令和6年版自殺対策白書が発表されました~子どもは高止まりの傾向~

2024年10月29日、政府は「令和6年版自殺対策白書」(令和5年度 我が国における自殺の概況及び自殺対策の実施状況)を閣議決定しました。
自殺対策白書は、自殺対策基本法に基づき、毎年国会に提出しているものです。

(年次報告)
第11条 政府は、毎年、国会に、我が国における自殺の概況及び講じた自殺対策に関する報告書を提出しなければならない。
出所:自殺対策基本法

「令和6年版自殺対策白書」は、日本における2023年度の自殺状況と政府の自殺対策をまとめたものです。
以下では「令和6年版自殺対策白書」の概要を解説するとともに、取組も紹介します。

2023年度の状況

2023年度の自殺者数は21,837人で、全体としては前年から減少しました。
男女別になると、男性は2年連続の増加です。
年齢別に見ると、40代や50代を中心に一部年齢層で増加が見られます。

また職業別にみると、有職者が男女ともに増加しています。

原因

自殺の原因としては、「健康問題」が最多で、次いて「経済・生活問題」「家庭問題」が続いています。
性別や年齢層により、具体的な動機や背景は異なりますが、自殺の多くは、複数の原因が絡んでいることがわかります。

子どもの自殺

続いては、子どもの自殺についてです。
全体としては自殺者は減少傾向にあるものの、小中高生の自殺は増加しており、2023年は513人と、過去最多であった前年と同水準で推移しています。

また2009年以降の小中学生の自殺者を日付別で見てみると、夏休み最中の8月後半から増加し、夏休み明けの9月1日に多くなっています。
北海道、東北の自殺者数が増加する時期はその他の地域よりも2週間早いです。
これは夏休みが他の地域よりも早いことに関連しているといえます。

子どもの自殺対策

子どもの自殺が増加傾向であることを踏まえ、2023年6月には、こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議が「こどもの自殺対策緊急強化プラン」をとりまとめました。
子どもの自殺の要因分析や自殺予防のためのチームの設置などに取り組んでいます。
またこども家庭庁でえは「こどもの居場所づくりに関する指針」に基づき、子どもの視点に立って安心して過ごすことができる居場所づくりを支援するための「こどもの居場所づくり支援体制強化事業」を実施しています。

主な施策の取組は以下の2点です。

① 電話・SNSなどの活用

法務省では、こどもの人権に関する相談ダイヤル「こどもの人権110番」をはじめ、人権問題に関する相談に対応しています。
また、内閣府孤独・孤立対策Webサイト「あなたはひとりじゃない」の子ども(18歳以下)向けページにて相談窓口の案内や声を上げやすくするための情報を発信しています。

② 夏休みの集中的な啓発活動の実施

夏休み明けに増加する傾向を踏まえ、集中的に啓発活動に取り組んでいます。
厚生労働省では、ポスターや動画を制作、webサイト「まもろうよこころ」で周知を行い必要な情報を提供しています。

政府は積極的にWEBサービスやチャットなどを使って、中高生にも相談しやすい環境づくりを行っています。

今後の課題

全体の自殺者は減少傾向ですが、子どもの自殺が増加傾向にあることは非常に悲しい現実です。
今後は、子どもの自殺の原因分析をさらに深めると共に地域全体で支える体制をつくりあげなくてはなりません。
また、孤独や孤立の解消に向けた取り組みを強化し、家庭、学校、地域が連携して支援を行う仕組みの整備が必要です。

<参考>
・ 厚生労働省「令和6年版自殺対策白書」

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牧原 花林株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

前職は残業がかなり多く、長時間労働で帰宅する日々を送っていました。こうした労働環境下で体調を崩すことも多く、健康を考えるようになり、2023年にドクタートラストに入社。
自分自身の経験を活かしつつ、健康について発信していきます。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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