鉄分の王様と呼ばれた「ひじき」
男女問わず大切な栄養素の一つとして「鉄分」が挙げられます。
不足して貧血になると、めまいや立ちくらみ、動機・息切れなどの症状を引き起こします。
特に女性は月経・妊娠・出産・授乳など生涯を通して体が鉄分を必要とする機会が多く、積極的に摂取したい大切な栄養素です。
日本人に推奨される鉄分摂取量は成人男性で1日10mg、女性が12mg、妊娠後期〜授乳期で20mgとなっています。
鉄分の多い食品と言えばレバー、牛や豚の赤身肉、赤身の魚、ほうれん草、ひじきなどの食品が思い浮かびますが、実は、平成27年度に5年ぶりに改定された「食品標準成分表」ではひじきに含まれる鉄分が大幅に減ったことをご存知でしょうか?
ひじきの鉄分、実は9分の1だった!
「食品標準成分表」は文部科学省が作成している様々な食品の栄養成分について書かれたもので、学校給食や病院食など様々な場面で利用されている、日本人の栄養摂取の目安となるものです。
定期的に改定されているのですが、今回の改定で干しひじき100gに含まれる鉄分量が55mgから6.2mgへと変更され、なんと従来の約9分の1しか含まれていないことがわかったのです。
これはひじきを加工する際の製法の問題で、実はひじき自体には鉄分はほとんど含まれていないのです。
乾燥ひじきを製造する際に、従来は鉄釜で煮て乾燥させるという製法が主流で、この「鉄釜で煮る」段階において鉄釜から溶け出した鉄がひじきに添加されていたため、結果的に「ひじきは鉄分が多い」ことになっていたのです。
ところが現在ではステンレス製の鍋を使用していることがほとんどのため、今回の改定にあたって再度乾燥ひじきの鉄分を測定した結果、602mgしか含まれていないことがわかりました。
他にもひじきを茹でたり炒めた場合はなんと0.3gしか含まれていないことがわかり、2015年度版の食品標準成分表ではひじきの加工法の違いによって、それぞれ鉄の含有量が記載されることになりました。
鉄鍋を使って鉄を添加することができる
今では多くの家庭でステンレス製の鍋が一般的で、鉄鍋を使う人は少数かもしれません。
鉄鍋はその重さや扱いにくさにより敬遠されがちですが、鉄鍋を使用すると調理している間に鍋から鉄が溶け出し、作る料理に鉄分を含ませることができるという大きなメリットがあります。
そこで鉄鍋を使用してみるのも鉄分の摂取にはとても効果的な方法の一つなのです。
決してひじきを食べても栄養がないわけではなく、海藻であるひじきは食物繊維やマグネシウムを始めとするミネラル分を含んでいるため、どのような食品も満遍なく食べることが基本であることを忘れないようにしてください。