【2023年10月から】墜落・転落防止対策が強化されます!~足場点検時の氏名が義務化~

2023年2月13日、厚生労働省から「「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」の答申結果」が公表されました。
今回の労働安全衛生規則(以下、安衛則)改正は、建設業における足場からの墜落・転落災害を防止するために行われるもので、以下2つがポイントです。

<改正ポイント>
①一側足場の使用範囲を明確化(幅1メートル以上の場所では、二側足場の使用を義務づける)
②足場点検の確実な実施
・足場の点検時には、点検者をあらかじめ指名し、その者に点検を行わせることを義務づける
・足場の点検を行ったときは、点検者氏名の記録・保存を義務づける

以下では、改正に至った背景、各改正内容をわかりやすく解説します

改正の背景~建設業では、年間およそ300人が労働災害で死亡~

建設業においては、労働災害件数は減少傾向にあるものの、今なお、年間およそ300人が死亡、また、およそ15,000人が死傷しています。
さらにこうした労働災害のうち、墜落・転落が原因であるのは死亡者の4割ほど、死傷者の3割以上を占めています。
過去にもさまざまな取り組みを行い、墜落・転落防止を図ってはいるものの、建設業における死亡災害でもっとも多いのが墜落・転落であることから、今回、安衛則の改正にいたりました。

【2024年4月から】改正ポイント①一側足場の使用範囲の明確化

改正ポイントの1つ目は「一側足場の使用範囲の明確化」です。
一側足場(ひとかわあしば)とは、足場の構築方法の一つです。
建地(柱の支柱となる垂直材)が内側と外側の2本で構成される二側足場(ふたかわあしば)を組むスペースがないような敷地が狭い場所で組まれるもので、建地が1本で構成されています。

このように、一側足場は、狭あいな現場で使用されることが多いことから、手すりなどの設置が困難であり、安全衛生規則で定められた墜落防止措置の適用外とされています。
一方で、2019年~2021年に発生した「足場からの墜落・転落による死亡災害」は56件中8件が一側足場からというのが状況です。

そこで、今回の改正では、幅1メートル以上の場所では、二側足場の使用を義務づけ、一側足場の使用範囲の明確化を図ります。
なお、つり足場を使用するときや、障害物があるなどして、二側足場の使用が難しいときは、この限りではないとしています。
施行期日は2024年4月1日です。

【2023年10月から】改正ポイント②足場点検の確実な実施

労働安全衛生規則567条1項、2項では、その日の足場作業を開始する前や、悪天候の後などに足場作業を行うときは、足場の点検が事業者に義務づけられています。

労働安全衛生規則
(点検)
567条 事業者は、足場(つり足場を除く。)における作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、作業を行う箇所に設けた足場用墜落防止設備の取り外し及び脱落の有無について点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。
2 事業者は、強風、大雨、大雪等の悪天候若しくは中震以上の地震又は足場の組立て、一部解体若しくは変更の後において、足場における作業を行うときは、作業を開始する前に、次の事項について、点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。

ところが、足場からの墜落・転落災害が発生している事業者では、こうした点検が行われていない事例が散見されます。
また、「足場からの墜落・転落防止総合対策推進要綱」(平成27年5月20日付け基安発0520第1号)では、点検実施者は、事業者が指名することとされています。
そこで、今回の改正では、事業者や注文者による足場の点検が確実に行われるようにするため、点検者をあらかじめ指名することを義務づけることになりました。

さらに、労働安全衛生規則567条3項では、点検結果の記録、保存が義務づけられています。

労働安全衛生規則
(点検)
567条 (中略)
3 事業者は、前項の点検を行つたときは、次の事項を記録し、足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間、これを保存しなければならない。

今回の改正では、この記録、保存内容に「点検者の氏名」が追加されます。

これら点検者の事前指名、および点検者氏名の記録・保存は、足場点検を確実な実施を目的に義務づけられ、2023年10月1日に施行されます。

今回の改正内容のうち、点検者の事前指名、および記録・保存の施行期日はおよそ半年後に迫っています。
点検用紙の修正など、今のうちに対応をしておきましょう。

<参考>
・厚生労働省「「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」の答申結果」
・厚生労働省「建設業における墜落・転落防止対策の充実強化に関する実務者会合」

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
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