過去10年で最大の流行!流行性角結膜炎にご注意を!
- 2018/7/11
- 病状・症状
流行性角結膜炎をご存知でしょうか。いわゆる「はやり目」です。これまでに感染したことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はこの流行性角結膜炎の患者数が5月の第2週に過去10年で最多になったことを、国立感染症研究所が発表しました。
ただの「はやり目」とあなどるなかれ。
流行性角結膜炎は感染力が非常に強く、悪化した場合は長期にわたり視力に影響を及ぼすこともある疾患です。流行性角結膜炎についての正しい知識を身に付け、予防に取り組みましょう。
流行性角結膜炎とは
原因は?
流行性角結膜炎は「アデノウイルス」というウイルスによる眼の感染症です。
このアデノウイルスですが、ウイルスの型によって人体にさまざまな影響を及ぼし、たとえば咽頭結膜熱、いわゆるプール熱もこのアデノウイルスが原因です。
症状は?
特徴的な症状として、目の充血、目やに、涙が出る、まぶたのむくみ、目がゴロゴロとする、目の痛みなどが挙げられます。
症状が悪化すると瞼の裏側に「偽膜」とよばれる白い膜ができる「偽膜性結膜炎」を引き起こし、複数の細菌によって角膜が溶けて穴が開いてしまうこともあります。
この「偽膜性結膜炎」は乳幼児に起こりやすく、お子さまには特に注意が必要です。
目以外の症状としては耳の前や顎の下にあるリンパ節が腫れることもあります。またかゆみや発熱といった症状はほとんどないことも特徴です。
これらの症状は通常約1~2週間ほど続きますが、症状の重さや体調によっては1ヶ月ほど継続することもあります。
後遺症は?
流行性角結膜炎は悪化すると後遺症が残ってしまうことがあります。
「角膜混濁」とよばれるもので、目の充血、目やにといった症状が落ち着いてきたあとに、ウイルスによる炎症反応によって傷付いた黒目が白く濁ってきます。
角膜混濁が起こると、目のかすみ、目がしょぼしょぼする、少しの光でもまぶしく感じる、ものが見えにくくなるなど、視力が低下してしまいます。
点眼薬によって治療可能ですが、完治まで1年ほどかかってしまうことや、そのまま視力が改善されないこともあり、生活に及ぼす影響は大きくなります。
やはり感染そのものを未然に防ぐことが望ましいでしょう。
感染を予防するには
手洗いを励行する
流行性角結膜炎は目をこすった手から感染する割合が非常に高いです。
感染者の目と自分の目が直接触れることはなくても、たとえば感染者が目をこすった手で何かに触り、それを自分が触り、その手で自分の目に触り……と、手を介して感染が拡大してしまうのです。
通勤電車の手すりや吊り革、職場の共用物品など、多くの人が触るものには特に注意が必要です。
手洗いをしっかりとおこなったうえで、手で直接目をこすったりしないようにしましょう。
目を拭くときは使い捨てのものを使う
前述したとおり、感染は手を介して広がるため、手で直接目に触ることは避け、ティッシュやペーパータオルなどを使うようにしましょう。
また手と同様にハンカチやタオルを介しても感染は広がります。
使い捨てのものを用いるようにしましょう。
家庭内でもタオルを分ける
自分の職場や家族の職場、学校などで流行性角結膜炎が流行しているとき、また家族の中に感染者がいるときには、家庭内での感染拡大を防ぐため、タオルは全員分ける必要があります。
そのほか目や涙に触れる可能性のある洗面具、枕、シーツ、目薬、アイマスクなども感染源になるため、共用しないようにしましょう。
社内の共用物品やドアノブを消毒する
手を介した感染予防のためには、多くの人が触るものに付着しているウイルスを除去することが効果的です。
アデノウイルスは消毒用エタノールもしくは次亜塩素酸ナトリウムで除去できます。
消毒の際にも雑巾や布巾ではなく使い捨て可能なペーパータオルやウェットティッシュなどを用いるようにしましょう。
免疫力を下げない
感染予防のためには上記の対策が不可欠ですが、自分の体の免疫力を下げないことも必要です。
栄養バランスの良い食事、十分な睡眠をとり、規則正しい生活を心がけましょう。
もし感染してしまったら?
前述したとおり、流行性角結膜炎は悪化してしまうと症状が長引いたり、後遺症が残ったりすることがあります。
悪化を防ぐためにも、気になる症状が出現したときは早めに眼科を受診し、点眼薬の使用など医師の指示に従い、症状がよくなったとしても医師がよいと認めるまでは通院を継続することが必要です。
また身体の健康状態も影響するため、普段より十分に休息をとることも大切です。
ほかに、他人に感染を広げないことにも注意しなければなりません。前述した感染予防法を感染者側もしっかりとおこなうことで、周囲への感染を防ぐことができます。
それに加えて、
・外出を避けできるだけ他人と会わない
・目や涙を拭いたティッシュなどはビニール袋で密封してから捨てる
・お風呂は最後に入り、入浴後はすぐに浴槽・風呂場の清掃をおこなう
・プールや公衆浴場には入らない
・使用した衣服やタオルを洗うときにはすすぎをしっかりとする
といった対策も大切です。
また流行性角結膜炎は約2週間程度他人に感染させてしまう恐れがあるため、その期間はできるだけ仕事を休むのが望ましいといえるでしょう。特に医療、福祉、教育現場などは感染が拡大しやすく、感染すると重篤な状態になる恐れのある人が多くいるため、該当する場に勤めている人は必ず休むようにしましょう。
過去に集団感染が発生し、一時的に病棟閉鎖や学校閉鎖となってしまったケースもあります。
事業主としてすべきこと
集団感染が発生してしまうと業務に大きな影響を及ぼす恐れがあるため、事業主側からも予防のために働きかけをすることが必要になります。
前述した予防法が実現できるよう、以下ような対策をとることも大切です。
・お手洗いなどにペーパータオルを設置する
・社内の共用物品やドアノブなどを消毒する時間や担当者を定めておく
・感染してしまった社員をきちんと休ませる
事業主、従業員、それぞれが感染予防に努めていきましょう。
参照
・国立感染症研究所「過去10年間との比較グラフ」(https://www.niid.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1656-15ekc.html)
・国立感染症研究所「流行性角結膜炎とは」(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/528-ekc.html)
・日本眼科学会(http://www.nichigan.or.jp/public/disease/ketsumaku_virus.jsp)