女性特有のがんを早期発見・予防しよう!受けるべき婦人科検診はこれだ

新年度が始まり、健診を受ける時期がやってきます。
会社によって福利厚生の内容は大きく違うので、予算や状況に合わせてどのようなオプションをつけるか個人によって違ってきます。
労働安全衛生法で決められている定期健診の内容にがん検診をオプションで付ける方も多いと思います。
全般的ながん検診については過去の記事で解説していますので、ぜひこちらも参考にしてみてください。

今回は女性特有のがんや婦人科検診に焦点をあてて解説します。

① 女性特有のがん~乳がん、子宮頸がん~

がんは日本人の死亡原因として、1981年から現在まで常に1位となっており、他人事ではない病気のひとつです。
また、生涯のうちにがんに罹患する可能性は、2人に1人といわれています。
国立がん研究センターの統計によると、がん罹患数の順位は以下になります。
がん罹患率(2019年)

がん死亡数の順位は以下になります。
がん死亡数(2022年)

女性のがん罹患数の第1位は乳房で、死亡数も4位と高い順位になっています。
子宮についても罹患数5位と女性特有のがんが上位に入っています。

乳がん

乳がんとは乳房にある乳腺にできる悪性腫瘍のことです。乳腺は母乳をつくり、乳幼児への栄養や免疫機能を与える重要な組織となります。乳がんの約90%は乳管という乳腺の組織の一部から発生します。進行すると血液やリンパ液の流れにのって転移することがあります。
転移しやすい場所は、乳房に近いリンパ節、骨、肝臓、肺、脳などです。

初期は自覚症状がないことも多いですが、大きくなってくるとしこりとなり、自分で触って気づくこともあります。
他にも乳頭から分泌物や血が出る、乳房が左右非対称になる、乳頭や乳輪がただれる、くぼむなどの症状が出現する方もいます。
最も多く発生する場所は外側上部、次いで中側上部、外側下部、内側下部、乳輪部となります。
また、40~50歳代の女性に最も多く発症します。

乳がんの主なリスクは、以下が挙げられます。

・ 初経年齢が早い
・ 閉経年齢が遅い
・ 出産歴がない
・ 初産の年齢が遅い
・ 妊娠中絶の回数が多い
・ 飲酒
・ 一親等の乳がん家族歴がある
・ 良性乳腺疾患の既往歴がある
・ 肥満

子宮頸がん

子宮頸がんとは子宮の入り口の子宮頚部あたりに発生するがんのことです。
ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染が主な原因です。
HPVは性交渉の経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされているウイルスになります。

ほとんどの子宮頸がんは、CIN(子宮頚部上皮内腫瘍)やAIS(上皮内腺がん)という前がん状態を経てがんになります。
進行すると骨盤内リンパ節や子宮頚部の周りの組織、肺などに転移することもあります。
発症年齢は30代後半から50歳代で多くなりますが、それより若い世代でも最近増加しているといわれています。
CINやAISの時期は症状がほとんどありません。
進行すると、不正出血(月経以外での出血や性交時の出血など)、においを伴った茶色の膿のようなおりもの、水っぽいおりものなどの症状が出現します。

検査の必要性・何歳から受ければいい?

がん全般の予防は、禁煙、節酒、適正体重の維持、バランスの良い食事、運動などが有効だといわれています。
乳がんや子宮頸がんにも有効ですが、完璧な予防行動をとれていたとしても、絶対にがんが発生しないとは限りません。
そのため、がんが発生しても進行させないようにすることが重要になります。早期発見、早期治療ができれば予後が大きく変わります。
ある程度病状が進行しないと自覚症状が現れないため、定期的な検査を受けましょう。

現在の国の基準は、子宮頸がん検診は20歳以上で2年に1回、乳がん検診は40歳以上で2年に1回推奨となっています。
家族歴や気になる症状がある場合はこの限りではありませんので、自身の状況や症状にあわせて選択、医師に相談しましょう。
検査を受けて「要精密検査」と判定された場合はがんの疑いが高いため、子宮頸がんは婦人科、乳がんは乳腺外科の医療機関を必ず受診し精密検査を受けましょう。
残念ながらがんと診断されると治療が始まります。がんでなかった場合はその後医師から今後の見通しや受診の間隔などが提案されます。

どんな検査内容?

乳がん検診

● マンモグラフィ(乳房X線撮影検査)
視触診では見つけられない小さなしこりや乳がんの特徴のひとつである石灰化を見つけることが得意な検査です。
妊娠している方、その可能性がある方は受けられません。
乳房を上下・左右の2方向撮影する場合がほとんどです。
乳房を薄くのばすために乳房を圧迫板で挟んで撮影しますが、痛みを感じることが多く、やや苦痛を伴う検査となります。

● 乳腺超音波検査
乳房の表面に超音波機器を当てて、画像化する検査です。
乳房内にしこりがあるかどうか、また広がり具合なども確認することが可能です。
被ばくリスクがないため、妊娠中でも検査可能になります。
痛みもなく身体への負担はありませんが、石灰化を確認することが難しい検査です。

● 乳視触診
医師が直接胸に触り、しこりや皮膚のつっぱりがないかなどを確認します。乳腺超音波検査の前に行われることが多いです。

子宮頸がん検診

● 子宮頚部細胞診
内診台にあがった状態で医師が子宮頚部にブラシ(または綿棒)を軽くこすって細胞をとり、顕微鏡でがん細胞があるかどうか調べる検査です。
人によっては少し痛みや違和感があります。また検査後少し出血する場合があります。
経血が多い場合、検査に必要な細胞がしっかり採取できず、正しい結果が得られない場合があるので、月経中の検査は避けましょう。

<参考>
・ 厚生労働省「政策レポート(がん対策について)
・ 厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~
・ 国立がん研究センター がん統計「乳房
・ 国立がん研究センター がん統計「子宮頸部

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保健師 大島かよ

投稿者プロフィール

病棟・クリニックでの患者さんとの関わりの中で、「もっと早く治療開始できていれば」、「病気になる前に何かできないか?」と考えるように。その思いから次第に予防に興味を持ち、「働く世代」に対するアプローチがしたい!と、産業保健の世界へ飛び込みました。
現在産業保健師として数社訪問、健保で特定保健指導を担うフリーランスの保健師です。
自分の経験なども盛り込みながら、産業保健に関連する情報を発信していきます。
【取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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