みなさん、健康的な腎臓について考えたことはありますか?
3月の第2木曜日(2023年は3月9日)は「世界腎臓デー」です。
これは、国際腎臓学会と腎臓財団国際連合により制定されたもので、腎臓病の早期発見と治療の重要性に関する認識を高める活動が推進されています。
腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるものの一つで、症状を自覚した時にはすでに病気が進行している可能性があり、日ごろからの腎臓病予防の意識が非常に重要です。
知っているようで知らない腎臓に対して、意識的に生活している人は決して多くないでしょう。
この記事では、腎臓の機能が低下すると、私たちの生活はどのように変わるのか、また腎臓を守るために今日から始められることについて、わかりやすく説明します。
仕分けの天才、腎臓の機能
腎臓の機能の一つに、尿をつくる機能があることはよく知られています。
では、“尿をつくる”とは、どういうことでしょうか。
尿は血液中の、いらなくなったものでできています。
血液の約45%は赤血球や白血球などの血球、残り55%は血漿(けっしょう)で構成されています。
血漿の約90%は水分でできており、そのほかに固形成分として、タンパク質、糖質、脂質、ミネラルなどが含まれます。
血液は全身を巡り細胞にエネルギーなどを運ぶと同時に不要となったものを回収します。
そして不要なものを含んだ血液をきれいにしてくれるのが、腎臓です。
腎臓にはろ過フィルターのような部位があり、血液中に含まれる必要なものは血液に返し、不要なものは尿にする仕分け作業をしています。
不要なものが体に溜まると、むくみやだるさ、さらには呼吸困難や意識障害などが起こり、最悪の場合は死に至る可能性があります。
ほかにも腎臓は、血圧の調整や、赤血球をつくる手助けなどの働きも担っています。
このことから腎臓は、私たちが生きるためにとても重要だということがわかりますね。
20歳以上の8人に1人がかかっている「慢性腎臓病」とは
日本の慢性腎臓病の患者数は1,330万人以上で、20歳以上の8人に1人以上にあたるともいわれています。
慢性腎臓病は、腎臓の機能が低下した状態、あるいは腎障害を示唆する所見が3カ月以上持続した状態を指します。
腎臓に障害が起こると、その機能が回復することはほとんどなく、それ以上悪化しないようにしたり、悪化した場合は腎移植や透析の必要が生じます。
腎移植には当然ドナーが必要ですし、移植したとしても今まで以上の生活習慣の見直しや、自分の身体が移植腎を異物として攻撃しないための免疫抑制剤の継続的な内服が求められます。
また、透析患者には①血液透析と②腹膜透析の2つがありますが、そのどちらも生活中に占める比重は大きくなります。
① 血液透析:週3回、1回4時間程度通院し、血液を体外の専用機器へ循環させ浄化する。事前に透析に必要な血管の手術(バスキュラーアクセス造設)を受け、術後はその部位への負荷回避などの配慮が不可欠
② 腹膜透析:自宅にて自分自身でも実施可能だが、毎日1~5回程度の透析液交換の作業が必要。自らの腹膜を利用するため、腹部へのカテーテル挿入の手術が必要であり、挿入部からの感染リスクがある
透析をしていても働ける?腎不全患者の働き方
一般社団法人日本透析医学会によると、日本には2021年末時点で約35万人の透析患者がいます。
透析が必要であるために、それ以前とは日常生活が大きく変わる可能性はありますが、実際にさまざまな職種や立場で働き続ける人もいます。
腎臓の機能は回復しないからこそ、「万が一の状態になった場合でも働ける可能性がある」と希望を持つのも重要なことですね。
しかし、やはり最も重要なのは、腎臓病を防ぐことと悪化させないことです。
今日からでも腎臓を大切にしてみませんか?
あなたの身体を一番守れるのは、あなた自身です。
<参考>
・ 一般社団法人日本腎臓学会編『CKD診療ガイド2012』(東京医学社、2012年6月)
・ 公益社団法人日本透析医会「2021年度 血液透析患者実態調査報告書」
・ 公益社団法人日本透析医会「2021年日本透析医学会統計調査報告書調査結果と考察」