「肝心(腎)要」の語源である肝臓、腎臓、そして心臓――。
前回まで、このうち肝臓、腎臓をテーマに解説してきました。
今回は「肝心(腎)要」の語源となった3つ目の臓器、「心臓」をテーマに解説します。
心臓が生きる上で欠かせない臓器ということは、皆さん知っていると思います。
厚生労働省「2021年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、心臓病(心疾患)は日本人の死因第2位であり、多くの方が亡くなる原因です。
私たちの命に直結する心臓について、改めて理解を深めましょう。
全身に血液を循環させる重要なポンプ「心臓」とは?
心臓は筋肉でできたこぶし大程度の臓器であり、胸の中心からやや左側に位置しています。
心臓の左右に心房と心室が2つずつあり、心房は血液を受け取る部屋、心室は血液を送り出す部屋としての役割を担っています。
一定のリズムで心臓が収縮、弛緩することで全身に酸素と栄養の豊富な血液を送り出し、不要となった二酸化炭素や老廃物を受け取り、心臓に血液が戻ってくるというサイクルを繰り返しています。
1日で8トンもの血液を送り出していると言われています。
突然ですが、皆さんは心臓が一生のうちにどのくらい拍動するか知っていますか?
勝手に動いてくれているので、普段意識することは少ないかと思います。
近年「人生100年時代」に突入したと言われているので、ここでは100歳まで生きると仮定して計算してみましょう。
「70回/分(心拍)×60分×24時間×365日×100年」で計算すると、なんと約37億回も拍動することになります。
身体の筋肉の中で最も働きもので、車に例えるとエンジンのような非常に重要な臓器だとわかります。
命に関わる生活習慣病「心臓病」とは?
心臓は全身に血液を送っていますが、心臓自身の筋肉(心筋)も、血液から酸素と栄養をもらっています。
心臓自体に血液を送っている血管を冠動脈と呼び、血流が途絶えたり詰まったりすることで心臓病を発症します。
心臓病とはさまざまな心臓の病気の総称ですが、ここでは生活習慣病に関連する心臓病を紹介します。
狭心症
生活習慣の乱れなどにより動脈硬化が進むことで血管が狭くなり、心臓が酸欠状態になって発症する病気です。
胸や喉のしめつけ感や痛み、胸の違和感、重圧感が主な症状ですが、中には胸の痛みを感じず、別の部位(奥歯や首、左肩、左腕、みぞおちなど)に痛みが生じるケースもあります。
発作持続時間は2~10分で、歩行や入浴、食事の時などに発作が出やすく、安静にすると治まりますが、繰り返し発作が起こると言われています。重症になると安静時にも起こるようになり、放置すると心筋梗塞を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。また、ニトログリセリンという薬をなめると数分で治まります。
心筋梗塞
冠動脈が詰まって心臓の一部が壊死し動かなくなる病気です。症状は狭心症と同じですが、痛みの程度は非常に強く、発作も30分以上続きます。
冷や汗や吐き気を伴うこともあり、ニトログリセリンは効果がありません。
心筋梗塞は心臓に十分な酸素が行き渡らない状態であるため、心臓のポンプ機能が低下します。
全身への血流が滞ると呼吸困難や浮腫、意識消失、さらには致死性の不整脈や心臓破裂を引き起こし、最悪の場合は死に至る非常に怖い病気です。
心臓病発症の危険因子
・加齢
・性別(男性に多い)
・遺伝
・肥満
・糖尿病
・高血圧
・脂質異常症
・喫煙習慣 など/p>
これらは動脈硬化を進行させます。
心臓病の発症危険度は、危険因子が重なるほどリスクが高まります。
2001年に労働省作業関連疾患総合対策研究班調査によると、危険因子(上記のうち肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症で調査)が3、4個になると心疾患発症危険度が跳ね上がり、危険因子がない人の約36倍にもなるという研究結果を出しています。
予防行動がカギ!今日から心臓にやさしい生活をしよう!
上記で紹介した「心臓病発症の危険因子」の中の「加齢、性別、遺伝」は自分でコントロールすることはできませんが、他の因子は遠ざけることが可能です。
公益財団法人 日本心臓財団が提唱する「健康ハート10ヵ条」というものがあります。
1. 血圧とコレステロールを正常に。(太りすぎ、糖尿病には注意して)
2. 脂肪の摂取は、植物性を中心に。
3. 食塩は調理の工夫で、無理なく減塩。(1日6g未満を目標に)
4. 食品は、栄養バランスを考えて。(1日3食品を目標に)
5. 食事の量は、運動量とのバランスで。甘いものには要注意。
6. つとめて歩き、適度な運動。
7. ストレスは、工夫をこらして上手に発散。
8. お酒の量は、自分のペースでほどほどに。
9. タバコは吸わない。頑固に禁煙。
10. 定期検診はわすれずに。(毎年一度は健康診断)
生活習慣病予防に必ず出てくる、肥満の是正や禁煙、適度な飲酒、習慣的な運動はとても重要です。
まずは今の自分の食生活や運動習慣などを振り返ってみましょう。
上記は心臓病を予防するための非常に重要な行動ですが、「全部は難しいなぁ」と感じる方もいるかもしれません。
10か条すべて完璧に取り組めていなくても、意識することが大切です。
例えば「10分多く歩いてみよう」、「腹八分目に抑えてみよう」、「今日は休肝日にしてみよう」など、思いつきからでも大丈夫です。
その小さな意識が積み重なれば習慣になることを期待できます。
最初に大きな目標を掲げるとプレッシャーや失敗につながることも多いので、自分のできる範囲から取り組んでみましょう。
「肝心(腎)要」の臓器を全3回で紹介しました。
私たちの身体は欠かすことができないいくつもの臓器で構成されています。
その中でも特にこの3つの臓器は、機能低下や病気の発症、病状の進行などによりQOLが著しく下がります。
生活ががらっと変わってしまうことも少なくありません。
日ごろの生活習慣改善・予防行動が非常に重要になるので、「数値が悪くなってから」「病気になってから」と後回しにせず、今日から始めてみませんか?
<参考>
・ 厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)の概況」
・ 厚生労働省「これからの生活習慣病対策」
・ 公益財団法人日本心臓財団「健康ハート10カ条」