健康寿命をのばす! 歯の健康を保つ方法

私たちの寿命はのび続け、ついに「人生100年時代」といわれるようになりました。
一般に寿命とは、平均寿命のことで「生まれてから亡くなるまでの期間」を指します。
これとは別に昨今注目されている言葉が「健康寿命」です。
健康寿命とは「健康上の問題により、日常生活が制限されずに生活できる期間」のことです。
2019年の調査では、平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳に対して、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳で、平均寿命と健康寿命の差が男女ともに10年程度あります。
この差異は、自分ひとりで生活することが難しく、介護が必要になる期間といえます。
健康寿命をのばすためには、日々の生活習慣が深く関わりますが、意外にも見落とされがちなのが「歯の健康」です。今回は歯の健康について詳しく解説します。

歯の役割・重要性

大人の歯は永久歯といわれ、正常な場合28本あります。親知らずを含めると32本です。歯は食事以外にも重要な役割があります。

・ 食べ物を咀嚼し飲み込みやすくする
・ 味を感じやすくする
・ 消化しやすくする
・ 表情筋をつくる:歯があることにより表情筋が鍛えられる
・ 脳に刺激を与える:よく噛むことで血流量が増え、脳神経細胞が活性化する
・ 姿勢やバランスを保つ:奥歯がしっかりかみ合うと全身の筋肉のバランスがとれる
・ 発音を助ける:唇や舌の動きをサポートする

脳に刺激を与えたり、姿勢や発音を助けたりと、一見歯が関係しているとは思えないところでサポートをしてくれています。
「歯は何本もあるし1本くらい抜けても大丈夫」というわけにはいきません。(歯列矯正や親知らずの抜歯は例外)
歯は建物の柱と同じで1本抜けたままにしていると全体が崩壊する可能性もあり、さまざまなリスクが伴ってきます。

・ 栄養の吸収を妨げる:咀嚼力が低下するため、胃や腸への負担がかかる
・ かみ合わせや歯並びが悪くなる:空いたスペースを埋めようと歯が傾く
・ 口臭が発生する:歯の抜けたスペースに食べかすが溜まりやすくなる
・ ほかの健康な歯も折れる可能性がある:本来28本でかむ力を支えるが、減ると他の歯への負担が大きくなるため
・ 老化を早める:歯を失った口元はシワができやすくなり、老けた印象に見える
・ 認知症を進行させる

また、食べられる食品は歯の本数により変わります。以下が例になります。

18~28本:硬いものを食べることができる

フランスパン、酢ダコ、堅焼きせんべい、たくあん、スルメイカ など

6~17本:食感のあるものを食べることができる

せんべい、レンコン、きんぴらごぼう、おこわ、かまぼこ、豚肉(薄切り) など

0~5本:すりつぶせるものしか食べることができない

うどん、バナナ、豆腐、ナスの煮つけ など

このことから、20本以上の歯が残っていれば、硬い食品でもほぼ満足に噛めるといわれています。いつまでも美味しく楽しく食事をするためにも、歯の本数は非常に重要なことがわかります。

歯の健康を脅かす病気

歯の病気はさまざまありますが、ここでは永久歯の抜歯原因第1位と2位を説明します。

第1位:歯周病

歯周病はギネスブックで「世界で最も一般に蔓延している感染症」と認定されています。プラークという細菌と代謝物のかたまりによって引き起こされる感染性炎症性疾患で、歯を支える歯茎や骨が壊れていく病気です。
歯と歯周ポケットの清掃が行き届いていない場合、プラークが停滞し炎症を起こします。
歯肉が赤くなり腫れあがりますが、痛みはほとんどありません。最初は自覚症状が乏しいため、気が付かないうちに進行します。
膿が出る、歯が大きく動揺するまで進行すると手遅れになる可能性が高く、歯を抜かなければならない病気です。

