたり、長期間さらされたりすると、心身が疲弊してしまい病気を発症してしまう可能性が高まります。
逆にストレスにうまく対処できるとパフォーマンスが上がり、気分もプラスに影響します。その対処法のひとつが「コーピング」です。
②ストレス社会の攻略法「コーピング」とは?
コーピングとはメンタルヘルス用語で「ストレッサーにうまく対処しようとする行動」のことです。
コーピングの語源は「cope」で、「困難なことをうまく処理する」を意味します。
コーピングは3つの種類に分けられます。
問題焦点型
問題焦点型は、ストレッサーそのものを根本的に取り除く方法です。
たとえば、「人間関係に悩んでいる場合に直接相手と話し合って問題解決する」、「納期に間に合わないので、取引先に相談して納期を変更する」、「昇進制度に不満があるので転職する」などが挙げられます。
この方法は成功すれば非常に有効ですが、多くの労力を使うため、難易度は高めです。
情動焦点型
情動焦点型は、ストレッサー自体ではなく、ストレッサーによって湧き上がる感情にアプローチし、ストレス反応をコントロールする方法です。
たとえば、「誰かに話すことで気持ちの整理、発散をする」、「カウンセリングを受ける」、「新しい仕事に対してネガティブな感情を抱いた時に期待されている、成長の機会だととらえる」などです。
「受け止め方を変える」方法のため、身に付くまではうまく対処できず、効果が感じられないこともあります。
ストレス解消型
ストレス解消型は、ストレス発散に重きをおきアプローチする方法です。最も取り組みやすい方法です。
たとえば、「家族や友人と食事や映画を楽しむ」、「運動する」、「旅行する」、「趣味に没頭する」などです。
私たちを取り巻くストレッサーは、残念ながら根本的に解決できないことのほうが多いといわれています。そのため日ごろからガス抜きをすることは、ストレス社会を生きていくうえでは非常に重要です。
③実際にコーピングをとり入れよう!
自分にとってのストレスは何か、どのようなときにストレスフルな状態なるのか、把握することが大切です。
周りで体調悪そうな人がいれば「体調大丈夫?」と声を掛けることもあるかと思います。
自分に対しても定期的に「大丈夫?」と声を掛けるかのように振り返ってみましょう。
また、ストレスを感じたときは「〇〇の行動をする」などあらかじめリストを作っておくと、スムーズな対処ができます。
自分に合うストレス耐性を高めるための道具を増やしていきましょう。
上司・先輩向け
上司は部下のメンタルヘルスケアを求められることが多く、自身のことは後回しになったり、つい無理をしてしまったりすることもあるでしょう。
自身のメンタルヘルスが良好でないと、他人のケアをすることは困難です。
②の章で記載した中からできそうなものを選択して取り組んでみましょう。
そして、部下との間にメンター制度や1on1などで、コミュニケーションをとる機会を増やすことも重要です。
これらは部下のために実施するものという意味合いが強いですが、部下や後輩の気持ちを知ることは自身のマネジメント方法にもつながります。
新入社員向け
初めての会社勤めで緊張、ストレスを感じる場面が多いと思います。
新入社員にとって一番身に付けてほしいのは、②の章にある「情動焦点型」のコーピングです。
ある出来事が起こった時、それに対する感情は人によって異なります。
ということは、出来事と感情は別物であり、出来事をどう認知するかでストレス度合いは変わります。
口癖を変えるだけでも違うといわれているので、あまりネガティブな言葉を使いすぎないようにしましょう。
また、一人で悩まず上司や先輩、産業保健スタッフなどに相談することも大切です。
会社組織向け
従業員のストレス耐性を高めるため、ストレスチェック制度を活用しましょう。
ストレスチェック制度は従業員自身がストレスに気づくためにも有効ですが、組織としても活用できます。
受験結果を組織として活用させるのは難しい、そこまでできない企業も多いと言われています。
組織の大きさや状況にもよりますが、下記に取り組むことも重要です。
産業医面談
受験結果で「高ストレス者」が一定数出てくることがあります。
過度なストレスを受けている可能性が高いので、該当者には産業医面談を受けるように勧奨しましょう。
また、面談の結果に基づき、必要に応じて就業の措置を講じます。
集団分析
職場環境改善で働きやすい環境をつくるために、結果を部や課、グループなどの一定の集団ごとに分析し、どの集団がストレスを抱えているのかを確認しましょう。
原因となる業務の見直しや改善を行うところまで実施すると従業員の健康とパフォーマンス向上を期待できます。
メンタルヘルス不調者を出さないための予防
定期的なメンタルヘルス研修を実施する、産業保健スタッフやカウンセラーに相談できる環境づくり、従業員同士がコミュニケーションをとりやすいエリアを設けるなどハード面を整えましょう。
その結果、メンタルヘルス不調を早期発見や予防、悪化させないようにすることが可能な場合もあります。