2023年8月28日、中央教育審議会 質の高い教師の確保特別部会(第3回)が開催されました。そこで「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」が手交されました。
本提言は、子供たちへの教育の質の向上のための学校における働き方改革等について、できることを直ちに行うという考え方の下、国、都道府県、市町村、各学校など、それぞれの主体が緊急的に取り組むべき施策を取りまとめたものです。
この取り組むべき施策は、
①学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進
②学校における働き方改革の実効性の向上等
③持続可能な勤務環境整備等の支援の充実
の3本の柱から構成されています。
では、それぞれの取組の具体策を紹介していきます。
学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進
「学校・教師が担う業務に係る3分類」を徹底するための取組み
・本来であれば学校以外が担うべき業務や教師が担う必要のない業務などの主体ごとに、具体的な対応策の好事例を横展開する
ちなみに「学校・教師が担う業務に係る3分類」とは以下の画像のことを指します。
(引用:https://www.mext.go.jp/content/230914-mext_zaimu-000031605_3.pdf)
各学校における授業時数や学校行事の在り方の見直し
・標準授業時間(年間1,086単位時間以上)を大幅に上回っている学校は見直すことを前提に点検を行い計画を見直す
・学校行事を精選、重点化
・準備の簡素化・省力化
ICTの活用による校務効率化の推進
・学校保護者間の連絡手段のデジタル化
・生成AIの校務への活用の推進
以上が学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進の具体策です。
実際に、熊本市教育委員会は運動会の開会式を簡素化、生徒の全体行進を省略することにより練習時間を減らした事例もあります。
学校における働き方改革の実効性の向上等
地域、保護者、首長部局等との連携協働
・学校における働き方改革等を学校運営協議会や総合教育会議で積極的に議題化
・保護者等からの過剰な苦情等に対しては、教育委員会等の行政による支援体制を構築
健康及び福祉の確保の徹底
・令和元年の給特法改正を踏まえた勤務時間の上限等を定めた「指針」の実効性の向上
・メンタルヘルス対策に向けた個別の要因分析や対策の好事例の創出
学校における取組状況の「見える化」に向けた基盤づくり
・在校等時間の把握方法等の改めての周知・徹底、各教育委員会等の状況を丁寧に確認
以上が学校における働き方改革の実効性の向上等の具体策です。
令和3年度の教員の精神疾患による長期療養者数は過去最多人数です。
有効なメンタルヘルス対策を実施できるよう、要因分析や対策の好事例を創出する必要があります。
(参考:令和3年度公立学校教職員の人事行政状況調査について)
持続可能な勤務環境整備等の支援の充実
教職員定数の改善
・小学校高学年の教科担任制の強化
支援スタッフの配置充実
・教員業務支援員の全小・中学校への配置
・スクールカウンセラー、学習指導員、部活動指導員などの配置充実
処遇改善
・主任手当や管理職手当の額を速やかに改善
教師のなり手の確保
・教育委員会と大学・民間企業等との連携・協働による教職の魅力発信
・大学と教育委員会による教員養成課程の見直しや地域枠の設定
・奨学金の返還支援に係る速やかな検討
以上が持続可能な勤務環境整備等の支援の充実の具体策です。
長崎県長与町教育委員会では、地域部活動推進事業を実施し取組を推進。
令和4年度末までに2種目の部活動を地域の活動に移行しました。
令和4年度の実積研究事業では、顧問を務めていた教員の月別超過勤務時間が平均して71.5時間から38.5時間へ減少しています。
子どもたちに対してよい教育を行うことができるようにすることや新しい知識、技能を学び、学校教育の充実に極めて重要です。
しかし、教師を取り巻く環境は危機的状況です。
私の知人も中学校教員ですが、部活の顧問をやっているため平日も土日も休みがなく、唯一休めるのは部活がないテスト期間のみと言っていました。
休みがなく、常に業務に追われる…。
この現実に「教師になりたい」と思っている学生が少ないのも事実です。
部活動を地域の活動へ移行、ICTを活用するなど、保護者やスタッフの協力が必要だとは思いますが、積極的に導入してもらいたいですね。
本提言はこれで終わりではありません。
今後制度の対応などの必要な施策を含め、更に講義を進める予定だそうです。
<参考>
・ 文部科学省:中央教育審議会 質の高い教師の確保特別部会にて、貞広部会長から永岡大臣へ「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」が手交
・ 文部科学省:教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)