女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の公表

日本でも女性の活躍がクローズアップされることも多くなってはいるものの、世界的にみると大きく後れを取っており、男女間の雇用や賃金の格差は根強く存在しています。
今回は、厚生労働省で公開された女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について詳しく解説します。

女性活躍推進法とは

仕事で活躍したいすべての女性が自身の能力や個性を十分に活かしながら、働ける社会の実現を目指して作られた法律があります。
「女性活躍推進法」(正式名称「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)です。
女性の職業生活における活躍に関して、女性活躍推進法では大きく以下の3つを基本原則としています。

1. 女性に対する採用や昇進の機会を積極的に提供すること
2. 職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境を整備すること
3. 職業生活と家庭生活の両立について本人の意思が尊重されること

参考:厚生労働省「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の概要(PDF)」

男女の賃金の差異

2022年7月以降、女性活躍推進法の改定により、常時雇用する労働者が301人以上の事業主には「男女の賃金の差異」が情報公表の必須項目となりました。
(※101人以上300人以下の場合は、「男女の賃金の差異」を含む16項目から任意の1項目の情報公表が義務、100人以下の場合は努力義務としています)
男女の賃金の差額をそのまま示すのではなく、企業の事業年度ごとに男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合(%)を公表することになっています。
公表の方法は、インターネットを利用し、自社のホームページに掲載、もしくは厚労省の運営する女性活躍推進企業データベースに掲載することとされています。

男女の賃金格差の算出方法
(1)労働者を男女、正規・非正規で区分する
(2)分けた区分ごとに、総賃金と人員数を算出する
(3)分けた区分ごとに、平均年間賃金を算出する
(4)男女の差異を割合で算出する

しかしながら、企業の実情では、男女間賃金格差の要因として管理職の比率や勤続年数の違いがあげられます。
実情を正しく伝えるため、「説明欄」を活用していくことが重要です。

日本の男女間賃金格差の推移・諸外国との比較

日本の男女間賃金格差は長期的に見ると縮小傾向にあり、男性一般労働者の給与水準を100としたときの女性正社員・正職員の給与水準が2005年では68.7%だったのに対し、2021年には77.6%と約9%も上昇しています。【図1】
しかしながら諸外国と比較すると、OECD諸国の平均値88.4に対して日本は77.5と約11%も減少しており、男女間賃金格差は国際的に見て大きい状況にあることがわかります。【図2】

情報公表は何のため?

男女間の賃金格差は依然として大きい傾向となっています。
情報公表の義務化により、各企業の男女間の賃金の差異が求職者をはじめ、社会の目にさらされることで、企業の取り組みを促し、男女間の賃金格差の解消につなげ、さらには、「女性の経済的自立」を図る狙いがあります。
現在、男女賃金格差を放置する企業は、企業価値の向上や事業の継続そのものが期待できないと評価される時代になっており、採用活動・最適な人材の獲得も困難になると考えられます。
また、男女賃金格差は生産性の低下や人材流出を招くリスクが高まります。
従業員が不公平な賃金格差を自覚すると、士気が低下し生産性や出勤率への影響も軽視できません。
さらに、仕事での待遇や評価に対して不満が続けば、従業員の社外への流出も招くことになります。
逆にいえば、性別に関係なく誰もが平等な立場で活躍している企業は社会的評価が高くなります。
男女賃金格差は日本の多くの企業が抱える問題で、女性が活躍の場を失う不公平な環境は生産性にも影響が及ぶことになります。
女性の生き方を考える良いきっかけと捉え、今一度、女性活躍推進法と取り組むべき対応について知識を深めていきましょう!

<参考>
・ 厚生労働省「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の概要」
・ 厚生労働省「女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について(PDF)」
・ 男女共同参画局「男女間賃金格差(我が国の現状)」

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篠塚純子株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

異業種、異職種からの転職のため、日々勉強中です。自分が関心を持ったり興味がある記事を発信していければと思います。
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