冬は要注意!非接触型体温計の落とし穴~なんで「34.0度」が出ちゃうの?~

冬は要注意!非接触型体温計の落とし穴~なんで「34.0度」が出ちゃうの?~

昨年秋~年末にかけて、ようやく収まるかと思ったのもつかの間、オミクロン株の発生とともに、コロナ第6波を迎えています。
今回はじわじわと感染者が増えたのではなく、急激に感染が広がり、3回目のワクチン接種や医療機関の受け入れ態勢の問題など、またもやたくさんの課題に直面しています。
「コロナ禍」と言われてから早2年、非日常と感じていたものが今や日常でもあるという現実と、元通り(完全には同じにならないにしても)に近づいていくという目標の間で、模索する日々がまだしばらくは続くでしょうか。
さて今回は、すっかりおなじみとなってしまった「非接触型体温計」の疑問と落とし穴を解説します。

触らないのに測れる不思議~しくみは赤外線~

今や街のあちこちで目にするようになった「非接触型の体温計」。
病院、デパート、飲食店、銀行、テーマパーク、会社、学校など、さまざまなところで使用されています。
画面に額を近づけて検温するものや、おでこ・手首に機械を近づけて測るものなどがありますが、瞬時に体温測定できることが一番のメリットです。
腋の下に挟んで使うものだと最低でも20秒程度はかかるので、大勢の人の体温を測る必要があるときに重宝されています。

ところで、非接触型体温計は、なぜ触れずに体温を測ることができるかご存知ですか?
どのような物質も「赤外線」を発していて、温度によって放出される赤外線の量が異なります。
この赤外線量の違いを利用して体温を推定するのが非接触型の体温測定機器のしくみです。
温度の高い物質(人間も含む)のほうが放出する赤外線量が多く、温度が低いほど赤外線量は少ないので、センサーで赤外線量を測り、間接的に体温を予測しているのです。
つまり、温度計のように直接温度を測っているのではないということです。
非接触型体温計は、相手に触れることなく瞬時に多数の体温測定ができる大きなメリットがある一方、特にこの寒い季節には注意が必要です。

測定値と実際の体温のズレ

平熱は36度台後半のはずが、額をかざしてみると「35.8度」だったり、子どもは体温が高めのはずが「36.0度」と出たり、ひどい時には34度台という、思わず「嘘でしょ?」とつっ込みたくなるような温度が表示されることがあります。
皆さんも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
これは非接触型体温計の大きなデメリットのひとつである「外気温に左右される」ことと、「直接温度を測定していない」がゆえに起こるものです。

非接触型体温計で測定する時、測りたいものと機械の間に必ず空間があります。
この空間の温度が高すぎたり低すぎたりすると計測に影響を与えるため、真冬・真夏の屋外は注意が必要です。
夏の屋外、エンジンが付いた車のすぐそばで測定した時に、まったく発熱のない状態でしたが38.0度と表示されたこともありました。
非接触型体温計の多くが、建物の入口付近に置いてあるため外気の影響を受けやすい状態だと言えます。

また、先ほども説明した通り、非接触型体温計は実際に体温を測定しているのではなく、赤外線量から体温を推測しているので、近づけた体の部位の表面温度にも大きく左右されます。
人間の体温はおおむね36~37度程度に保たれています。
人による差はあるものの、体温が35度を下回るようであればそれはもう低体温症の状態です。
ところが、冬の寒い日に冷たい風を顔に受けながら自転車を漕げば、耳を含め顔全体がとても冷たくなります。
体温自体は36度に保たれていたとしても、耳・顔・手先など部分的にとても冷たくなり、表面温度が35度を下回るのはよくあることです。
寒い中外からやってきて、入口ですぐ額や顔を近づけて測定すると、34度台と表示されて、「あれ?おかしいな」となるわけです。
このように、非接触型体温計は、その性質上外的要因の影響を大きく受けてしまうというデメリットがあります。

デメリットも理解しながら工夫して活用を

では、非接触型体温計は意味がないのかというと、そういうわけではないと考えます。
1日に数百人、数千人が訪れる施設の入口での検温が腋に挟むタイプだったら、検温だけで大行列になりますし、体温計を消毒する手間もあります。
「この場所を訪れている人は基本的に健康状態が良く発熱していない」という前提のもと使用するもので、あくまでスクリーニングとして使うのには良いでしょう。
一方、きちんと体温を測定したい状況、たとえば調子が悪いから熱を測る、家族が発熱しているから自分も測る、少人数の検温、このような時はやはり腋の下で測るタイプが適しています。
また、使い方にも工夫が必要で、置き型タイプ(顔を近づけるもの)は、原則的に屋内に設置することが望まれます。
直射日光や冷たい空気の入るところではなく、会社など建物であれば入口から少し中に入ったあたりに設置しましょう。
額や手首に近づけて測る小型タイプを使用する時は、冬はできれば外から入ってすぐは使わないほうが良いです。
ただ、すぐに測定しなくてはならない状況もあると思うので、その場合は外気で冷たくなった顔に近づけるのではなく、首元などある程度衣服で覆われていた部分に近づけると正確性が増します。

筆者自身は、測定値のズレを感じる場面が非常に多いのであまり非接触型体温計を当てにはしていません。
本当は熱があるけれど、寒い中測定したから37度未満で、入口の検温をスルーしてしまっているという状況は大いにあると思っています。
やはりコロナに関わらず、①日頃から自分や家族の平熱を知っておく ②体調が優れない時は無理に外出しない、この2点に尽きますが、日常のさまざまな場面で検温が求められる今の世の中では、用途を考え、使い方を工夫しながら上手く活用していくのがベストです。
非接触型体温計は万能ではないということはぜひ覚えておいてくださいね。

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田中 祥子株式会社ドクタートラスト 産業保健部 保健師

投稿者プロフィール

企業の健康管理室で働いていた経験をさまざまなかたちで皆さまにお届けします。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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