また歯周病は歯に影響するだけではなく、さまざまな病気を引き起こします。

<歯周病が原因で起こる病気>
動脈硬化、心疾患、脳血管疾患、早産・低出生体重児、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)、肺炎、糖尿病、認知症など

第2位:齲歯(うし、虫歯)

虫歯になる原因は、①細菌、②歯質、③糖質、④時間です。
歯並び、唾液の量や性質などによって虫歯になりやすいかどうか変わります。その中で虫歯を直接引き起こすのが、ミュータンス菌という細菌です。
ミュータンス菌がプラークを作り出し、食べかすや糖質を栄養にして酸を出します。
歯磨きを忘れる、磨き残しがある、間食が多いと口腔内が酸性に傾いたままになるため、徐々に歯が溶けていき、穴があきます。
これが齲歯です。
神経にまで進行すると激痛を起こし、最終的に神経を腐らせてしまいます。放置し続けると歯を失ってしまいます。

歯を健康に保つための対策

下記の症状は治療が必要な場合が多いので、速やかに歯科医院を受診しましょう。

・ 歯茎が真っ赤に腫れている
・ 歯が痛い
・ 歯がぐらぐらしている
・ 息がくさい
・ 出血する
・ 口の中がねばねばする など

歯の健康を保つには、セルフケアと定期的なメンテナンスが重要です。治療ではなく予防を積極的に行うことで、歯を失うリスクは格段に下がります。歯を失うということは思った以上にQOLが下がります。ぜひ一緒に取り組みましょう。

歯磨き

最もポピュラーで重要な予防策です。特に起床後、就寝前の歯磨きは重要です。
起床後の口腔内は細菌が最も多い時間帯といわれています。就寝中は唾液の分泌量が減るため、口腔内の自浄性が低下することが理由です。歯磨きをせず朝食をとると、口の中の細菌も一緒に飲み込んでしまうため、朝食前に歯を磨く習慣をつけることが大切です。また、食後も歯磨きしましょう。

以下のことを意識すると効果的です。

バス法:歯ブラシの毛先を歯に45度に当て、毛先をポケットに挿入し微振動させる
1歯ずつの縦磨き:歯ブラシを縦に持ち、毛先を歯と歯肉に垂直にあてて、上下に微振動させる

フロスや歯間ブラシを使用する

歯と歯の間は歯ブラシでプラークを除去することが難しいので、フロスや歯間ブラシを活用しましょう。1日1回は使用することをおすすめします。
フロスを使用した際に、糸が引っかかる、ほつれる場合は齲歯ができていたり、歯石がついていたりする可能性があります。歯科医院で相談しましょう。

歯のメンテナンスを受ける

歯石をとる、歯のクリーニングのために、歯科医院に定期健診に行きましょう。メンテナンスの頻度は歯の状態にもよりますが、3か月に1回を推奨されることが多い印象です。

間食を減らす・だらだら食べない

食事をすると口腔内が酸性に傾きます。唾液や歯磨きにより中性に戻りますが、間食が多かったり、だらだら食べてしまったりすると、歯が酸で溶かされる可能性が高まります。
間食の回数を減らし、だらだら食べないように意識しましょう。

<参考>
・ 厚生労働省eヘルスネット「平均寿命と健康寿命」
・ 厚生労働省e-ヘルスネット「歯・口腔の健康」
・ 公益財団法人8020推進財団「働き盛りのお口の健康」

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保健師 大島かよ

投稿者プロフィール

病棟・クリニックでの患者さんとの関わりの中で、「もっと早く治療開始できていれば」、「病気になる前に何かできないか?」と考えるように。その思いから次第に予防に興味を持ち、「働く世代」に対するアプローチがしたい!と、産業保健の世界へ飛び込みました。
現在産業保健師として数社訪問、健保で特定保健指導を担うフリーランスの保健師です。
自分の経験なども盛り込みながら、産業保健に関連する情報を発信していきます。
【取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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